シムズ理論を巡り、「ちょうど良い放漫財政なんてできるのか」といった議論で賑わっているが、実際、日本が足元で放漫をしているのか、緊縮をしているのかについては、まったく、お留守だ。3/18公表の日銀・資金循環によれば、バブル期以来の財政再建を達成した模様である。これだけ緊縮しているのだから、財政破綻を心配したり、なぜ内需が不振なのかと悩んだりすることもなかろう。タコツボから頭をもたげ、経済の全体を眺めれば、容易に分かることである。
………
財政再建を声高に叫ぶ人は、財政しか見ていない。知見の出元になっている財政当局は、担当することがすべてだからだ。しかし、政府全体では、社会保障基金、要は公的年金だが、これが黒字を出しているので、赤字幅は、かなり縮小する。10-12月期の資金循環で、一般政府の資金過不足を見ると、年換算額のGDP比は-2.0%である。この水準は、リーマン・ショック直前を超え、おそらく、バブル期以来の改善だろう。
直近の6四半期は、直線的に並んでいるので、これを延長してみたくなるのが人情だろう。すると、2018年半ばには「黒字」に達することが分かる。世間では、「2020年度に基礎的財政収支の赤字をゼロにする財政再建目標は諦めたのか」という批判が聞かれるが、公的年金を含めた全体で見れば、前倒しで達成できそうな勢いにある。世間的には知られてないが、インフレ期待なんて、起こりようがない実態だ。
安倍政権は、消費増税の先送りで、財政当局から恨みを買っているらしいが、実際には、財政再建で多大な功績を上げている。それが分からないのは、全体を見ないからである。政府全体で「黒字」になっても、担当の財政が「黒字」でなければ不満というのでは、あまりに低次元だろう。むしろ、本当に心配すべきは、年間7兆円ものペースで緊縮をしたら、内需を低迷させるのではないかということだ。むろん、これは現実のものとなっている。
加えて、公的年金の黒字がうれしい話かというと、そうでもない。少子化で次世代を減らし続ける一方、カネだけ溜め込んで、何の意味があろう。将来、溜め込んだカネで、痩せ細った現役からモノやサービスを得ようにも、供給力の乏しさのために価格が高まり、虚しく費えるだけである。ミクロの家計の財布を預かるわけではないのだから、為政者は、集めたカネでマクロの国内供給力をいかに培うかまで考えなければならない。
(図)
………
3/14の日経電子版によると、小泉進次郎議員を始めとする自民党の若手は、「子ども保険」の発想まで行き着いたようだ。しかし、新たに保険料を取って、少子化対策に充てるらしいから、事の本質を悟るまでには、更に時間がかかりそうである。そうこうするうち、人口崩壊を目の当たりにすることになろう。もっとも、そのくらいのショックでも受けないと、人々の観念は改まらないものである。
雇用保険料率の引き下げに際し、年金保険料に上乗せして事業者から徴収している児童手当の負担を引き上げ、事業所内保育所の整備に充てるということが行われているから、若手議員が「子ども保険」を構想するのは、分かる気はする。ただし、負担増を前提にすると、それを当事者に納得させるのに、大変な時間と労力が要る。少子化対策が時間との競争になっている中で、苦しい戦いを強いられよう。
実は、負担増は、年金の仕組みを上手く使えば、必ずしも要らないものである。なぜなら、将来、受給する年金の一部を、乳幼児を育てている期間に、前倒しで得られるようにすれば良いからである。月8万円を0~2歳まで得ても、年金の15%程にしか過ぎない。年金の目減り分は、仕事と子育てを両立して働けば、後で取り返すことは十分可能だ。しかも、「乳幼児給付」で待機児童が解消し、少子化が緩めば、年金の目減りすら起こらないかもしれない。
こうしたマジックが可能なのは、生涯に渡るカネの融通ができないために、人的投資に不効率が生じているからてある。正解は、分かってしまえば、何ということはない。コロンブスの卵である。しかし、「給付には負担が必要」という観念が強いと、生涯に渡る給付のリバランスという新しい観念には、なかなか至らない。観念を変えるより、現実の動きが早いと、悲劇的な結末になる。歴史では、ままあることだ。
………
負担増ができないうちは、少子化対策をしない、人的投資もしないというのは、経済より財政を、実物よりカネを、無自覚のうちに大事にしている証である。インフレ下ならいざしらず、デフレ下で、頑ななまでにカネに固執するのは、滑稽ですらある。避けたくはあるが、カネに拘って次世代を喪失し、国を衰亡させた数奇な例として、歴史に残ってしまうのではないか。時代の空気を知らない後代の人たちは、財政再建帝国主義が国を狂わせていたくらいにしか、解釈できないに違いない。残念ながら、歴史の繰り返しから、逃れられない情勢にある。
(今日までの日経)
保護主義に対抗を盛らず・G20。残業規制の適用、運輸と建設猶予。退位の国会提言提示。賃上げ2.06%、昨年と横ばい。「のれん」最大の29兆円。資材値上げ、樹脂は1割高、エネ価格上昇。中国資本規制、海外送金ストップ続出。
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財政再建を声高に叫ぶ人は、財政しか見ていない。知見の出元になっている財政当局は、担当することがすべてだからだ。しかし、政府全体では、社会保障基金、要は公的年金だが、これが黒字を出しているので、赤字幅は、かなり縮小する。10-12月期の資金循環で、一般政府の資金過不足を見ると、年換算額のGDP比は-2.0%である。この水準は、リーマン・ショック直前を超え、おそらく、バブル期以来の改善だろう。
直近の6四半期は、直線的に並んでいるので、これを延長してみたくなるのが人情だろう。すると、2018年半ばには「黒字」に達することが分かる。世間では、「2020年度に基礎的財政収支の赤字をゼロにする財政再建目標は諦めたのか」という批判が聞かれるが、公的年金を含めた全体で見れば、前倒しで達成できそうな勢いにある。世間的には知られてないが、インフレ期待なんて、起こりようがない実態だ。
安倍政権は、消費増税の先送りで、財政当局から恨みを買っているらしいが、実際には、財政再建で多大な功績を上げている。それが分からないのは、全体を見ないからである。政府全体で「黒字」になっても、担当の財政が「黒字」でなければ不満というのでは、あまりに低次元だろう。むしろ、本当に心配すべきは、年間7兆円ものペースで緊縮をしたら、内需を低迷させるのではないかということだ。むろん、これは現実のものとなっている。
加えて、公的年金の黒字がうれしい話かというと、そうでもない。少子化で次世代を減らし続ける一方、カネだけ溜め込んで、何の意味があろう。将来、溜め込んだカネで、痩せ細った現役からモノやサービスを得ようにも、供給力の乏しさのために価格が高まり、虚しく費えるだけである。ミクロの家計の財布を預かるわけではないのだから、為政者は、集めたカネでマクロの国内供給力をいかに培うかまで考えなければならない。
(図)
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3/14の日経電子版によると、小泉進次郎議員を始めとする自民党の若手は、「子ども保険」の発想まで行き着いたようだ。しかし、新たに保険料を取って、少子化対策に充てるらしいから、事の本質を悟るまでには、更に時間がかかりそうである。そうこうするうち、人口崩壊を目の当たりにすることになろう。もっとも、そのくらいのショックでも受けないと、人々の観念は改まらないものである。
雇用保険料率の引き下げに際し、年金保険料に上乗せして事業者から徴収している児童手当の負担を引き上げ、事業所内保育所の整備に充てるということが行われているから、若手議員が「子ども保険」を構想するのは、分かる気はする。ただし、負担増を前提にすると、それを当事者に納得させるのに、大変な時間と労力が要る。少子化対策が時間との競争になっている中で、苦しい戦いを強いられよう。
実は、負担増は、年金の仕組みを上手く使えば、必ずしも要らないものである。なぜなら、将来、受給する年金の一部を、乳幼児を育てている期間に、前倒しで得られるようにすれば良いからである。月8万円を0~2歳まで得ても、年金の15%程にしか過ぎない。年金の目減り分は、仕事と子育てを両立して働けば、後で取り返すことは十分可能だ。しかも、「乳幼児給付」で待機児童が解消し、少子化が緩めば、年金の目減りすら起こらないかもしれない。
こうしたマジックが可能なのは、生涯に渡るカネの融通ができないために、人的投資に不効率が生じているからてある。正解は、分かってしまえば、何ということはない。コロンブスの卵である。しかし、「給付には負担が必要」という観念が強いと、生涯に渡る給付のリバランスという新しい観念には、なかなか至らない。観念を変えるより、現実の動きが早いと、悲劇的な結末になる。歴史では、ままあることだ。
………
負担増ができないうちは、少子化対策をしない、人的投資もしないというのは、経済より財政を、実物よりカネを、無自覚のうちに大事にしている証である。インフレ下ならいざしらず、デフレ下で、頑ななまでにカネに固執するのは、滑稽ですらある。避けたくはあるが、カネに拘って次世代を喪失し、国を衰亡させた数奇な例として、歴史に残ってしまうのではないか。時代の空気を知らない後代の人たちは、財政再建帝国主義が国を狂わせていたくらいにしか、解釈できないに違いない。残念ながら、歴史の繰り返しから、逃れられない情勢にある。
(今日までの日経)
保護主義に対抗を盛らず・G20。残業規制の適用、運輸と建設猶予。退位の国会提言提示。賃上げ2.06%、昨年と横ばい。「のれん」最大の29兆円。資材値上げ、樹脂は1割高、エネ価格上昇。中国資本規制、海外送金ストップ続出。
みんなが景気回復を信じられればいいだけ。
お前は絶対そう思わないだろうけど、不景気はお前の所為だよ。
現実はお金はただの道具なのに、貴重な資源かのように思い込む人々。
現実はお金で経済動いてるのに、気持ちの問題と思い込む人々。
改めてこう列挙していくと、本当、余程のショックでもない限り、何も変わらないのだろうなと思いますね。
国民年金は賦課方式なんですが一体どういう制度を考えているんですかね?
是非しっかり計算して制度を設計してみて頂きたいです
緊縮財政で成功しているドイツを見習いなさい。バブル崩壊以降の放漫財政でも軌道に乗らない日本経済・自民党の放漫財政政策を反省しなさい。バブル崩壊後25年の反省もできない愚者達よ。
ドイツはユーロという特殊な金融財政制度の恩恵を受けている特殊国家であり、単純に日本に当てはめることなどできないのだが、それも知らない。
日本が異様な歳出抑制国家だということも知らない。
そんな人が「事の本質を知れ!」なーんて偉そうに毒づいちゃうのが日本の現実。
http://ecodb.net/country/JP/imf_ggxwd.html
アベノミクス開始の2013年は240.50%でしたが、2015年は237.97%です。なんだかんだで、名目成長の世界に戻したのは一つの功績だと思います。小泉政権は逆に酷かったですね。確かにPBは黒字化に近づけてましたが、デフレを固定させ名目GDPが全く伸びなかったので、GDP比の債務が任期中に40%近くも膨らんでしまいました。