コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

アラーの神に義務はない(3)

2009-04-25 | Weblog
アフリカの黒人固有の病気というなら、もう呪術師に頼って治療するしかない。村人達は、コーラの実、黒白2羽の鶏、牛1頭を用意して、ムソコロニの息子のところに、お許しのお願いに行こうとしていた。彼に詫びを入れ、彼が嫉妬からかけた呪いを、とにかく解いてもらう必要があった。 そうして準備していたそのときまさに、3人の老呪術師が村にやってきた。彼らは3人とも、ぼろぼろの衣服に悪臭を漂わせ、コーラの実を噛みな . . . 本文を読む

アラーの神に義務はない(2)

2009-04-24 | Weblog
自分が生まれてくる前に世界がどうだったのかを、知ることができないのは残念だ。ママが、割礼を受ける前の少女の頃、どのように歌い、踊ったのか。祖母とバラは、ママはカモシカのように美しい少女だった、と言っていた。僕は、ママがお尻で動いている姿しか知らない。でも30年の間、汚臭と煙と苦痛と涙にまみれて過ごした後も、ママは目元に何か美麗な雰囲気を湛えていた。 ママが美しい乙女だった頃、バフィティニという名 . . . 本文を読む

アラーの神に義務はない(1)

2009-04-23 | Weblog
アマドゥ・クルマ(Ahmadou Kourouma, 1927-2003)というコートジボワールの作家が書いた、「アラーの神に義務はない(Allah n'est pas obligé)」という小説は、コートジボワール人の少年が、故郷を出て、ある悲惨な境遇に陥っていく話である。その境遇というのもたいへん深刻な話であるので、また改めて言及する機会があるかもしれない。とりあえずここでは、小 . . . 本文を読む

タクシー運転手の外交

2009-04-22 | Weblog
横浜には、「熱帯木材機関(ITTO)」という国際機関の本部がある。わが国が本部を誘致している、数少ない国際機関の一つである。熱帯木材への需要の高まりとともに、十分な森林資源の管理をしていかないと、乱伐によって甚だしい自然破壊や環境悪化をもたらしうる。そういう観点から、木材生産国と木材消費国との間で、協力関係を築いて、熱帯林の持続的な開発を実現しようという目的で、1986年に設立された。 日本は、 . . . 本文を読む

原生林の保全

2009-04-21 | Weblog
コートジボワールには、バンコの森のように、国立公園や保全林として指定された地域が、全国に13ヶ所ある。もともと、国全体が天然の原生林ばかりの土地で、独立以来そうした原生林を潰して、農業開発を進めていくことで国を造ってきた。しかし、原生林が貴重になり、象をはじめとして多くの動物がいなくなってから、この国でも森林を保全しなければ、という機運になった。 1995年に、はじめて本格的な全国調査が行われた。 . . . 本文を読む

バンコの森

2009-04-20 | Weblog
目の前の落ち葉の上を、何かがごそごそ歩いている、と思ったら、カメレオンだ。私たちの姿に驚いて、近くの木を這い上がった。意外に脚が速い。それまで黒と茶色の縞模様だったやつが、緑になった。枝の先まで上がって、目をくるくるさせて口を大きく開けた。カメレオンは、深い森の中にいる。ここは、バンコの森。アビジャンの街の直ぐ脇にある、太古からの原生林である。 バンコの森は、かつてここに入ったフランス人の植民が、 . . . 本文を読む

開発と破壊

2009-04-18 | Weblog
目が慣れてくると、いろいろなことが見えてくる。半年前にここに来たばかりの頃、アビジャンの郊外に出て、なんとまあ深い緑が続いているものだ、と思った。道路から見える風景は、森林か藪だけで、田圃も畑もない。もっと土地を有効活用すればいいのに、ここには開発の余地がまだまだある、などと思っていた。次第に目が慣れてきた。森林だと思っていたのは、ゴム農園であった。あるいは、チーク(材木用)の植林であった。藪だと . . . 本文を読む

椰子酒で乾杯

2009-04-17 | Weblog
ガンゴロ村のクアメ村長の自宅に、昼食会に呼ばれた。コロネルをはじめ、村の幹部たちが集まっている。食事が始まる前に、やはりここでも、ワイン談義だ。コートジボワールの田舎の村でも、というか田舎の村だからこそ、フランス人たちが残した風習が、根強く残っている。 最初に、シャンペンで乾杯。栓が勢いよく抜かれて、グラスに注がれようとすると、コロネルが違う違う。自分が持参したモエ・シャンドンが冷蔵庫に冷えている . . . 本文を読む