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■科学技術ニュース■分子科学研究所、超高速光誘起電子移動および長寿命電荷分離状態の実現に成功

2013-01-25 10:41:58 |    化学

 自然科学研究機構分子科学研究所の江東林准教授らの研究グループは、電子を与えるドナーと電子の受け手であるアクセプターからなる高分子を用いて、πカラム構造が周期的に繋がった接合システムを開拓し、超高速光誘起電子移動および長寿命電荷分離状態の実現に成功した。

 光を電気に変換するには、電子ドナーとアクセプターの界面において光励起で効率良くプラスとマイナスに電荷を分離し、その状態を長く保つことが重要。しかし、いったんは分離した電荷は容易に会合し、電荷分離状態はすぐに失われてしまう。理論的には、電子ドナーとアクセプターが電子移動可能な近い距離に位置し、かつそれぞれが独立した連続構造を形成しながら、接合していることが理想的。

 同研究グループは、電子ドナーとしてフタロシアニン、また、アクセプターとしてナフタレンジイミドを用い、縮重合反応により、電子ドナー・アクセプターからなる二次元高分子を合成した。

 この二次元高分子は、積層することにより、電子ドナーとアクセプターがそれぞれ上に来るように重なって、柱もしくは壁のようなπカラム構造を形成する。

 したがって、πカラムが周期的に繋がった接合システムを作り出すことができる。

 この周期的なπカラム接合システムは、超高速で電荷分離し、光吸収から電子移動、電荷分離までの諸過程を1.4 ピコ秒(1ピコ秒は1兆分の1秒)で完了することができる。さらに、電子移動で生じたホールと電子は、ドナーとアクセプターのπカラム中を長距離移動することができ、10 マイクロ秒(10万分の1秒)という長寿命の電荷分離状態を保つことができる。

 今回の成果は、究極のπカラム接合構造を有する材料として、次世代太陽光発電システム開発への展開が期待できる。

 

 

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