経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

偶然の一致を見せた決算

2012年07月04日 | 経済
 今日は、ちょっと予定を変更して、7/2に公表された国の財政の「平成23年度決算概要」の分析をお届けする。昨日の日経の記事は、今一つ分かり難かったこともあるのでね。「概要」の作りは、いかにも日本の財政当局らしいもので、ウォッチャーとしても、なかなか楽しませてもらったよ。

 さて、「概要」は、予算からのブレを示すもので、思いがけない収入と、使わずに残った支出からなる。日経は、当局の報道発表に従い、剰余金は1.23兆円と報じ、復興費の剰余金0.75兆円と合わせて、2兆円の補正予算が可能になったとしている。まあ、それは、そのとおりなのだが、一面を表すに過ぎない。

 まず、思いがけない収入としては、税収の上ブレ分8000億円と、日銀納付金などの税外収入2500億円があり、合わせて1兆500億円である。他方、使わずに残った支出として、金利が安くて済んだことによる国債費の不要が6400億円、災害などの備えとして置いていた予備費の不要が2800億円、そして、報道発表では、あえて明記されていない数字である「その他の不要」が9300億円である。

 以上のすべてを合計すると、2兆9000億円になる。ただし、このうち、税収上ブレ分の1/3にあたる2200億円は、交付税として地方の取り分になるから、国が使えるのは、差し引き、2.6兆円余ということになる。この「2.6兆円」という数字なのだが、これは、今年度予算で財源がないとして、交付国債という「約束手形」で措置された年金の国庫負担分に、「偶然」にもピタリと一致する。

 交付国債は、今年度予算の議論の焦点だった。「年金を賄うカネもない、だから消費税」ということで、増税の後押しになった。そして、増税が決まり、将来的な財源確保にメドがついたということで、晴れて国債による財源の充当の約束がされようとしている。とは言え、この作戦は、両刃の剣であり、無責任を謗られる心配もあった。そうした思わぬ方向に行った場合の抑えとして、剰余金を役立てるつもりだったのだろう。

 これは想像になるが、財政当局としては、年金に必要な消費増税1%分と、一体改革と称して社会保障の充実に使うとした1%分は、死守したいラインだったろう。それが、更に1%上乗せの3%の一気増税が実現できるのだから、万々歳ではないか。逆に言えば、増税慎重派にとっては、取れるところも取れなかったと言える。

 結局、今回の決算剰余金は、消費増税に賛成した人たちの「功労金」として、補正予算のバラマキに使われるようである。もちろん、財政当局としては、それも想定して用意していたものだろう。そして、もし、バラマキの圧力が弱ければ、すんなり年金財源に充て、剰余金などなかったかのように、きれいに「消す」という両様の構えだったと推察される。

 いかがかな。なかなかの「経理操作」の腕前ではないか。いつもながら、日本の財政当局の政治的巧妙さには感服させられる。これをきちんと堪能しておきたいところだ。ナニ? 「ウチの会社にも、こんな凄腕の経理マンがほしい」って。ダメダメ、御都合主義の利益の出し入れをしていると、自分自身がだまされ、肝心の投資判断などで間違いを犯すはめになる。実際、政治的には凄くても、一気増税は、成長の障害になるだけで、決して、日本株式会社のためにはならないのである。
 
(今日の日経)
 欧米に出遅れた音楽配信のコピー制限撤廃。もんじゅの運命・滝順一。ロシア首相が北方領土訪問。成長促進へ41改革。復興予算は思惑先行の増加額。蓄電池を病院に・グリーン成長戦略。仏・企業と富裕層増税で赤字削減、付加価値税は上げず。パナホーム・芦屋に環境都市。ソニーが定額の音楽配信。リーフを蓄電で大阪に無償提供。経済教室・若年雇用・近藤絢子。

※メドベージェフは日本嫌いらしい。※使い残しのある復興予算の増額ねぇ。今年度の税収上ブレを「消す」ためだろう。被災地をダシにはしたくないものだ。※EVを集結させる仕組みを作れば安上がりなのに。※日経は得意の「欧州を他山の石に」は言わないのかな。


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