カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

星野温泉。その2。

2014-10-25 07:10:24 | Weblog


星野温泉。亡き父は、その若き日初めて教師として勤めたK場東邦創設期の生徒さんたちを連れて軽井沢に出掛けた折りの思い出話を折に触れ楽しげに懐かしげに語ったが、その際星野温泉のこともよくその名前が出てきた。父によれば、信濃追分の堀辰雄旧居に堀辰雄未亡人を訪ねたり、当時は沓掛と言った星野温泉の辺り(と父は語った)の山中にK場東邦の山荘を作りに行ったりしたらしい。そして、星野温泉にもよく浸かりに行った、と。とはいえ、小さな時分より私自身は軽井沢へ連れて行ってもらったことも一切なければ、自分で軽井沢へ出掛けたことも長いことなく、中学時代以降強烈に〈生きる縁(よすが)〉となった堀辰雄や立原道造などの作品を折々に開いてはそこに流れる高原の清しい空気に触れて漠然と憧れを募らせるだけで、なじみの土地ではなかった。自分が働くようになってから漸く信越本線碓井峠越え最後の時期に初めて信濃追分に出掛けた。それが初軽井沢体験。その後、しばしば興味深い展覧会の行われる軽井沢高原文庫に行くことを覚えて、軽井沢はいつしか心情的に幾分身近な土地となった。しかし、星野温泉へはずっと行っていなかった。私の星野温泉体験は、父の晩年の頃、もうどこにも出掛けられなくなった父の病の平癒への秘かな願掛けも兼ねて、高原文庫の北杜夫展のあとひとりで足を運んだのが最初。(続く)

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