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子どもの尊厳を尊重し、学習権を保障するため、教育統制と競争主義的な教育の見直しを求める決議

2012-10-18 21:14:01 | 弁護士会声明・決議等

※、弁護士法第1条に「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」とあります。ここに日本の正義はまだ生きています。日本弁護士連合会が2012年10月5日、日本の教育の現状に対し決議をあげました。

 

日本弁護士連合会HPをご覧ください。

http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/civil_liberties/year/2012/2012_1.html

子どもの尊厳を尊重し、学習権を保障するため、教育統制と競争主義的な教育の見直しを求める決議

子どもは、一人の人間としてその尊厳を尊重されるべきであり、人格及び能力を最大限に発達させ開花させるための学習権を保障されている(憲法13条、26条、子どもの権利条約6条、29条1項)。



この学習権は、教師と子どもとの間の人格的ふれあいを通じた教育によって実現されるべきものであり、そのため教師には、教育の専門性に根ざした教育の自由が保障されるべきである。憲法は教育の自主性を尊重し、教育基本法は政治や行政による教育への不当な支配を禁止している。



しかし、日本の教育はいま、大きな岐路に立たされている。



教師に対する思想良心に関わる規制の強化、業績評価や各種調査の導入、政治や行政による教育内容への介入などを通じて、教師に対する厳しい統制が進められ、教師の精神的自由が制約され、教育の自主性が損なわれるとともに、教師が子どもに向き合い、必要な援助をする条件や時間が奪われている。



とりわけ、東京では、卒業式・入学式等において「君が代」斉唱時に教職員の起立を求める通達が出され、起立しなかった多数の教職員に対し、戒告、減給、停職処分がなされている。



大阪では、教育行政基本条例や国歌斉唱条例等の一連の条例が成立し、政治や行政による教育の自主性への侵害が強く懸念されるとともに、教師に対する管理・統制が一段と強化されようとしている。北海道では、全教職員に服務規律に関する面接調査を課し、法令等違反行為、政治的活動や学習指導要領違反等について道民による教育委員会への情報提供制度を創設して、教職員への管理を強化している。



こうした政治や行政による教育への介入は、教育の自主性や教師の思想良心の自由を始めとする精神的自由を侵害するとともに、子どもの思想良心の自由の制約につながる危険性があり子どもと教師との自由で豊かな人間関係に基づく教育を損なうことが危惧され、日本の教育の将来に大きな禍根を残すことが強く懸念される。



また、近年、全国学力テスト、学校選択制の導入や学校統廃合などによって、学校間・教師間・子どもたちの間に過度の競争を促進する教育への介入が進められている。子どもたちは成績偏重の学力評価によって格差を付けられ、多くの子どもたちが挫折感や孤独感を抱いている。成績評価による過度の競争主義的な教育は、子どもの人間性や多様な能力の全面的な発達を阻害することが懸念される。子どもの成績は、家庭の経済的条件に影響されることが報告されており、経済的な格差が教育の格差につながることも危惧される。



教育条件に関する規制が緩和されたことにより、常勤教員の削減などによって教育環境が悪化し、子どもの学習環境の地域間格差の拡大も懸念されている。国は全ての子どもが必要かつ十分な教育条件の水準における教育を受ける権利を有することを踏まえ、少人数学級や教員定数基準など、教育的な必要性から導き出された十分な教育条件を立法で整備するべきである。



さらに、貧困家庭が増加し、経済格差が教育格差をもたらすことが強く危惧される状況の下、子どもがその経済的条件にかかわらず必要な教育を受ける権利が実質的に保障されるよう、必要な施策が実施されなければならない。



よって、当連合会は、国、地方自治体及び教育委員会に対し、次のことを強く要請する。



1 国、地方自治体及び教育委員会は、教育行政全般に渡り、憲法・子どもの権利条約・教育基本法に定められた、子どもの学習権・成長発達権の保障、教育の自由の尊重、教育への不当な支配・介入の禁止等の教育上の諸原則を遵守するとともに、子どもと教師の思想良心の自由を始めとする精神的自由権を尊重すべきこと。



2 地方自治体及び教育委員会は、入学式、卒業式等の学校行事等において、教職員及び児童・生徒に対し、国旗に向かって起立し、国歌を斉唱することの強制及びその不履行を理由とする不利益処分や不利益取扱いをしないこと。



3 国、地方自治体及び教育委員会は、過度に競争的な環境が子どもの人格の成長発達や学習権の充足に否定的な影響を及ぼすことがないよう、全国学力テスト、学校選択制、学校統廃合、公立の小中一貫校及び中高一貫校等を含む学校教育の在り方を検証し、必要に応じて見直すこと。



4 国は、全ての子どもが必要かつ十分に学習権を保障されるよう、教育的必要性から導き出される教育条件整備基準を規定した全国的な最低基準(ナショナルミニマムスタンダード)を定める立法をすべきこと。



5 国は、公立小中高等学校の完全無償化など、子どもの経済的条件にかかわらず全ての子どもに必要かつ十分な教育を受ける権利が実質的に保障されるよう、積極的施策を講ずること。



以上のとおり決議する。

 

2012年(平成24年)10月5日

日本弁護士連合会


 

 


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