電脳筆写『 心超臨界 』

人間にとって世の中で最もたやすいことは自らを騙すこと
( ベンジャミン・フランクリン )

◆たとえ負けてわれわれが滅んでも祖国を護る精神が残る

2024-05-18 | 05-真相・背景・経緯
◆たとえ負けてわれわれが滅んでも祖国を護る精神が残る


できれば外交によって戦争は避けたい、というのが日本の本音でした。対米戦争をするかどうかを決める御前会議で、昭和天皇は、和歌を詠(よ)まれました。

よもの海みなはらからと思う世に
         など波風のたちさわぐらむ

世界中の人々はみんな兄弟だと思っているのに、どうして争うのだろうか――という和歌に託して、平和的な解決を望まれたのでした。そこで日本政府は最後の外交努力を一生懸命行いました。しかし、アメリカから突きつけられた要求は、とても日本がのめる内容ではありませんでした。


『凛の国』
( 前野 徹、青春出版社 (2004/8/1)、p107 )

日本が満州国を誕生させた1932年、米大統領に就任したフランクリン・ルーズベルト(日露戦争の仲介をしたセオドアの甥(おい))は激しい人種差別主義者で知られており、とりわけ日本人は大嫌いでした。

彼も蒋介石を利用して日本を叩きつぶそうと考えたのでした。アメリカはイギリスと手を組んで、当時、フランス領だったインドネシア半島経由で、蒋介石軍に武器弾薬や食糧を援助しました。日本と中国国民党が泥沼の戦いになれば、中国での利権獲得も簡単になります。

さらに1940年になると、アメリカの空軍200人を蒋介石軍に派遣しました。これはとんでもない国際法違反です。宣戦布告もなしに、日本との戦闘に参戦したのですから。当時、日本とアメリカは中立条約を結んでいたので、重大な国際条約違反でもあります。

同時にアメリカは日本への締めつけも始めました。39(昭和14)年、日米通商航海条約の破棄を一方的に通告し、40(昭和15)年に条約は効力を失いました。

日本政府はたまらず、インドシナ半島を支配していたフランスと協定を結び、米英の支援ルートを断ち切ろうとしました。しかし、この時点でも日本はアメリカと戦おうなどという気はなかったのです。物資の豊富なアメリカと戦っても1年ももたないとわかっていたからです。

にもかかわらず、アメリカはイギリス、中国、オランダと交渉し、共同戦線を張って日本を経済的に封鎖しようとします。これを各国の頭文字をとってABCD包囲網といいます。Aはアメリカ、Bはイギリス=ブリティッシュ、Cは中国=チャイナ、Dはオランダ=ダッチです。日本はアメリカのABCD包囲網に対抗するために、ドイツ、イタリア、と日独伊三国同盟を結びます。

そして翌41年には、米英の中国支援ルートを断ち切ろうとインドシナ半島に出兵しました。この日本の動きにアメリカは日本への石油の全面輸出禁止を実施します。当時、日本は石油の99パーセントを輸入に頼っており、そのほとんどがアメリカと蘭領東インド(現インドネシアでした。石油が入ってこなくなると、軍艦も自動車も動きません。工業もストップしてしまい、国が成り立ちません。アメリカと戦争するしか道は残されていませんでした。

とはいえ、できれば外交によって戦争は避けたい、というのが日本の本音でした。対米戦争をするかどうかを決める御前会議で、昭和天皇は、和歌を詠(よ)まれました。

よもの海みなはらからと思う世に
         など波風のたちさわぐらむ

世界中の人々はみんな兄弟だと思っているのに、どうして争うのだろうか――という和歌に託して、平和的な解決を望まれたのでした。そこで日本政府は最後の外交努力を一生懸命行いました。しかし、アメリカから突きつけられた要求は、とても日本がのめる内容ではありませんでした。

中国からの全面撤退、日独伊三国同盟の即時破棄など激しい要求が並べられていたからです。このアメリカからの要求書はアメリカの当時の国務長官の名をとって「ハル・ノート」と呼ばれています。

ハル・ノートは日本へのアメリカの最後通牒(つうちょう)でした。どうだ、のめないだろう、だったら戦争を仕掛けてこいという……。

日本の指導者たちは悲痛な覚悟で戦争を決意します。御前会議で発言した永野修身(おさみ)海軍軍令部総長の言葉が当時の指導者たちの苦しい胸の内をよく表しています。永野総長の発言は次のような趣旨でした。

「戦わなくても国は滅びる、戦っても国は滅びるのなら戦おう。戦わなくて滅びれば、身も心も民族永遠の亡国だが、戦って国を護る精神に徹すれば、たとえ負けてわれわれが滅んでも祖国を護る精神が残り、子孫がこの国を再建してくれるだろう」

1941(昭和16)年12月8日、かくして日本は真珠湾を攻撃、大東亜戦争に突入しました。
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