ファラデーはもともと製本屋の小僧だったので、正規の教育を受けた経験がなかった。それが物理学の道に進むことになったのは、十代の終わりころ大科学者のハンフリー・デービーの、イギリス王立協会での講演を聞いたことがきっかけだった。この講演にひじょうに感銘を受けたファラデーは、その話をノートにして自分で製本し、デービーにプレゼントした。
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「主役には、演技はダイコンでも、牛肉のように存在感のある役者。脇を固めるのは、しっかりした演技のできる器用な味付け役者。そこにくさい演技のニンニク役者を利かせて、無味無臭の自然なミネラルウォーターのような役者で煮込むんだ」 . . . 本文を読む
「多くの人々の才腕は最後には欠点になってしまう。その欠点は老いるにつれて、ますます明らかになる」とサント・ブープ(フランスの文芸批評家)も指摘しているように、知恵だけで生きてゆくと、人間は「驕慢」になる。その「驕慢」を是正するのは自分自身の「心の約束」つまり「戒律」をもつことだ。その意味でローマの賢帝、マルクス・アウレリウスの『自省録』はいまだに読みつがれている名著だが、その中の「自戒」は特に参考となる。 . . . 本文を読む
そのころ私は、『スペクテイター』の合本の一部をたまたま見つけた。買ってきてくりかえし読んだが、なかなか楽しい。文章が秀逸で、できることならまねをしたいものだと思った。そんな思惑で私は、中の数紙を選んで、センテンスごとの要旨をメモし、2、3日放置、そのあと原本を見ずにメモだけで新聞を完成させるということをやってみた。 . . . 本文を読む
「国家」というと固く厳めしく聞こえるが、「社会」と言うと柔らかく優しく聞こえるから奇妙だ。しかし実質は同じことである。ファシズムといい、ソーシャリズムといい、コミュニズムといっても、それらはいずれも同類なのである。それはちょうどカニ、エビ、ザリガニといったさまざまの種の差こそあれ、いずれも甲殻類と呼ばれるのと同じである。 . . . 本文を読む
松下幸之助は様々な点で新しいことをはじめたが、中でも重要なのは昭和初期の大恐慌の時に示した終身雇用の発想だろう。それがやがて全日本に広まり、戦後の「日本式経営」に発展するからである。 . . . 本文を読む
中国の王毅外相はウイグル人へのジェノサイドの批判を「下心のあるデマだ」と一蹴した。ロシアのラブロフ外相との共同声明では「人権問題を口実にした内政干渉に反対する」と表明した。米国などが中国攻撃の道具としてわざわざウイグル問題を持ち出したと言いたいのだろうが、その認識自体がおかしい。人権は普遍的価値である。米中関係がどうあろうとも、中国であろうが別の国であろうが、踏みにじることは許されない。 . . . 本文を読む
年金を含めた保険商品は、全体の保険料の掛け捨てとなる金額と保障額との調整を、緻密な計算に基づいて行っている。「保険数理」と呼ばれる確率や統計を駆使することによって成立しているのだ。 . . . 本文を読む
2003年にカストロ議長は日本の土を踏み、念願の広島訪問を果たしました。カストロ議長は原爆の犠牲者に対する強い追悼の念を示し、その思いを帰国後、議会での報告を通して、キューバ国民にこう伝えています。「気高く寛大な日本人は、原爆の投下者を憎む言葉を一言も発しなかった。その代わりに、このような悲劇が二度と起こらないように、と平和記念碑を建立して世界平和を祈り続けてきた」。 . . . 本文を読む
前章では、中国伝統の宗族制度の特質と、そこから生み出された中国流の一族イズムの原型たるものを見たが、宗族のこのような特異性をもっとも端的に表している現象の一つに、宗族の伝統の一部となっている「械闘(かいとう)」の横行がある。械闘とは何か。簡単に言えばそれは、民間の社会集団が別の社会集団との間で利害の衝突やその他の対立が生じた場合、それを法的手段によって解決するのではなく、武器(械)を用いた武力闘争(闘)によって決着をつけることである。 . . . 本文を読む
そして99年、ついに彼らの悲願が叶えられる時がやってきました。ビル・クリントン大統領が署名した「グラム・リーチ・ブライリー法(GLB法)」という法律によって、暗黒の水曜日の再来を防ぐために銀行の預金部門と投資部門を切り離していた規制が、とうとう取り払われたのです。まさに、「強欲資本主義元年」が幕を開けた瞬間でした。「金融工学」という、カネがカネを生むモラルなき錬金術が崇(あが)められる世界、かつて大恐慌前にアメリカを覆っていた狂気が、クリントンによって再び息を吹き返したのです。 . . . 本文を読む
幸ひにして筆者と憂慮を同じくし、皇統永続の願ひを共有する真の保守派の人々もいつしか数は増えてゐて、夫々(それぞれ)に論策を公にし、実際の手続きについての法的な目途はつけたといふ向もある。今は其等の知恵を結集し組織する政治家の出現を待つばかりである。 . . . 本文を読む
ドイツに続いてソ連がポーランドに侵攻し、東部を占領したとき、イギリスとフランスはソ連に宣戦布告しませんでした。ヒトラーだけでなく、スターリンもポーランドの独立を犯したのに、なぜソ連に宣戦布告しなかったのか。これはほとんど説明されていないし、そもそもそういう問題提起すら皆無に等しいといえます。不思議な話です。 . . . 本文を読む
【西尾】 今回もあのときと同じです。我々は「慰安婦問題はもうなくなった」と言っているのですが、朝日は「女性の悲劇はある」と主張します。同じように、朝日はあの当時、賠償や補償の問題についてドイツと日本ではそのやり方が違うことをやっと認めました。「ドイツ見習え論」ですすめてきた「個人補償」には、もう論理的根拠がないからです。しかし、「従軍慰安婦」の問題が残っているとして今までの議論を引き延ばし、生き残ろうとした。その流れは今回も同じなのです。 . . . 本文を読む