経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

税収減がどうした、大事は賃金さ

2017年07月09日 | 経済
 2016年度の税収が前年度比-0.8兆円の55.5兆円と発表され、財政再建を危ぶむ声も聞かれるが、ほとんど意味がない。地方と社会保障の収支が改善しており、政府全体では着実に進展しているからである。日本では、財政を心配する人は、奇妙にも国の財政しか気にしない。本当に国の行く末を案じているか、疑わしく思えるほどだ。世を憂う政策通らしく振る舞うためのファッションなのだろう。そんなことより、下々の賃金や消費を心配してはどうかと思う。

………
 2016年度の名目成長率が+1.1%なのに対し、税収が-1.5%だった最大の理由は、法人税が-4.6%と、0.5兆円減の10.3兆円になったためだ。2015年度の-0.2兆円に続く減収であり、法人企業統計の経常利益が増加しているのに逆行している。両年度とも金融保険業が減益だったので、この影響かもしれない。第一生命研の星野卓也さんによれば、特別損失、M&Aに伴う税還付、法人税率引下げが要因として考えられるという。

 いずれにせよ、企業収益が最高を更新する中、法人税収は、直近で最高の2006年度14.9兆円に遠く及ばない。全産業の経常利益(除く金融保険業)と法人税収を対比させると、リーマンショック前は、20%台半ばであったものが、2016年度は15%を割るところまで落ちている。それで資金が設備や人材へ大して回ったわけでない。凡人からすれば、財政再建には法人増税が必要という話にしかなるまい。

 また、2016年度は、所得税と消費税も、それぞれ前年度決算比-0.2兆円となった。やや不可解だったのは、補正予算で、消費税の見積りが0.4兆円下方修正されたのに対し、結果は0.4兆円上ブレしたことである。やらずもがなの修正だったわけだ。確かに、消費税は、11月に落ち込みはしたものの、5月に大きく取り戻した。輸入時期のズレが考えられ、消費税の安定ぶりを示すものとなった。

 税収の見込み違いは、法人税収でも生じている。補正予算で1.1兆円下方修正されたが、決算では更に0.8兆円も落ちた。財政当局は、補正の段階で、法人税が前年度決算より約3%増えると見込んでいたが、当時、主要企業の業績見通しはマイナスになると予想されており、首を傾げるものだった。結局、どちらの税収も、当局の見込みは外れてしまい、外野が持つ以上の確度ある税務情報を持ち合わせていないように見える。

………
 政府全体の財政収支は、国だけを気にしていても始まらない。一般政府の資金過不足を資金循環統計の4期移動平均で見ると、1-3月期は、前期と比べ、国が悪化、地方が改善、社会保障が横ばいで、収支改善の動きは一休みだった。それでも、1年前の1-3月期と比較すれば、2.4兆円もの改善になる。内訳は、国が-1.0兆円、地方が+1.8兆円、社会保障+1.6兆円だ。政府の吸い上げがあったのだから、2016年度の消費や物価の低迷は、ある意味、当然である。

 そして、国の税収は、1-3月期に底を打ち、4,5月には高まっている。前年同期比は、1-3月期が-0.2兆円だったものが、4.5月は+0.2兆円となっている。これからすれば、4-6月期の政府全体の収支改善の再開は、十分に期待できよう。トレンドとしては、次の消費増税前の2018年1-3月期には「赤字ゼロ」まで行き着く計算となる。危ぶむべきは、財政再建より、消費増税の必要性である。

 ところで、今週は5月の毎月勤労統計が公表されたが、注目されるのは、現金給与総額が前月比+0.2となったことだ。実は、先月の数字が良ければ、「賃金も上昇を開始した」と宣言しようと思っていたのだが、反動減が出て、控えていたところだった。もう、今月は、そう述べて構わないだろう。常用雇用が順調に増す中で、パート比率も下がり、労働時間も上向いている。常用×実質賃金の4,5月平均は前期比+1.0と強く、消費と物価にも好影響が及ぶはずだ。

(図) 




(今日までの日経)
 指し値オペで防衛線。公的年金2年ぶり黒字。日本も長期金利上昇。人口、最大の30万人減・住基。アマゾン、一部で遅配。不振の造船なぜ売らない?・川重

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