安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

シューマン著「音楽と音楽家」(吉田秀和訳 岩波文庫)

2017-03-14 20:05:03 | 読書

昨年末にファビオ・ルイージが指揮したウィーン交響楽団によるシューマンの「交響曲全集」(CD2枚組)を購入しました。その演奏がよかったので、他のジャンルも含めてシューマン(1810~1856年)の音楽を聴く機会が増えましたが、聴いているうちに、彼自身の書いた文章(評論集)を読みたくなったので、文庫本を買ってきました。

   

恥ずかしながら、初めて読んだのですが、こういう本を歴史的な名著というのだろうという感想が湧き起こりました。シューマンが、1834年くらいから1853年にかけて、当時の新人音楽家や新しい楽曲について評した文章が、現在からしても的確で、ただ驚きました。吉田秀和さんによる翻訳が、読みやすいうえに生き生きとしていることも本書の特長です。

シューマンが賞賛しているのは、ベルリオーズの交響曲、シューベルトのピアノソナタや交響曲、ショパンのピアノ曲、メンデルスゾーンのピアノ協奏曲や交響曲、リストのピアノ演奏、ウェーバーの歌劇などです。1853年には、10年ぶりに筆を執り「新しき道」と題してブラームスを紹介しています。ロマン派の時代を俯瞰する中身ですが、重要な作品がぞくぞくと生まれた時代だったと改めて思います。

中には、愛好家向けに記された文章もあって、『芸術家が幾日も、幾月も、かかって思案したことを、しろうとの愛好者は一言で抹殺するきかしら?ー』(寸言集)という気になる一文もあり、芸術性と大衆性(わかりやすさやビジネス)のバランスについて考えさせられました。

【聴いてみたシューマンの音楽(CD)】

・交響曲全集

     

ファビオ・ルイージ指揮ウィーン交響楽団

・ヴァイオリンソナタ

   

イリヤ・カーラー(vn)。

・室内楽全集

   

ブリリアントクラシックから出されたシューマンの室内楽全集。

・ピアノ協奏曲

   

マルタ・アルゲリッチ(p)