カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

一歩という名前。

2022-12-04 05:50:02 | Weblog

静岡県静岡市清水区興津本町223の日蓮宗耀海寺の墓地には、松濤家之墓の墓石が今も残されており、「松濤権之丞妻松濤安子」の俗名・戒名と並べて、伝承になくて何者か分からぬ「松濤一歩」の俗名が、戒名「休現院殿恭光日誠居士」と並べて彫られている。その戒名が、東京都文京区の浄土真宗本願寺派西教寺の墓地にある松濤権之丞之墓の墓石に権之丞の法名として彫られているものと同じであることから、松濤一歩と松濤権之丞とは多分同一人物であろうと推定されているものの、何故、権之丞でなくて「一歩」なのかを直接明瞭に説明してくれる史料が今のところ何も見つかっていない。
先日、国会図書館で大聖寺藩士山崎権丞家ならびに山崎図書家に関する史料をいくつか入手し、その人間関係を少しでも明らかにせむと系図を描いて眺めてみた。その結果、僅かながら少しだけ見えて来たような気がしたことがあった。
松濤権之丞の実父は、伝承では山崎庄兵衛範古であり、範古は五代山崎権丞無一の庶子。史料によれば、五代権丞が「無一」を名乗るようになるまでには、その人生に相当な苦い挫折もあったようだ。権之丞は少なくとも横浜鎖港談判使節団としての渡仏からの帰国時点で、範古とは交流を持っていたらしいから、範古の口から無一の話を聞いたこともあったかもしれない。そうした中で、権之丞が、祖父にあたる無一の人生に心を寄せ、自ら無一の字面にどことなく似た「一歩」を名乗るようになった可能性もあるのではないかという気がしてならない。あくまでも妄想である。

ところで、今朝偶々、神保町古書店街の古くからの音楽書・楽譜専門の名店として知られる古賀書店が年内で営業を終了されてその歴史を閉じられるという話を知った。凄くショックで甚だ残念。

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