根津公子さんの都教委傍聴記が届きました。教育委員会制度が改正(悪)され、ますます地域住民から遠いものになることが予想されます。だからこそ、今、教育委員会会議を傍聴し、その実態を伝える努力が必要かもしれません。
●根津公子の都教委傍聴記 2014.6.12
公開の場で意見を言えないような教育委員は辞任してほしい
今日の公開議題は報告が4点、①「都立高校入学者選抜学力検査の採点の誤りに係る答案の点検結果(第一次調査)と今後の方針について ②教科書選定審議会の答申について ③教科書採択の日程について ④「企業等による体験型講座」について、だった。①については教育委員全員から発言があったが、②以降の議題については、誰一人発言する委員はいなかった。
①について。昨年度、一昨年度の答案(一昨年度答案は保管期間を超えたため廃棄した学校が57校)について、学校で再点検し、都教委でも点検したところ、現時点で2,211件(昨年度1,139件、一昨年度1,072件)の採点ミスが見つかった。引き続き点検をし、8月末に点検結果を公表する。採点ミスの発生原因について学校に聞き取り調査をしたところ、ア.「採点後3人が点検」の形骸化(採点に誤りがないという思い込みなど) イ.検査日から発表まで中3日間しかないこと ウ.記述と記号選択が混在した問題で採点しづらい エ.同一会場で複数教科が採点することから来る焦りや、授業や行事を並行して行うことによる集中力持続の困難さ 等が挙げられた。再発防止に向けては、「都立高校入試 調査・改善委員会」を設置し、これまでに2回の会議を開催。今後は、8月下旬のプレス発表まで6回の会議を公開で行うということだった。
木村委員長の、「答案にじかに採点するのではミスは防げない。答案は汚さないという大学入試の採点方法に学び、採点のシステムを変えるべき」という提案にはうなずくことができた。答案をコピーして複数の人が採点し、突き合わせるというやり方だ。しかし、これを実現するには、時間と人手の確保がなされなければならない。委員長はその点になぜ、言及しないのか。
竹花委員は「採点ミスの個人を特定できるか」と質問。「できる」との返事に、「応分の責任をわからせねばならない。都教委もその例外ではないが」と。山口委員に至っては、「改善委員会が公開の会議では、言おうと思ったことが言えなくなることもある。どの部分を公開にするか、非公開にするか、考えてほしい」と言った。山口委員自身が、公開の定例会では言えなかったり、発言内容を変えたりしたことがあるのだろうか。疑念が生じた。公開の場で意見を言えないような人には、委員を辞任していただきたい。
また、昨年6月27日の定例会において、実教出版「高校日本史A」「高校日本史B」を学校が選定しないよう、都教委の「見解」を議決するに当たり、6月13日の定例会の後に非公開の懇談会を持ち、そこで「見解」を事実上決定するという、委員自らが教育委員会制度を否定し、権力を濫用する非行をはたらいたが、非公開の会で事前に決定することに山口委員が同意したのは、傍聴者に聴かれると「言おうと思ったことが言えなくなる」からだったのか。
②来年度から使用する小学校教科書の採択にあたり、審議会が答申した教科書調査研究資料が配布され、報告がされた。社会科の「調査項目の具体的な内容」の〈その他〉には、*1領土をめぐる問題、*2国旗国歌の扱い、*3神話や伝承を知り、日本文化や伝統に関心を持たせる資料、*4北朝鮮拉致問題の扱い、*5防災や自然災害時における関係機関の役割、*6一次エネルギー及び再生可能エネルギーの扱い、*7オリンピック・パラリンピックの扱いについて、が列挙され、各社の記述を並べている。都教委の関心はここにあると言わんばかりの答申内容だ。
都教委の答申内容も偏ったものではあるが、改定教科書は現行教科書と比べて、各段と政府の考えを教え込む教科書となっていることが歴然とする。現行教科書は、領土についての記載は一切なかったところ、改定教科書はどれも、「北方領土は日本固有の領土 ソビエト連邦(今のロシア連邦)が不法に占拠している」「竹島は日本固有の領土 韓国が不法に占拠」「尖閣諸島は固有の領土 中国がその領有を主張」と、子どもたちは5年生、6年生と2年続けて同じことを学ばされる。戦前の教科書が辿った道を再び、である。
③について。小学校教科書の採択が7月に、高校教科書の採択が8月に行われることになっていて、その日程が示された。しかし、日程だけの報告ではなかった。
昨年の高校教科書採択の際に、実教出版「高校日本史A」「高校日本史B」が国旗・国歌にかかわり、「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述したことに対し、都教委が「都教育委員会の考え方と異なるものである」から「使用することは適切でないと考える」とした「見解」を出したことについて、撤回を求める請願等が多数、都教委に届いたのを知りながら、今年も、「当該記述に変更がないことが確認できた場合は、都教委は各都立学校長宛に、昨年の「見解」を踏まえて教科書選定をするよう、教育長名の通知を出す」という。これが、一人の発言もなしに確認された。 先ほども触れたが、「見解」の決定は、非公開の懇談会で行った。堂々と公開できなかったことを教育委員は、恥とは思わないのだろうか。そして今年も、その上塗りをすることに対するためらいが一人としてないのだろうか。持論を堂々と展開できない教育委員たち、ということだ。悲しすぎる。
腐りきった教育委員たちに怒りをぶつけたい衝動に駆られるが、傍聴禁止とされないために、声には出さず。
*写真=佐藤茂美