コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

ロベールとキャタピラー(1)

2008-09-26 | Weblog
ヴナンス・コナン(Venance KONAN)という作家がいる。コートジボワール人である。コートジボワールの社会を舞台にした、興味深い小説を書いている。

「ロベールとキャタピラー」と題された小説は、コートジボワールの村々で現実におこっているであろう、社会の変動と軋轢を題材にしたものである。少し長くなるが、村落社会での部族間の問題を生き生きと描き出しているので、ここに粗筋を訳してご紹介する。

<ロベールとキャタピラー>

とあるコートジボワールの村に住むロベールは、村の近くで出会った痩せこけた男を村に連れてきた。ロベールは、彼を村の長に「友達だ」と紹介し、自分が親から相続した森の、一番奥の部分を割り当てて、好きなように働け、と言った。痩せこけた男は、どこかから自分の兄弟の一人を連れてきて、二人で働き始めた。彼らは早朝から日が暮れるまで働き、ロベールと友人達が夕食や酒に誘っても、疲れているからと断った。

ある日、どのような働きをしているのか、ロベールは村の人々と見に行った。森の一番奥まで出かけて、彼らは驚いた。ジャングルの木々が切り倒され、広く開墾されていたからだ。たった二人の力で、そんなことが出来るとは驚きだった。彼らは巨木を、鉈だけで切り倒していった。そして休み無く働いていた。ブルドーザーのように木を切り倒す彼らを、村人は「キャタピラー」と呼ぶようになった。どのみち、彼らの姓名は土地のものではなく、何度聞いても発音出来なかったのだ。

しばらくしてロベールはキャタピラーに聞いた。いったい土地を切り開いて何をしようというんだい。キャタピラーは、バナナかカカオを植えるのだ、と言った。馬鹿な話だ、とロベールは言う。バナナなど、そこらに生えている。それを取ってくればいいじゃないか。キャタピラーは答えず、毎日働き続けた。週に一度は森に行かず、切り倒した木で作った炭を、街に売りに行った。そのうち彼らは、故郷から自分たちの息子や娘を連れてきた。

ある日、キャタピラーは暇乞いに来た。これまで一緒に村に住んできたが、人数も多くなったし、森の奥まで毎日遠い道を通うのもつらいので、農場に近いところに自分たちのを作ることにした、という。ロベールは、キャタピラーがこれまで、バナナや野菜や狩りの獲物などを毎日分けてくれていたから、残念に思った。何より、もう彼らに借金が出来なくなる。ロベールはしょっちゅう金を借りていた。そしてキャタピラーは、彼に返せと言ったことはなかった。

(続く)

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