経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

経済と防災のべき乗則

2014年03月13日 | 経済
 公共事業に関する議論が盛んなようだね。ケインズやナイトの言う不確実性は、需要や価格についてのべき乗則リスクであり、いわば、経済はべき乗則に脅かされ、デフレなどの不合理が生じている。他方、災害にもべき乗則が潜んでおり、公共事業はこれに備えるものという性質を持っている。

 べき分布は、平均値が無意味で、分散が無限大だから、どの程度の備えがあれば十分かを設定できない。したがって、需要リスクには、経験値で「余裕」を持って備えるしかなく、これは必然的に不効率をもたらすことになる。合理的に期待を形成し、利益を取り尽くすことなど無理な話なのだ。

 防災の場合も、今後、どれほどの地震が襲ってくるかは、べき乗則に従うので、正直、予想がつかない。東日本大震災を経験して初めて、これほどのものもあるのだと知るのみである。例えば、耐震基準を、かつての関東大震災レベルから阪神大震災レベルへと、後追い的に上げて来たのも、やむを得ざるところがある。

 一般の方の公共事業に対する不信感は、災害に備えようと思ったら、際限がないところかもしれない。千年に一度に備えるのはムダではないが、他の投資や消費と比較して価値があるのかは、人それぞれになる。人生で一度あるかないかのリスクになると、どれだけ取るのかは一義的に明らかでない。

 まあ、経済がべき乗則でムダに捨てる資金や労働力があるのなら、備え過ぎというものがない防災に使うというのは、一つの考え方かもしれない。むろん、筆者は、どうせ使うなら、若者に還元し、少子化を緩和すべきだと思う。人的資本への投資不足こそ、日本の最大の不合理と考えるからだ。

 年金財政で端的に分かるようにリターンは高いし、もし空振りになっても将来世代に言い訳が立つ。人が居てこその防災でもあろう。問題は、社会保険で需要管理をしようという発想がないことだ。経済政策と言えば法人減税と公共事業しかない視野の狭さが、日本にとっての不幸だろう。

(今日の日経)
 ベア回答7割に。銅急落で株安。労働力人口1170万人減。賃上げ配分にメリハリ。法人税改革は減税先行で、座長は譲らぬ姿勢。消費者心理弱含み、雇用が4か月ぶり下げ。支給年齢上げ試算へ。ロシア・資金流出が加速。経済教室・法人税は代替財源を・土居丈朗。

※増税と物価高を埋めるには程遠いレベル。※人口の再生産に必要な所得を与えなかった結果、企業収益は増したが、長期的な人材は不足するということ。※やはり法人減税は押し切るのみか。※早くも雇用に出たか。これは増税後は厳しい。

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2 コメント

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公共投資の価値評価 (KitaAlps)
2014-03-14 09:39:19
 財政出動というか特に公共投資に関する飯田泰之先生(明治大学)と藤井聡先生(京都大学)との論争している問題について(2/28に)
http://kitaalps-turedurekeizai.blogspot.jp/2014/02/blog-post_28.html

で、飯田先生の公共投資の価値評価とGDPの関係の議論(小野善康・飯田説)がGDPの三面等価の原則を満たさない問題について指摘しましたが、その後、himaginaryさんが、
(1) himaginaryの日記「公共投資の付加価値がゼロになる時」2014-03-10
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20140310/zero_gdp_or_not
(2) himaginaryの日記「公共投資の付加価値がゼロになる時・補足」2014-03-11
http://d.hatena.ne.jp/himaginary/comment?date=20140311§ion=zero_gdp_or_not2#c

で、これ(小野善康・飯田説)は、NDP(国内純生産)で捉えれば、理解可能なことを指摘されています。
◎これを受けて、次のページで、この問題を改めて検討しました。
http://kitaalps-turedurekeizai.blogspot.jp/2014/03/blog-post_13.html

◎なお、私は、これまで公共投資は、不況対策の手段として一時的に増やせばよい・・その意味で有効な手段だという程度に考えて来ました(つまり、恒常的に増やすべきとは考えていませんでした)。しかし、2012年度の公共投資未消化によるGDP改訂騒動の経験を経て、現在の公共投資は過小になっていると考えるようになりました。・・・この点については、近日中に整理したいと考えています。
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Unknown (個人投資家)
2014-03-15 10:03:41
法人減税をすると税収弾性率が下がって、アベノミクスによる自然増収がなくなり、財政再建のためにさらに増税することを阿部総理が飲まざるを得なくなることを財務省幹部が意図しているのでは?
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