経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

「今回は違う」見出し

2013年08月09日 | 経済
 今日の日経は、おもしろい見出しを付けているね。今度の消費増税は「97年とは違う」か。これは、ラインハートとロゴスの「国家は破綻する」の原題「This Time Is Different 」のもじりなのかな。つまり、「今回は違うと言って、同じ失敗を繰り返す」という意味。記事の内容は、「今回は増税しても大丈夫」という内容なのだけど、真意は別にあるのかもね。いまさら、社説も変えらないだろうし。

 日経では、昨日、滝田洋一さんが電子版に書いた「日本版「財政の崖」、突破のヒントは米国に」が良かったね。滝田さんは筆者と見解は違うが、データを出してくるから議論が成り立つ。注目は、中島厚志さんの資料を引いた、米国の増税が消費に与えた要因分析だ。増税が所得を減らして、消費を抑制したことが明確に出ている。まあ、「所得が減れば、消費は減る」というのは、経済学の最も基本的な理論の一つではある。

 その点、日銀の黒田総裁が「増税でも成長」と言うのは、どういう理論に基づいているのだろうか。政府の経済見通しは、外需がなければ、ほとんどゼロ成長になるのだが。まさか、「所得が減っても消費は減らない、価格が上がっても消費は減らない」という財政当局に都合の良い理論ではないだろうね。それとも、「消費が減ると、金利が下がり、代わりに投資が出てくる」というケインズ時代の大蔵省見解なのだろうか。

 滝田さんの論考のポイントは、増税は消費を抑制したが、代わりにFRBが金融緩和をしたことで住宅と株価が上昇し、これが消費を促進したというものだ。また、配当課税への強化による駆け込み配当の所得増も功を奏した。しかし、こういうものに期待するのはいかがなものか。都合よくバブルが膨らむものではないし、バーナンキ議長は行き過ぎを恐れ、出口論に揺らぎが生じ、市場はギクシャクした。

 やはり、データから読み取るべきは、「増税すれば、消費は減る」という事実であり、緊縮財政を金融政策で補うには困難が伴うということだろう。まして、日本は、米国以上の低金利であり、一層、金融緩和は効きにくくなっている。デフレ下での金融緩和は効きにくいから、緊縮財政はほどほどにしなけれはならないというのは、EUの手痛い失敗からの貴重な教訓でもある。

 今日の日経は、97年の負担増は9兆円、その時よりGDPが9%も少ない来年度も9兆円増とする。それでも、今度は企業に耐久力があるから大丈夫とするのだが、普通は、同じ事をしたら、同じ事が起こると心配するものではないか。上手くいっているときに、あえて壊すようなマネをしないのも世間の常識だ。「同じ事をして、違う結果を求めるのは狂気」とされるが、「債務比率200%」の呪文は、そういうものを呼ぶのだろう。

(今日の日経)
 日銀総裁「増税でも成長」。社説・消費増税を固め歳出削減にも踏み込め。オフィス空室率が地方も改善。消費増税97年と環境変化。国民負担9兆円増。中期財政計画、増税判断後に修正。街角景気4か月悪化。東南アで財政赤字に苦慮。経済教室・アジアのサービス分野進出・田中清泰。

※永らく消費増税1%は2.5兆円という数字を使ってきたが、2.7兆円に更新することにしたい。厚生年金と国民年金の保険料引き上げは8000億円のようだが、今年10月と来年4月の年金カットも加わる。これは平年ベースで1兆円の負担増だ。

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