産業技術総合研究所(産総研)先進製造プロセス研究部門機能集積モジュール化研究グループの藤代芳伸研究グループ長、山口 十志明主任研究員、鷲見裕史研究員は、持ち運びできるハンディ燃料電池システムを開発した。
同システムは、マイクロチューブ固体酸化物形燃料電池(SOFC)を用いているが、電極の構造をナノレベルで制御することによって、LPGなどの汎用的で運搬が容易な炭化水素燃料を直接利用できるようになった。
急速起動性に優れ、持ち運びができることから、災害・非常時用、アウトドア用の電源としての応用が期待される。
SOFCは燃料電池の中で最も高い発電効率が期待されており、現在、定置用電源としての実用化が進められている。さらに、次世代自動車などの移動体用電源やポータブル電源への応用も期待されているが、通常のSOFCの作動温度は700~1000 ℃と高く、また、急速起動性が低いという問題から実用化が困難とされてきた。
一方、近年、スマートフォンやワンセグテレビ、ビデオカメラなど小型電子機器の普及が進んできたため、商用電源や急速充電器の確保が困難な災害・非常時やアウトドアでも急速起動が可能な数W~数十Wの電源が求められるようになっている。
しかし、現状では水素燃料の入手が困難であるため、LPGカセットボンベなどの汎用的な炭化水素燃料で発電できるSOFCの実用化が期待されている。
今回、水素燃料やメタン燃料に比べて汎用的で運搬が容易なLPGなどの炭化水素を燃料とし、急速起動できる燃料電池システムの開発に取り組み、開発に成功したもの。
今後は、SOFCモジュールの発電性能や耐久性の向上に取り組むとともに、燃料改質や供給制御システムも含めたハンディ燃料電池システムを開発し、災害・非常時用やアウトドア用、次世代自動車などの移動体用電源などへの応用を目指す。