ある種類の問題を解くときに、生徒たちが似たような間違いをすることがある。同じパターンのミスが繰り返される。しかも同じ生徒が繰り返し間違える。そういった間違いには必ず理由があるのだが、それがすぐわかるものもあれば、不明なものもある。
最近解明できたものを、以下に紹介しよう。
a) Ken's father washed the car yesterday.(受動態にせよ)
b) The car is washed by Ken's father yesterday.
上記の b) の文は、それ自体としては誤りではないが、a) の受動態としては、誤りである。すでに誤りであるとして出してあるので、どこが間違っているかすぐにわかるひとも多いだろう。しかし、それでもまだどこが間違っているのかすぐにわからないひともいるだろう。 元(もと)文が過去形のものを受動態にするときによく見られる間違いのパターンである。この間違いは実に多い。
それでは、なぜこう間違えるのか。理由はこうである。
この b) の文の解答者は、受動態にするには be動詞が必要であることがわかっていて、ある程度の英語の実力は備わっているのだ。しかし、以下のように混乱がある。
まず、”be 動詞”を導入することによって、それでもう受動態になったと思い込んでしまったのだ。
そして、過去形と過去分詞形の働きの違い、区別がややアイマイであるために、 次のような勝手な思い込みが重なる。そもそも元(もと)文の Ken's father washed the car yesterday. の中の ”washed” は過去形であり、いっぽう受動態にした方の The car is washed by Ken's father yesterday. の中の ”washed” は過去分詞形であって、別物のはずである。ところが、 wash という動詞が規則変化をする動詞で、過去形と過去分詞形とが同じ形であるために、その文法的な機能の違いが見落とされてしまった。そのために、受動態の b) の文中の washed はそのまま過去時制を表していると思い違いしてしまった。
実際は、能動態の元(もと)文では、過去という時制は一般動詞の washed で表され、いっぽう、受動態になった文では、時制は、be 動詞のほうで表されなければならない。つまり、 この場合は is ではなく、 was にすることによってである。
以上の間違いにひそむ受動態の誤った把握を図式化すると、以下のようになる。
受動態の誤った把握: [ is ] washed
[ 受動態 ] 時制
受動態の正しい理解: [ was washed ]
[ 受 動 態 ]
時 制
繰り返し間違える理由は、受動態の理解がまだ浅薄であるためで、これに気づかないうちは、何度でも間違えるだろう。これに気づけば、間違いを繰り返さなくなるはずである。ここまで読んできた君は、もうだいじょうぶだろう。