経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の教え

日本に残った最後の道しるべ(1)

2012年07月03日 | 経済
 たぶん、日本の経済戦略というのは、財政のために消費税を上げ、成長のために法人税を下げるというものだろう。これを資金調達の観点で言うと、家計から政府へと資金を移す一方、企業から政府への資金は少なくするということになる。こうした戦略を描いているエリートは、日本の全体状況を本当に分かっているのだろうか。

 GDP統計(2010年度)で、金融資産・負債の変動を見てみると、確かに、一般政府の資金過不足は、マイナス33兆円もの大赤字である。ところが、家計の黒字は7兆円程にしか過ぎない。最大の資金の出し手は、非金融の法人企業であり、プラス31兆円となっている。すなわち、日本のエリートは、大して資金のない家計部門から吸い上げ、ジャブジャブに余っている企業部門に更に資金を注ぎ込むという戦略に賭けようとしているのである。

 消費税3%アップは約7.5兆円とされる。同じGDP統計で、家計の状況を見ると、可処分所得は286.8兆円であり、この時の家計貯蓄は7.3兆円だったから、税の帰着の問題はあるにせよ、年間の家計貯蓄を全部取り上げ、一切手元に残さない政策とも言える。増税で社会保障への安心感が生まれ、貯蓄への動機が薄らぐと言い訳しても、度外れている。

 この15年ほど、家計貯蓄は下がり、企業貯蓄が上がる傾向が続いてきた。家計が老後の不安で貯蓄に励み、需要が不足気味と言えるような状況は、すっかり過去のものになった。しかし、家計から消費税で貯蓄を取り上げようという戦略は、「十五年一日」で相変わらずである。財政だけしか念頭になく、家計や企業も含めた全体状況の変化が視野にないから、こうなるのである。

 では、どうすれば良いのか。基本は、企業の資金を減らすことを考えることだ。少なくとも、更に増やすような政策は流れに反している。むろん、企業に資金が余っているからと言って、税で取り上げるといった単純なことでは、私有財産制を否定する共産主義になってしまう。当然、目指すべきは、景気回復の過程で設備投資を増やしてもらうことで余剰資金を減らし、消費増税は、それに合わせて徐々に進めることである。

 今日も日経は、「決める政治を止めるな」としているが、経済的にどんな意味合いの政策を決めたかは、分かっておく必要がある。筆者とて、もう止められるとは思ってない。そこで、今日から数回に渡って、一気増税という愚策を、どうソフトランディングさせたら良いか、ある意味、それは「誤れる戦略を、戦術でどこまで修正できるか」になるわけだが、考えてみることにしたい。
 
(今日の日経)
 首相は自公と連携加速。決める政治・大石格。海外M&Aが最多。補正財源2兆円確保、剰余金全額活用を検討。設備投資に復調の兆し・日銀短観。銀行間金利に不正操作・英バークレイズ。米6月製造業に厳しさ。新車販売53%増。一目均衡・ダッチサンドイッチ。経済教室・企業の少子高齢化・樋口美雄。

※今日の日経は状況を表す記事が満載だ。※樋口先生の論には温かみがあるよ。
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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2012-07-03 10:41:43
貯蓄投資バランスの推移はここのコラムが詳しいです。
http://jp.fujitsu.com/group/fri/column/opinion/201202/2012-2-11.html
ここのグラフを見る限り、消費税を上げて法人税を下げる戦略は完全に失敗ですね。
部門別資金過不足 (KitaAlps)
2012-07-03 22:40:46
Unknownさんの紹介された根津利三郎さんのコラム、明解です。

 ちなみに、私も、次のページの後半部で同様のグラフ(2009年版経済財政白書のグラフを引用してるので2008までしかありませんが)を引いて論じています(少し書きぶりは違いますが、結論は同様の方向です)。

http://kitaalps-turedurekeizai.blogspot.jp/2011/03/blog-post.html

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