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「致知」http://www.chichi.co.jp/ 2008年5月号 特集・工夫用力
教育現場の工夫用力「こどもたちを甦らせる」
●対談 上田市前教育委員長・大塚貢 & ジャーナリスト・ 櫻井よしこ
[1] もはや非行ではなく立派な犯罪
[2] 問題の根源は食にあった
[3] 米飯給食の驚くべき効果
[4] 安心安全な給食を食べさせるための工夫
[5] 真田町の非行・犯罪がゼロになった理由
[6] 子どもたちの学力向上の背景
[7] 米飯給食導入のプロセスとは
[8] 学校に潤いがあれば人を殺したりしない
[9] 日本の社会の闇
[10] 日本人よ 日本人になりなさい
[4] 安心安全な給食を食べさせるための工夫 (p26)
【櫻井】 その後、大塚先生は真田町の教育長になられましたが、1校で実施してきた改革をすべての公立小中学校へ及ぼしていかれましたね。真田町は当時、公立校は何校ありましたか。
【大塚】 合併して上田市になる前は、小学校が4校、中学校が2校でした。教育長になったのは平成9年ですが、やはり校長就任時のような状況が各校に広がっていました。盗んだバイクで暴走行為を繰り返し、町民は夜も眠れない。自動車で無免許定員オーバーのスピードの出しすぎで事故に遭い、二人死んでしまったこともありました。公園に公衆トイレをつくれば一晩で破壊されてしまう。そういう苦情が次から次へと教育長の私のもとにくるのです。
校長時代の経験から、授業内容を食生活に関連があると思って調査を進めると、同じ問題の構造がそこにはありました。
【櫻井】 要するに授業がつまらなくて、食生活が乱れているということですね。
しかし、校長なら自分の学校だけを改善すればよいわけですが、教育長はより多くの学校を改善しなければなりません。給食一つ改善するにもより多くの抵抗・障害が予測されますね。
【大塚】 米飯給食の導入については、やはり先生や親たちにも反対されましたが、結局は校長時代によくやってくれた栄養士に来てもらいまして、一校一校試食会を開き、きょうは先生方、明日は1学年の親、明後日は2学年の親、というように地道に説得するというプロセスは変わりませんでした。
【櫻井】 また、先生はただ米飯に切り替えるだけではなく、低農薬の地元の農産物を使うなど、様々な工夫をされましたでしょう。
【大塚】 私がパン食に疑念を抱いたのは、いろいろな会社のパンを買ってきて、しばらく置いておいてもどれも堅くならない上、カビも生えてこないからです。ということは、軟化剤や防腐剤が入っているわけですね。
実際、長野県で一番の小麦の産地である姥捨(うばすて)のおじいさんとおばあさんがつくった小麦を買ってきて、製粉して、イーストだけでパンを焼き上げてもらったら、2、3日でバリバリ堅くなって、カビが生えてきました。
こんな添加物が入ったパンを子どもたちが毎日家で食べて、学校でも食べていたら体に影響が出るなと思いましてね。やはり米飯給食にしなければと思いましたが、では米なら安心かといったら、そうではないのです。収穫時の田んぼを回ってみると、籾(もみ)に展着剤(てんちゃくざい)がついて白くなっているんですね。
【櫻井】展着財というは、農薬がよく付着するよう接着剤の役目を果たす薬剤ですか。
【大塚】 はい、そこで今度は米を何十種類と買ってみましたが、やはりいつまでたっても穀象虫(こくぞうむし)がわいてこない。ということは、農薬がしみ込んでいるのです。で、真田町のおじいさんおばあさんがつくっている米には、やっぱり穀象虫がわいてくるのです。
真田の子どもたちには無農薬のものを食べさせたいと思い、休耕田やお年寄りでつくらなくなった田を集めている大規模農家と契約して無農薬の米をつくってもらうようにしたところ、ただでさえ親や先生、子どもたちの米飯給食への理解を得られていないのに、今度は供給ルートからものすごい圧力がかかりました。
【櫻井】 なるほど。なぜ自分たちの米ではなく、この特別な農家なのかということですね。
【大塚】 はい。「一農家の利益のために教育長は学校給食を私物化している」と。いろいろなところでビラを配られたり、圧力をかけられました。
一農家との契約で叩(たた)かれるならばと思って、地元の農協と契約しました。農協の場合、無農薬というわけにはいかないので、低農薬でやってもらうことにしましたが、今度は「一営利団体のために給食を私物化している」と叩かれました。
当時は定められたルートから買うと国から補助金が出ていましたが、農協はルート外ですから補助金もカット。PTAに補助金の負担をお願いしましたが、「教育長が勝手なことをやって、なぜ俺たちが負担しなきゃいけないんだ」と反対されました。
ところが、国の財政が苦しくなると学校給食の補助金なんて最初に削られるんですね。徐々に減らされて、平成12年からはゼロになりました。補助金に関する批判はなくなったので、いまはほとんど地元の農協から低農薬の食材を買っています。地産池消の走りでした。
そうして一食ずつ米飯を増やして、平成13年には真田町の公立小中学校を週5日制の5日間すべて米飯給食に切り替えました。
【櫻井】 パン食と発芽玄米入りの米飯給食とでは、費用はどのくらい違うのですか。
【大塚】 いや、変わらないです。農協と直取引なので、中間マージンが取られません。定められたルートですと、当時備蓄米を含む割合も多く、価格も割高ですね。
いまの親たちはたとえ50円であっても、値上げしたら批判します。だから高いものを使うわけにいかない。じゃあ、安いからといって中国産の危険な食材を使うなんて、冗談じゃないです。子どもたちには安心・安全、体にいい給食を安く食べさせてあげたい。やり方さえ工夫すればいくらでもできることです。
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「致知」http://www.chichi.co.jp/ 2008年5月号 特集・工夫用力
教育現場の工夫用力「こどもたちを甦らせる」
●対談 上田市前教育委員長・大塚貢 & ジャーナリスト・ 櫻井よしこ
[1] もはや非行ではなく立派な犯罪
[2] 問題の根源は食にあった
[3] 米飯給食の驚くべき効果
[4] 安心安全な給食を食べさせるための工夫
[5] 真田町の非行・犯罪がゼロになった理由
[6] 子どもたちの学力向上の背景
[7] 米飯給食導入のプロセスとは
[8] 学校に潤いがあれば人を殺したりしない
[9] 日本の社会の闇
[10] 日本人よ 日本人になりなさい
[4] 安心安全な給食を食べさせるための工夫 (p26)
【櫻井】 その後、大塚先生は真田町の教育長になられましたが、1校で実施してきた改革をすべての公立小中学校へ及ぼしていかれましたね。真田町は当時、公立校は何校ありましたか。
【大塚】 合併して上田市になる前は、小学校が4校、中学校が2校でした。教育長になったのは平成9年ですが、やはり校長就任時のような状況が各校に広がっていました。盗んだバイクで暴走行為を繰り返し、町民は夜も眠れない。自動車で無免許定員オーバーのスピードの出しすぎで事故に遭い、二人死んでしまったこともありました。公園に公衆トイレをつくれば一晩で破壊されてしまう。そういう苦情が次から次へと教育長の私のもとにくるのです。
校長時代の経験から、授業内容を食生活に関連があると思って調査を進めると、同じ問題の構造がそこにはありました。
【櫻井】 要するに授業がつまらなくて、食生活が乱れているということですね。
しかし、校長なら自分の学校だけを改善すればよいわけですが、教育長はより多くの学校を改善しなければなりません。給食一つ改善するにもより多くの抵抗・障害が予測されますね。
【大塚】 米飯給食の導入については、やはり先生や親たちにも反対されましたが、結局は校長時代によくやってくれた栄養士に来てもらいまして、一校一校試食会を開き、きょうは先生方、明日は1学年の親、明後日は2学年の親、というように地道に説得するというプロセスは変わりませんでした。
【櫻井】 また、先生はただ米飯に切り替えるだけではなく、低農薬の地元の農産物を使うなど、様々な工夫をされましたでしょう。
【大塚】 私がパン食に疑念を抱いたのは、いろいろな会社のパンを買ってきて、しばらく置いておいてもどれも堅くならない上、カビも生えてこないからです。ということは、軟化剤や防腐剤が入っているわけですね。
実際、長野県で一番の小麦の産地である姥捨(うばすて)のおじいさんとおばあさんがつくった小麦を買ってきて、製粉して、イーストだけでパンを焼き上げてもらったら、2、3日でバリバリ堅くなって、カビが生えてきました。
こんな添加物が入ったパンを子どもたちが毎日家で食べて、学校でも食べていたら体に影響が出るなと思いましてね。やはり米飯給食にしなければと思いましたが、では米なら安心かといったら、そうではないのです。収穫時の田んぼを回ってみると、籾(もみ)に展着剤(てんちゃくざい)がついて白くなっているんですね。
【櫻井】展着財というは、農薬がよく付着するよう接着剤の役目を果たす薬剤ですか。
【大塚】 はい、そこで今度は米を何十種類と買ってみましたが、やはりいつまでたっても穀象虫(こくぞうむし)がわいてこない。ということは、農薬がしみ込んでいるのです。で、真田町のおじいさんおばあさんがつくっている米には、やっぱり穀象虫がわいてくるのです。
真田の子どもたちには無農薬のものを食べさせたいと思い、休耕田やお年寄りでつくらなくなった田を集めている大規模農家と契約して無農薬の米をつくってもらうようにしたところ、ただでさえ親や先生、子どもたちの米飯給食への理解を得られていないのに、今度は供給ルートからものすごい圧力がかかりました。
【櫻井】 なるほど。なぜ自分たちの米ではなく、この特別な農家なのかということですね。
【大塚】 はい。「一農家の利益のために教育長は学校給食を私物化している」と。いろいろなところでビラを配られたり、圧力をかけられました。
一農家との契約で叩(たた)かれるならばと思って、地元の農協と契約しました。農協の場合、無農薬というわけにはいかないので、低農薬でやってもらうことにしましたが、今度は「一営利団体のために給食を私物化している」と叩かれました。
当時は定められたルートから買うと国から補助金が出ていましたが、農協はルート外ですから補助金もカット。PTAに補助金の負担をお願いしましたが、「教育長が勝手なことをやって、なぜ俺たちが負担しなきゃいけないんだ」と反対されました。
ところが、国の財政が苦しくなると学校給食の補助金なんて最初に削られるんですね。徐々に減らされて、平成12年からはゼロになりました。補助金に関する批判はなくなったので、いまはほとんど地元の農協から低農薬の食材を買っています。地産池消の走りでした。
そうして一食ずつ米飯を増やして、平成13年には真田町の公立小中学校を週5日制の5日間すべて米飯給食に切り替えました。
【櫻井】 パン食と発芽玄米入りの米飯給食とでは、費用はどのくらい違うのですか。
【大塚】 いや、変わらないです。農協と直取引なので、中間マージンが取られません。定められたルートですと、当時備蓄米を含む割合も多く、価格も割高ですね。
いまの親たちはたとえ50円であっても、値上げしたら批判します。だから高いものを使うわけにいかない。じゃあ、安いからといって中国産の危険な食材を使うなんて、冗談じゃないです。子どもたちには安心・安全、体にいい給食を安く食べさせてあげたい。やり方さえ工夫すればいくらでもできることです。
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