西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

佐野川千蔵

2015-04-20 | 浮世絵
これは2代目鳥居清信(1702?~1752)の役者絵だ。
役者は佐野川千蔵で役名は小姓吉三とある。
1745(延享2)年3月、森田座で演じられた曽我物の7番目だ。
吉三という役名からすると、八百屋お七と曾我兄弟のないまぜ狂言で、
袂の吉という模様は「吉三」を意味するのだろう。

千蔵は色子(男色が売りの歌舞伎若衆)あがりの役者で、
あまり芸だちがよくなく、
子供の時から色子宿の主人、都太夫和中から一中節は仕込まれていたからか、
この絵のように、舞台で唄ったり語ったりする時のほうが客の受けがよかったというのだ。

絵には胡弓唄が書かれているようだ。
始めと終わりに長歌「新道成寺」の歌詞が見える。

「諸行無常の鐘の声、寂滅為楽と響けども、聞いて驚く人もなし…
初夜の鐘を撞く時は諸行無常と響くなり
後夜の鐘を撞く時は、生滅為楽と響くなり
これが冥途の友となる」
   

瀬川菊之丞が「傾城道成寺」を出してから、
歌舞伎の世界で「は道成寺物」が流行している。
(「京鹿子娘道成寺」はこれより8年後の1753年初演)

コメント
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