大幅な賃上げは、昨年、突如として始まった。それまで、収益が上がろうと、物価高になろうと、賃上げは鈍かったのに、売上げが伸びたことで実現した。それも、名目だけで、数量では伸びていないにもかかわらずである。正直、驚きだった。売上げが伸びる状況なら、賃上げをしてても労働力を確保して取りに行くのは、経営者としたら当たり前ではあるが、現実を目の当たりにしないと、思い至らなかったわけである。
名目の売上げが増したのは、消費者が値上げを受け入れてくれたからである。消費増税のときのように、名目を伸ばさず数量を減らすことをしなかった。背景には、コロナ禍で温存されていた所得が充てられたことが挙げられる。可処分所得があれば、実質の消費水準を維持しようとするわけである。裏返せば、アベノミクスでデフレ脱却ができなかったのは、可処分所得を政策的に削り続けたからだった。
今年の春闘では、昨年を上回る賃上げが予想されている。そうなれば、金融緩和も正常化することになる。異常な金融緩和を続ければ、デフレから脱却できるはずだったのに、強固なノルムに阻まれたことになっているが、ノルムも何も、消費を抑制する政策を取っていれば、物価が上がらないのは当然で、心理を持ち出すまでもない。結局、身も蓋もない現実が見えないと、経済学は心理学になってしまうのである。
(図)
(今日までの日経)
「正社員の壁」人手不足でも。公的年金、来年度2.7%増 0.4%分目減り。訪日消費、最高の5兆円。観光地の人手不足2割超 バイト時給、一部東京超え。最強・米経済の「心理不況」。中国の若年失業率14.9%。
名目の売上げが増したのは、消費者が値上げを受け入れてくれたからである。消費増税のときのように、名目を伸ばさず数量を減らすことをしなかった。背景には、コロナ禍で温存されていた所得が充てられたことが挙げられる。可処分所得があれば、実質の消費水準を維持しようとするわけである。裏返せば、アベノミクスでデフレ脱却ができなかったのは、可処分所得を政策的に削り続けたからだった。
今年の春闘では、昨年を上回る賃上げが予想されている。そうなれば、金融緩和も正常化することになる。異常な金融緩和を続ければ、デフレから脱却できるはずだったのに、強固なノルムに阻まれたことになっているが、ノルムも何も、消費を抑制する政策を取っていれば、物価が上がらないのは当然で、心理を持ち出すまでもない。結局、身も蓋もない現実が見えないと、経済学は心理学になってしまうのである。
(図)
(今日までの日経)
「正社員の壁」人手不足でも。公的年金、来年度2.7%増 0.4%分目減り。訪日消費、最高の5兆円。観光地の人手不足2割超 バイト時給、一部東京超え。最強・米経済の「心理不況」。中国の若年失業率14.9%。