「君が代」調教NO!松田処分取消裁判 控訴審が始まります
第1回口頭弁論では、原告(松田さん)が意見陳述します
6月13日(火)16:00 大阪高裁84号法廷
ひき続き報告集会 大阪弁護士会館1110号室
「君が代」調教NO!松田処分取消裁判の2022年11月28日大阪地裁不当判決(横田昌紀裁判長)
https://www.nakama-kyoiku.com/archives/1314
に対して、松田さんは控訴し、2023年3月10日付で大阪高裁に控訴理由書を提出。
https://www.nakama-kyoiku.com/archives/1375
被控訴人(大阪市)からは、4月27日付で控訴答弁書が届きました。
https://www.nakama-kyoiku.com/archives/1434
控訴審の第1回期日は、一旦5月9日に決まっていましたが、裁判体の変更を理由に裁判所から延期の連絡が来て、調整の結果、6月13日(火)16:00高裁84号法廷となりました。口頭弁論終了後、引き続いて弁護士会館1110号室で報告集会も開催します。
この大阪高裁第1回口頭弁論では、原告(松田さん)の意見陳述も予定しています。今年のと小学校卒業式・中学校入学式で「君が代」を起立・斉唱したくないと申し出て、その思いに沿う行動をしたむすめさんのお母さんから聞いたことばを入れて、教員への「君が代」強制は子どもにとっても人権侵害であることを訴える意見陳述です。
1回での結審を許さないためにも、ぜひ、多くの方の傍聴支援をお願いします。
【参考】(控訴審意見陳述内容にかかわって)
★原審陳述書(2022.7.26)
★原告本人調書速記録(2022.8.22)
※本人調書速記録には、誤記誤植があると思われるので、指摘する文書を出しています。
・間違い⇒監督 訂正⇒感得 ・間違い⇒分書 訂正⇒文書 ・間違い⇒強化 訂正⇒教化など
【読み原稿】
令和2年(行ウ)第168号 懲戒処分取消請求事件 控訴審 第1回口頭弁論
冒頭意見陳述 (2023年6月13日(火) 16:00 大阪高裁84号法廷) 控訴人 松田 幹雄
意見陳述の機会を与えていただいてありがとうございます。控訴人の松田幹雄です。控訴の理由、控訴審にあたっての私の思いを述べさせていただきます。
原審判決では、国歌斉唱が式次第に位置づけられた卒業式にあたって、私が「指導」のあり方をめぐって校長に要請してきた事実が認定されています。しかしながら、私が何を主張し、何を要求したのか、その内容については、認定事実にありません。例えば、2015年2月16日に校長に提出した「2015.1.23大阪市教育長通知についての学校長への質問」や2015年2月23日に同じく校長に提出した「大阪市教委国旗・国歌通知にかかわる質問への学校長回答(2.18)に対する再質問」の内容や結果、2015年3月16日と3月19日に市教委に提出した上申書①、上申書②の内容についての記載はありません。
私は、2022年7月26日付陳述書や8月22日の証人尋問において、『「君が代」とは何か、その歴史についての私の認識』『「君が代」を起立・斉唱することの私にとっての意味』『教員としての良心の自由に基づく不起立・不斉唱』『大阪市立学校の「君が代」指導と卒・入学式の実態、及び、大阪市国旗国歌条例・教育長通知・職務命令が違憲違法であること』について陳述し、私が「君が代」を起立・斉唱しなかった理由・動機について説明しました。しかし、原審判決文は、それらにはまったくふれることなく、私の「君が代」不起立・不斉唱の理由・動機にかかわる記載は、「『日の丸』『君が代』に否定的な考えを有する原告」(判決文P32)の文言しかないのです。
私の処分取消請求の第一の柱は、「君が代」不起立・不斉唱の行為が、私にとってそれしか選択肢のない、私の「思想・良心」に基づく行動であり、憲法19条、国際人権自由権規約18条によって保護される権利であることです。私にとっての「君が代」起立・斉唱の意味についての認定抜きに判決を下すことはできないと考えます。
子どもたちへの権利侵害を見過ごすことはできず、「起立・斉唱」職務命令に従うことは、自らが子どもたちへの権利侵害に手を染めることだという認識が私の不起立・不斉唱の重要な理由・動機となっています。原審判決の経過にかかわる認定事実からも明らかなように、私は、『子どもたちに「君が代」の歴史を正しく伝え、どう考えるか、決めるのは子どもたち自身であるという立場での「指導」であるべきだと主張し、そうでなければ、子どもの権利条約違反であり、子どもの権利侵害となる』と指摘してきました。原審判決が、「君が代」強制による子どもたちへの人権侵害を問題とする主張は、この裁判の争点とはならないとしたことにはまったく納得がいきません。
大阪市ではないですが、今年の小学校卒業式・中学校入学式で「君が代」を起立・斉唱しなかったむすめさんのお母さんからお話を聞く機会がありました。お母さんとむすめさんが「君が代」を歌いたくない気持ちはお母さんのことばによると次のようなものです。
「私は子ども時代から、第二次世界大戦について考察し行動することが平和な世界をつくることに繋がると確信して生きてきました。日本の戦争責任についての総括で、いくつも納得できない点があり、その中に日の丸・君が代問題があります。いかなる見地からしても証明済みの、日本の他国への侵略。この際に用いられたものを戦後も引きずっているおぞましさは、耐えられないものがあります。」
小学校卒業式を前に、お母さんが、「卒業するむすめが『君が代』の起立・斉唱をしたくないと言っている」と小学校に申し出た時の学校の対応は、むすめさんに「あなたが起立斉唱しないと周りのみんなが驚く」「せっかくの卒業式を台無しにしてしまうかもしれない」「みんなで練習してきたのに、みんなに迷惑がかかる」と、起立・斉唱するように圧力をかけるものだったということです。これは、明らかに子どもの権利条約違反の対応です。
中学校の入学式前には、「君が代」不起立・不斉唱がきっかけでむすめさんがいじめられるのではと心配する校長に、お母さんは、「君が代」の簡単な歴史を示したうえで、「ぜひ、『君が代』の歴史をきちんと伝え、児童・生徒が自分の考えを深められるよう援助してください。子どもたちの意見を聞き、嫌だという子に強制することがないようにお願いいたします。」とお願いする手紙を渡したそうです。
そのお母さんは、原審判決に対して、「『日の丸・君が代』は教育委員会からの『命令』だから逆らえない。教員に対してのものだから児童の自由意思は関係ない!? そんな無茶苦茶な理論が通るわけがありません。先生のしていることは生徒に多大な影響を与えることを誰もが知っています。」と怒っておられました。
原審証人尋問にあたっての陳述書の最後に、私は、次のように書きました。
「『君が代』には歴史があります。また、現在、儀式的行事と呼ばれる卒業式・入学式にも歴史があります。これらは自然に今のような形になったのではなく、明治以降の国家意思によってつくられてきたものです。その実相を踏まえた判決をお願いしたいということです。次に、大阪市の国旗国歌条例と教育長通知の下での現在の卒業式・入学式の現実について、子どもの権利条約に照らして評価してほしいということです。最後に、それらの状況を踏まえた上で、私の『君が代』不起立・不斉唱の行為を罰するべきかどうかについては、『思想・良心の自由』『教員としての良心の自由』の適用を、国際人権自由権規約第18 条第 3 項の規定にそって判断いただきたいと思います。」
裁判官のみなさまには、私にとっての「君が代」起立・斉唱の意味、特に、子どもたちへの権利侵害に手を染めることはできないという私の不起立・不斉唱の理由について認定いただき、それが国際人権自由権規約第18 条で保護される権利であるとの判決をぜひともお願いしたいと思います。それが、子どもの人権保障に直結するものであることを確信しています。
以上、意見陳述を終わります。