コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

ロベールとキャタピラー(4)

2008-09-30 | Weblog
代議士がやってきて、ロベールに対して言った。君の戦いは正しい。よそ者に取られた父祖の地を取り返そうというのだから。地域の若者を集めて、運動に纏めてくれれば、資金を提供しよう。ロベールには簡単な仕事であった。若者に酒をごちそうすればいいのだから。資金は定期的に懐に入った。ロベールは、自分が重要人物になりつつあると感じた。女友達には、俺は政治をやっているんだ、と語った。 ある日、自分の若者の一人が、 . . . 本文を読む

ロベールとキャタピラー(3)

2008-09-29 | Weblog
その後しばらく、あのトラックが出現するまでは、村の生活は平穏だった。ロベールに首都に出かける用事があり、首都で働く弟の家に泊まった。お金を殆ど持っておらず、弟になじられた。「兄貴も、そろそろ責任ある振る舞いをしたらどうだ。両親が遺してくれた森を、自分でしっかり開墾することもなく、ただ売ってしまうなんて。そんなことだから、人にお金をせびるようになる。」 この言葉は、ロベールを傷つけた。村に戻って、 . . . 本文を読む

ロベールとキャタピラー(2)

2008-09-27 | Weblog
町で葬式があることになった。有力者の一人が亡くなったのだ。ロベールは葬式が好きだった。彼は葬式の盛り上げ役として有名だったし、葬式に行けばごちそうにありつけ、いつも町の娘たちと懇ろになれた。ただし、町に行くのにはお金がいる。45キロ離れているので、往復の車代が2千フラン要った。娘たちにも数千フランは要るだろう。ロベールはいつもながら素寒貧だった。それに、いつも用立ててくれたキャタピラーは、もう側に . . . 本文を読む

ロベールとキャタピラー(1)

2008-09-26 | Weblog
ヴナンス・コナン(Venance KONAN)という作家がいる。コートジボワール人である。コートジボワールの社会を舞台にした、興味深い小説を書いている。 「ロベールとキャタピラー」と題された小説は、コートジボワールの村々で現実におこっているであろう、社会の変動と軋轢を題材にしたものである。少し長くなるが、村落社会での部族間の問題を生き生きと描き出しているので、ここに粗筋を訳してご紹介する。 < . . . 本文を読む

太鼓と民族

2008-09-25 | Weblog
正面のステージで、音楽と踊りがはじまった。司会者の紹介で、色とりどりの腰巻をつけた人々が、激しい太鼓のリズムに乗って、次から次へと登場する。体を見事に震わせて、熱狂的な踊りを繰り広げる。 日暮れの海辺のホテル。野外のパーティー会場で、私は貴賓席に座っている。熱帯林の破壊を防止するための国際会議がアビジャンで開かれており、主催者のコートジボワール政府が、晩餐会に招待してくれたのだ。招待客が数百人は . . . 本文を読む

マラリアと蚊帳

2008-09-24 | Weblog
マラリアは、熱帯地方に住む人々にとって、大変な脅威である。ハマダラカという蚊に刺されることにより、マラリア原虫が体に入り込む。原虫は肝臓で増殖し、赤血球を破壊する。40度におよぶ高熱を繰返し、体力が無い場合には死に至る。世界で毎年3~5億人が発症、百万人以上が命を落としているとされる。その約9割はアフリカのサハラ砂漠以南の地域、サブサハラで発生、そして犠牲者の多くは、5歳以下の乳幼児である。相手が . . . 本文を読む

国連PKOを訪ねる

2008-09-23 | Weblog
国連は、紛争が発生した地域において、紛争当事者の合意に基づいて、出先の組織を作って送り込み、様々な活動をしている。いわゆる、国連の平和維持活動(PKO)である。この国連組織は、国連官僚や文民警察などの文民部門だけの場合もあるし、これに加えて各国から派遣された軍隊により軍事部門、つまり平和維持部隊を構成する場合もある。 さて、コートジボワールにもPKOが派遣されている。2002年9月以来、国が南北 . . . 本文を読む

大統領選挙にむけて

2008-09-22 | Weblog
「大統領選挙を控えたこの重要な時期に、大使としてこちらに赴任できて光栄です。」 外交団への着任挨拶として、皮切りに訪ねたフランス大使に対して、私はこう切り出した。 「いやー、3年前に私が着任したときも、それと同じ挨拶をしたものでしたよ。」 彼はほほ笑みながら答える。今度の大統領選挙も再び延期されるだろう、との含みである。 大統領選挙。コートジボワールの混乱は、じつにこの大統領選挙をめぐって続いて . . . 本文を読む

レセプションを主催する

2008-09-20 | Weblog
はじめての週末だが、ゆっくり休んではいられない。今日(20日)は、日本からの貿易・投資ミッションが短時間ながら来訪する。日本の関連企業、商社、銀行、政府機関などで構成する代表団が、夕刻6時にダカールから到着する予定である。 一行にはそのまま私の公邸に来てもらい、コートジボワールの財界や産業界の人々を招いたレセプションを行うことで、日本とコートジボワールの貿易・投資関係をどのように進めていくか、じっ . . . 本文を読む