Snapeの英語指南

英語長文対策、英語速読法、英語学習法、高校生、中学生、社会人の英語学習に役立つヒントを紹介。

カップとコップの違い: cup と glass

2014-03-04 00:13:08 | 気になる英単語

カップ(cup)とコップ(glass)の違い

カップ  cup:  例 tea cup, a cup of coffee

1. 形状:  カップは取っ手がついている(熱いものを飲むため)

2. 用途:  カップはふつう熱いものを飲むのに使う

3. 大きさ: カップはコップほど背が高くない

4. 素材:  陶器でできているのが一般的

 

 

コップ (グラスと言う場合もある) glass:   beer glass,  a glass of milk

1. 形状:  コップは取っ手がない

2. 用途:  コップはふつう冷たいか室温のものを飲むのに使う

3. 大きさ: コップはカップより背が高い

4. 素材:  本来ガラスでできているのが一般的で、そこから glass と言えば、いわゆるコップとなった。

語源: ちなみに外来語として定着している “コップ” はオランダ語の "kop" からきていて、江戸時代に日本語に入ったが、語源的には英語の "cup" と同じである。面白いことに、元は同じラテン語の "cupa" なのに、まずはオランダ語として、次に英語として日本語に入ってきて、コップ と カップ というふうに似ていながらも別のものを指すようになった。

以上が、わたしが整理したカップ(cup) と コップ(glass)の違いである。

しかしである。

 

使い捨て(disposable)の “紙コップ” は英語でなんと言うのか。

実は paper cup である(コップではない)。これは紙製の取っ手があろうがなかろうが paper cup なのである。形状としてはどう見てもコップではあっても、paper cup であって、paper glass とは言わないのである。たしかに paper glasspaper は「紙製の」という意味であって、glass はもともと「ガラス」であるから、“紙製のガラス” のような感じで違和感がある。

紙の場合はいいとしよう。やっかいなのはプラスチックである。使い捨てコップ、使い捨てカップとして最近は紙コップよりも普及していているかもしれない。ではこれは英語では何と呼ぶのか。

スタバや、立食パーティー会場で使用される使い捨て(disposable)のものは一般的には plastic cup でよい。いくらLサイズのずん胴のものでも英語では plastic cup で通してよい。 もちろん取っ手がついているものはなおさらである。

 

さて、問題はみなさんが朝、歯を磨くときに使うような “プラスチック製のコップ” である。この類いのものは、

1. 形状:  プラスチック製のコップは取っ手がない

2. 用途:  プラスチック製のコップはふつう冷たいか室温のものを飲むのに使う

3. 大きさ: プラスチック製のコップはカップより背が高い

4. 素材:  透明、不透明、半透明のプラスチックで、ふつう “使い捨て disposable” ではない。 

素材の点を除けば、そのまま英語の glass (コップ) に相当する。 では、 プラスチック製のコップは、plasitc glass  でいいのか?

調べる前は、「いくらなんでも、それはないだろう」とわたしは思っていた。“プラスチック製のガラス” になってしまうではないか!しかし、調べてみると、plasitc glass  で正解なのである。

つまり、“使い捨て” なら、 plastic cup  で、 “使い捨て” でなければ、plastic glass  なのである。

実は、この plasitc glass  はさすがに英国人、米国人にも違和感があるらしく(“プラスチック製のガラス”?)、他の表現はないかと悩んでいるひとも多いのであるが、もうすでに市民権を得た表現である。つまり、glass には2通りの意味があると割り切るべきなのだ。すなわち、 1) glass: ガラス、ガラス製の、 そして、2) glass: コップ の二つである。 

 

新聞 the Manchester Evening News での用例:

"Police are advising pubs and clubs to use plastic glasses and employ extra door staff for Monday night’s crunch Manchester derby."

 

 

 テレビ BBC NEWS での用例: 


"A proposal to extend the use of plastic drinks glasses to all pubs in the Highlands has been dropped." 

出典:ttp://english.stackexchange.com/questions/137254/is-plastic-glass-as-a-container-a-valid-expression

 

 

現にイギリスのパブで、プラスチック製のグラスを嫌がって、バーテンダーに "Give me a glass glass!" と客が言うと、ちゃんとガラス製のグラスでビールが出てくるのである。「ガラス製のグラスをよこせ!」である。

 

ここまできたのなら、読者の皆さんにはぜひこう訊いて、突っ込みを入れてほしいものだ。

“使い捨て” でないプラスチック製の コップ が plastic glass  なら、

“使い捨て” でないプラスチック製の カップ は 英語では何と言うのか、と。

 

もちろん、すでに見てきたように、plastic cup  は「使い捨てのカップ」という意味ですでに使われてしまっているので、使いにくい。使えば、多少の混乱が常につきまとうだろう。

そこで、「“使い捨てではない”プラスチック製のカップ」を指すために使われだしたのが、 plastic mug  である。 mug はもともと厚手の陶磁器である。使い捨て(disposable)のプラスチック製カップはたしかにペラペラで薄手である。これと区別して、使い捨てでない、そして比較的 “厚手” のプラスチック製のカップを plastic mug と呼びだしたのである。 

日常的な、あまりにもありふれた食器類であるが、それを実際に英語で何と呼んだらいいのか、はっきりさせておくことも必要であろう。

 


原発と原爆は違う? 広島市長の発言

2013-07-27 07:38:47 | 気になる英単語

 日本という“言霊”の国では、国民は言葉によって簡単に操作される。

 2013年7月27日付 ヤフーニュース より

なぜはっきりと “核”発電所 と言わないか?

 

英語では nuclear power plant と呼ぶのだが、日本ではなぜか一般に 原子力 発電所 という。原子力、原子は atom, atomic のはずだ。実際、英語では atomic power plant  などとはふつう言わないのだ。

 

nuclear  power plant

      核 発 電 所

本来こうあるべきなのである。

             ( power plant  は電気工場、つまり電気を生産する施設を意味する )

 

問題は、日本語の “原子力” である。  なんで素直に“核”と言わないのか。

そもそも“nuclear” は “核” である。 さらに言えば、核物理学的に言っても、原子=核ではない.  “核” つまり “原子核” は、 “原子” よりも小さいはずではないか?

原子爆弾というものがかつてあって、地球上で使用されたことがある。それも、一般市民に対して使われたもので、しかも日本に落とされたものだ。日本の二つの都市に落とされ、壊滅的な被害を与えたものだ。人類史上実際に使用された兵器のうちで最大の破壊力を持つものであった。もちろんこの原子爆弾よりもはるかに上回る破壊力を持つ兵器もその後いろいろ開発されているし、ミサイル型のものもあり、スーツケース型の小型のものもある。

さて、この “原子爆弾”(単に“原爆“ともいう) という名称だが、英語ではたしかに “atomic bomb” である。しかし、この“atomic bomb” という呼称は、日本への投下後は使われず、以降 “nuclear bomb”(核爆弾)、さらに広くは “nuclear weapon”(核兵器) と呼んでいる。

 

ここでよく誤解が起きるので、注意してほしい。原料が原子から原子核に変わったというわけではない。当初も今も、莫大なエネルギー源として“核分裂”を利用するという原理とその応用の事実は変わらない。最初はおおざっぱに“原子”、“原子力” と呼んでいただけである。しかし、より定義が厳密になって、 “atom”(原子) ではなく、 nucleus”(核、原子核)、そしてその形容詞として “nuclear”(核の)という語が使われるようになったのである。これはちょうど、発見当初は AIDS(エイズ) と呼んでいたものが、その後の研究でより厳密な定義として HIV(ヒト免疫不全ウィルス)と呼びならわされるようになったようなものである。科学の歴史ではよくあることだ。

 

なので、英語では軍事利用であれ、平和利用であれ、今日ではすべて “nuclear”(核) を冠して呼ぶ。大量殺戮という目的であれ、電気を作る目的であれ、エネルギー源はすべて同じ核分裂なのである。

                 nuclear energy  =   エネルギー

                nuclear facilities  =   施設

                nuclear weapon  =  兵器

                 nuclear missile   =  ミサイル

              nuclear warhead   =   弾頭

    nuclear disarmament   =   軍縮

 

     nuclear submarine  =  潜水艦

 nuclear-powered carrier  =  空母

     nuclear power plant  =  発電所

 

いろいろと用例をあげたが、最後の3つの日本語は見慣れないので、違和感があったかもしれない。実はこの“違和感”がくせものなのである。

“原子力潜水艦”、“原子力空母”、“原子力発電所” と書いたり、言ったりしてくれないと不自然に感じるほどに日本人は洗脳されているのである。それはこういうことである。

英語では、核分裂から取り出すエネルギーを“atomic”(原子) とはもはや呼ばず、"nuclear" (核)と呼び替えて、もう半世紀以上経っていて、英語というより世界の常識である。たとえば、フランス語でも韓国語でも、ロシア語でも、中国語でも、みなそれぞれの言語での“核”を使って表現している。

実は、この今では廃語の“原子力” (atomic) という用語を後生大事にして未だに利用している日本は世界でも非常に例外的な国であり、これには深い理由があるのだ。

種明かしをすると、日本では平和、安全であることを印象づけたい場合、もしくは軍事的核利用の印象を薄めたい場合に “原子力”が使われているのである。そして、“核”のほうは “戦争、危険” に使われている。この言葉の巧みな使い分けによる組織的洗脳は、東京電力と政府によるもので、過去半世紀にわたって一貫して機能してきたし、今でも機能している。

どうして東電が張本人だと言えるのか?“核”を使った発電所を日本に導入した1960年代にはもう世界的に “nuclear” power plant という呼称が定着していたのに、それをわざわざ”原子力”発電所 と呼んで国内で広めたのは東電と政府の深慮遠謀である。しかし、最近は用語が増えて、さすがにこの言い換えが追い付かなくなって、ほころびかけている。しかし、それでもいちばん影響力のある“原子力発電所”や“原発”という言葉を一般化させて、その建設、稼働に反対する人たちも知らずに使っているのだから言葉による染脳は恐ろしい。日本という“言霊”の国では、国民は言葉による操作にあまりにも無頓着、つまり無防備である。「たかが言葉じゃないか!」というひとほど骨の髄まで染脳されている。それを認めると自尊心が傷つくので「たかが・・・」と自分に言い聞かせる傾向がある。

    原子力 = 平和 = 安全 = 善い

     核   = 戦争 = 危険 = 悪い

この二元論を国民に刷り込むために “原子力” という廃語を”廃物利用”して巧みに使いまわしてきたのである。

 

それでは、“原子力潜水艦”、“原子力空母” はどうなんだ?これらを平和利用とは言えないではないか!?はい、はい。これは、2つめの「軍事的核利用の印象を薄めたい場合」に当たるのだ。動力源と兵器の両方に核を使うようなアメリカの軍用艦船はしばしば日本に寄港、停泊し、新聞でも報じられる。反戦団体、反核団体がデモなどの運動を行うこともある。そういう状況で、“原子力=平和=安全善” という呪文が多少功を奏するのである。“核=戦争=危険=悪” ではありませんよ、という裏のメッセージを受け入れさせて、いわゆる“核アレルギー” をなだめるためである。

新聞、テレビを通じて一方で 「原子力発電所」、「原発」、「原子力の時代」「原子力平和利用」、そしてもう一方で「核兵器」、「核廃絶」、「非核三原則」、「核実験」という活字、音声が何十万回、何百万回と繰り返され、国民の頭に刷り込まれてきたのである。こうした言葉を疑わず、その言葉を受け入れてその言葉で思考していると、本人が意識するしないにかかわらず、“原子力”と”核”の善悪二元論の枠組みが頭の中にしだいに出来上がってくるのである。つまり、頭の中にいつの間にか引き出しが2つ出来てくるのである。当然だろう。

つまり、政府と電力業界とマスコミによって、日本人は “原子力” “核” とが “善” 悪” という対立概念であるかのように思わされてきたのである。政府も電力業界も、“原子力開発=平和=安全”はしているけれど“核開発=戦争=危険”はしていませんよと国民に思わせて、安心させ、油断させることに成功したのである。日本を、原子力=安全”発電所だらけにできた背景にはこうした陰の努力もあったのである“核=危険”ではここまでスムーズにはいかなかっただろう。日本の新聞もテレビもこの二元論を疑わずに垂れ流すかたちで加担してきた。じっさい、“非核三原則”とは言っても、“非原子力三原則”とは決して言わないのはなぜだ?原子力潜水艦原子力空母も、核潜水艦、核空母 ではない" から入って来れるのだ。

実体はすべて同じ “核” である。この禍々しい(まがまがしい)現実を少しでも覆い隠すために、“原子力=平和=安全善”というラベルを忙しく貼りまくってきたのである。“原子力”でもすでに十分禍々しいと言うひともいるだろう。そう思えるようになるためには3.11福島原発事故を待たなければならなかったのである。言葉によって、マスコミの利用によって、国民の思考、発想が優に半世紀以上も操作されてきた一つの例である。実に見事な染脳工作ではないか?してやられたものだ。気がつくまでは騙されていたということである。

これは何となくそうなったというものではない。意図的、計算ずくの結果である。そしてこれは、そのほんの一端であり、まだ見破られていないものもある。脱原発だけでなく、"脱染脳"も必要ではなかろうか?

 

 

 気がつくまでは、騙されていたということである。


オールタナティブ(alternative)って何だ?

2012-10-16 11:29:41 | 気になる英単語

 オールタナティブ(alternative)って何だ?

 このalternative (代替) という言葉は形容詞として  alternative energy (代替エネルギー)、alternative medicine (代替医療)というふうにしばしば使われる。
 
 しかし、この”代替”という言葉はくせ者である。もともと日本語には無かった言葉で、英語の alternative の訳語として出てきた言葉である。辞書によれば、「それに見合う他のもので代えること、そのためのもの(例)路面電車を廃止して、バスで代替する、代替地」 と出ているが、元となった英語の alternative からは少しずれた定義になっている。日本語では「AをBで代替する」というふうにしばしば動詞的にも使われるが、英語にはその意味での動詞的用法はない。英語だと、動詞的には代用するという意味の substitute になる。日本語の「代替する」は、まるで「代用」と同義のように使われていて、本来の alternative の意味からは離れている。特に「AをBで代替する」的な、特に上記の”路面電車→バス”のような、「古いものを新しいものに代える」、「Aを捨ててBを採る」、「Aを否定しBを肯定する」 といった性急な意味に解釈されることが多いのが日本語の「代替」の特徴かもしれない。
 
繰り返すが、元々の英語の alternative は、「おきかえる」というような動詞的意味はなく、単に、「別の、別の選択肢となる」という形容詞的意味である。日本語の特に動詞的な用法での「代替する」には常に目の前の選択肢は1つでそれがAからBにかわるという、2次元(線)的な、一直線上でのおきかえといった狭い観念があるが、元の英語の alternative には3次元(面)的な、選択野の拡大の意味がある。B、C、D . . .と複数あってもおかしくないのだ。わかりやすく対照的に言うと、日本語では「次はこっちだ」であり、英語では「こっちもあるよ」である。日本語ではしばしば「AよりBのほうが良い」という価値判断が入り込んでいる。しかし、英語では一般に「A以外にB、C、D、E . . .もあるよ」というだけで、ニュートラルである。価値の序列もなく、たんなる選択肢の複数性が含意されている。
 
さて、なぜこの一見ささいな意味のズレにこだわるかというと、日本ではこの”代替”という言葉が冠されると、エネルギーも医療も、非常に偏った性急な考え方が根を張ってしまうからである。たとえば、”代替エネルギー”にしても”代替医療”にしても、日本語的というか日本人的な ”A→B” という見方をすると、当然「Aの否定」を含意する。つまり、「今までの主流だったものはもう古くてだめだ」という性急な前提が立てられてしまうのである。そして「Bの肯定」つまり、「新しいものはいい」という安易な結論に飛びつくか、盲目的にAにしがみつくという単純な二者択一に走る傾向がある。しかし、多くの場合、複数の選択肢は並立可能な場合が多いものだ。ここであえて”両立可能”という言葉は避けたのは、、”両立可能”は2つのものについてしか言わないからである。いっぽう並立は2つ以上、つまり2,3,4,5 . . .無限のものについて言う。
 
”代替”エネルギーというと、太陽光発電、風力発電、地熱発電などなどがあるが、これらが既存の主流のもの、具体的には火力発電、水力発電、原子力発電をすべて否定し去って、それらにとって代わるものという意味ではないはずだ。現に「代替エネルギー」の中には低効率なもの、有害なもの、危険なものも数多くある。
 
同様に ”代替”医療というと、カイロプラクティック、鍼灸治療、電子治療、アロマテラピーなどがあるだろうが、これらが既存の主流の西洋医学 を否定し去って、すっかりこれにとって代わるものではないはずだ。「次はこっちだ」ではなく、単に「こっちもあるよ」であるはずだ。こっちもあるよ、というだけで、それが優れたものかどうかはわからない。実際、「代替医療」をほとんど隠れ蓑にしているような、医療の名にもとるインチキ治療、詐欺治療、信仰治療も世の中には山ほどある。
 
 エネルギーでも医療でも、「既存の主流なもの」は一大勢力を築き上げているのが通例である。しかも体制化して圧倒的な支配力をふるっている。そのためマイナーな選択肢が不当に軽視されていることが多いのが実態である。だからこそ「こっちもあるよ」という、より公平な見方、権利回復的な見方が必要なのだ。そしてまさに英語の alternative という言葉は現代ではそうしたマイノリティ復権の意味合いで使われている言葉なのである。しかし、このマイノリテイ復権運動に便乗したインチキや悪質なものもちゃっかり存在するのが現実である。「次はこっちだ」といった性急なものの見方は、かえって挫折、落胆、失望につながる。
 
どんな方法や手段も複数存在するものだ。1つしかないように見えるのは単にそのメジャーな勢力の巨大さゆえである。その巨大さの内部はしばしば体制化し、腐敗し、悪弊化していることが多いものだ。いっぽうあまり日の目を見ないマイナーな側の中にも相当に悪質なものがある。医療、エネルギー、教育、食生活、福祉、経済、災害対策. . . とわれわれを取り巻く問題は無数にある。その解決方法も多様であるはずだ。複数の選択肢の中から、既成の観念にとらわれることなく、自由に優れたものを選ぶことができるようになりたいものである。「代替」、「オルタナティブ」という言葉を目にしたときに思い出していただけたらと思う。

 


come up with の訳は「思いつく」か?

2012-01-18 20:22:25 | 気になる英単語

come up with ~ 

How did you come up with such a unique idea?

どうやってそんなユニークな考えを思いついたのですか。

 最近、大学入試で出題頻度の高いイディオムである。「思いつく」が定訳とされているが、これにはちょっと問題がある。私は、この定訳の、単に個人の頭の中の出来事だけのような一義的な訳に大いに不満がある。不満と言うのは、不足だということである。文脈によっては単に「思いつく」では不十分な場合、またまったくの誤りとなる場合があると言いたいのだ。以下の例をみてほしい。

  Einstein came up with the theory of relativity in 1905.

  A) アインシュタインは1905年に相対性理論をひっ提げて登場した

  B) アインシュタインは1905年に相対性理論を思いついた

 

”come up with = 思いつく” という公式だけの頭のひとには、A)の訳は驚きかもしれない。しかし、「1905年に」という歴史的文脈からすると、むしろ B)の訳は舌足らずの印象を否めない。

さて、そもそも  "come up"  は、本来「こちらにやってくる」という意味である。 そして、"with ~ " はもちろん「~を伴って」 という意味である。

そうであるならば、以下の文はどうだろう。

  He came up with his wife at the party.

  A) 彼はそのパーティーに妻を伴って現れた

  B) 彼はそのパーティーで妻を思いついた

 はたして、B) の「を思いついた」 の訳は成立するだろうか。

 

ちなみに、 "come up"  は "happen"  「(出来事などが)起こる」の意味にも使われる。以下の例を参照されたい。

  Call me on my cell phone if anything comes up.

  何かあったら、僕のケータイに電話してくれ。

 

さて、come up with に戻る。アメリカ英語の権威的辞書である メリアム・ウェブスター英語辞書(Merriam Webster) での定義は以下のとおりであるが、やや抽象的なきらいがある。

come up with : to produce especially in dealing with a problem or challenge <came up with a solution>

コリンズ類語辞書(Collins Thesaurus)によれば、以下のとおりである。

come up with : verb      

produce, advance, create, discover, furnish, offer, present, propose, provide, submit, suggest

こちらのほうがウェブスターより、具体的な類語を偏りなく列挙している点でわかりやすいと言えるだろう。類語として挙げている11の動詞のうち、過半数である7つは「提案する、提示する、提起する、提供する、提出する、といった、相手・受け手を前提とした表現であって、単なる「思いつく」の訳では収まりきらないものである。

ここで、以下の用例を見てほしい。

  She came up with a very convincing explanation for the queer phenomenon at the conference.

  A) 彼女はその学会で、その奇妙な現象について説得力ある説明を提示した

  B) 彼女はその学会で、その奇妙な現象について説得力ある説明を思いついた

どちらの訳が適切かは、言うまでもないだろう。B)は適切でないどころか、明らかな誤りとも言える。なぜならば、B)の訳では、彼女はその学会の席で初めてその説明を思いついたことになってしまうが、常識的に考えて、思いついたのは学会で提示・発表する以前であるはずだからである。

しかし、もし元の英文中の"at the conference" "in her bed" だったらどうだろう。その場合、彼女は自分の家のベッドの上で今、目が覚めたばかりで、夢の中で何かヒントを得たところという状況かもしれない。それであれば、「思いついた」の訳こそ適切であろう。逆に「提示した、提案した、提起した・・・」の訳は不適切と言える。

  She came up with a very convincing explanation for the queer phenomenon in her bed.

 

 

以下の用例は、つい最近のイギリスのヤフーニュースでの用例である。ジャーナリズムの分野でもよく目につくようになった。

  Many towns cannot come up with subsidy payments.

 A) 多くの町は補助金を出すことができない。

 B) 多くの町は補助金を思いつくことができない。

言うまでもなく、B)の訳は誤りである。たしかに訳は A) のようになるのだが、それにしてもここでは "come up with" は、ほとんど上記のコリンズ類語辞書の挙げている "offer"、"furnish"の意味で使われている。<読者の指摘に感謝したい>

 

私が、たまたま先日読んでいたミステリー小説(2009年出版)にも、この come up with が5回ほど出てきた。以下はそのうちの2例である。

It was like running late to catch a plane---the stressful part was racing, hoping you might still make it.  Once you knew the plane was gone, you could relax, accept it, come up with an alternative.  (39.1 FAULT LINE  by Barry Eisler)

「それは飛行機に間に合うように、しかしもう遅刻して走っている時に似ている。きつい部分は、ひょっとしたらまだ間に合うかもしれないという一縷の望みをかけてがむしゃらに急いでいるときだ。飛行機がもう飛び発ってしまったとわかってしまえば、リラックスできて、それを受け容れ、別の方法を考えつくこともできよう。」

こちらは「思いつく」という訳で十分な例だろう。

 

Alex got to the office at six o'clock the next morning. He hadn't slept well, but at least he'd come up with a course of action.  (62.1 FAULT LINE  by Barry Eisler)

「翌朝アレックスは6時に職場に着いた。よく眠れなかったが、少なくともその日の行動予定は立てることができた。

こちらは、「思いつく」ではなく、「作り上げる」という意味にとるべきだろう。

 

追記: 以下は、Frederick Forsyth の AVENGER  で拾った用例である。

What he came up with was a process now known as "pressure acid leaching."(31.13 AVENGER  by Frederick Forsyth )

彼が考案したのは、今日(こんにち)”加圧酸化浸出”として知られている技術工程だった。」

 But Washington did identify the girl. They came up with a firm ID based on the prints. (144.13 AVENGER  by Frederick Forsyth )

「しかし、ワシントンはその少女の身元を割り出した。指紋に基づいた確かな身元を割り出してみせたのだ。」

は、最近流行している言い回しなので、いろいろな意味に濫用されているきらいがある。日本の入試英語問題の作成者は、そのうちの「思いつく」だけの定訳しか”思いつかない”で、一つ覚えのように出題している。しかし、現実世界の英語では、この表現はもっと流動的に動いていて、その意味も多岐に亘っている。そろそろ入試でも”思いつく”以外で出題されてくるだろう。


lie, lay, ... えーと、過去形は・・・

2012-01-18 20:17:37 | 気になる英単語

lie 横たわる、 lay 横たえる、 lie 嘘をつく .....

受験生を永遠に混乱させる動詞変化の代表的なものがこれである。

出てきた問題のときに、答え合わせして確認したつもりでも、しばらくすると、またあいまいになってしまうのがこれである。

このページを見てくれた諸君のために、混乱なくスッキリ覚えられる方法を伝授したい。

まず、lie は自動詞で、意味は 「横になる、横たわる」 である。一方 lay は他動詞で、「横にする、横たえる」 である。

この自動詞、他動詞の違いは以下のパターンで記憶できるはずだ。

 

ステップ1  別の角度からのアプローチ 

SUNRISE :     サンライズ、 日の出   ( ライズ は 上がる、のぼる )

RAISE THE SALARY! :レイズ・ザ・サラリー! 給料を上げろ! ( レイズ は 上げる )

 

● ステップ2  ライ、レイ . . .  原型の確認   

   自動詞  "アイ" 型    自動詞なので、直後に名詞は来ない。  

rise ライズ (上がる: The sun rises in the east.  sunrise

lie  ライ   (横になる:  Please lie in bed.  Don't lie on the grass. )   

  

   他動詞  "エイ" 型   他動詞なので、直後に名詞が来る。

斜体部分 は他動詞の目的語である。

raise レイズ (上げる:  Raise  the Titanic.  He raisehis voice.)

lay  レイ   (横にする:  She tried to lay   her bay   on the sofa. )

 

ステップ3   他動詞 "lay" レイ の変化の確認

まず、他動詞の lay であるが、規則変化動詞(-d, ed,)ではないが、それでもマイナーな規則性がある。

同パターンの他のものには、pay,  say があり、これらはみな lay 同様、他動詞である。 斜体部分 は他動詞の目的語である。

lay  -   laid  -   laid    (He  laid  his surfboard  on the beach.)

pay -  paid  -  paid   (I  paid  the money.)

say -  said  -   said   (She  said  nothing  to me.)

 

ステップ4   自動詞 "lie" ライ の変化の確認

lie   -   lay   -   lain   (同パターンが他に見つからないユニークな例外)

※ 例外中の例外の、このパターンだけをきちんと覚えればよい。

 

ステップ5   自動詞 "lie" ライ の同音・同つづりの lie (嘘をつく) との対比

この動詞の変化がいかに不規則であるかは、同じスペルで同じ発音の、規則変化をする lie (嘘をつく)と対照させてみればよくわかる。lie (嘘をつく)と同様の変化パターンの動詞は die (死ぬ) である。ちなみに、以下3つの動詞はいずれも自動詞である(横たわる、嘘をつく、死ぬ)

lie   -   lay   -   lain   (横たわる、横になる)

下のパターンと比べると、いかに特異な変化をしているかがわかる。 lied は「横たわる」とも「横たえる」とも関係が無いことが分かる。この無関係のものを選択肢に混ぜて、混乱させようとする使い古された問題は繰り返し出題されている。

 lie   -   lied  -   lied    (嘘をつく)

die  -   died  -  died     (死ぬ)

 

入試問題の中には出題のネタが尽きてか、通常の学習用英語辞典にはまず出ていない、俗語の layed を選択肢に混ぜているものもある。ただし、これはただの俗語ではない。これはほとんど出題者のモラルが問われるような、きわめて非常識な出題である。この語の意味は、「麻薬に酔って、マリファナでいい気分の、ラリって」である。青少年が真剣に取り組む問題に、こんな語を出す気が知れない。出題大学は、"東北学院大学" だ。英語なら問題ないと思っているのだろうか。ふざけるなと言いたい。あえて大学名を挙げ、反省を促したい。


デリシャス、ゴージャス、デンジャラス

2011-07-18 09:55:37 | 気になる英単語

delicious,  gorgeous,  dangerous

これらは、いずれも英語の形容詞で、語尾が -ous で終わるものである。この -ous という形容詞の接尾辞で終わるものはけっこう多い。カタカナ英語(外来語)として日本語の中に入ってきているものは、意外にある。

 

dangerous   : デンジャラス (危険な)

delicious  : デリシャス (美味しい)

glamorous  : グラマラス (魅惑的な)

gorgeous  : ゴージャス (豪華な)

humorous   : ユーモラス (ユーモアのある)

marvelous  : マーベラス (素晴らしい)

mysterious  : ミステリアス (謎めいた)

nervous  : ナーバス (神経質な)

serious  : シリアス (真剣な)

 

カタカナ語としては使われることはないが、高校レベルの ”-ous型の形容詞” としては以下のものがある。

   

curious :好奇心旺盛な

conscious :意識的な

famous :有名な

harmonious :和声の

homogeneous :均一の

 

industrious :勤勉な

jealous :嫉妬深い

joyous :楽しい

ridiculous :おかしい

glorious :栄光ある


Should I text him? 携帯メールをするべきか。

2011-01-22 20:52:02 | 気になる英単語

以下は、つい先日アメリカの”Yahoo 質問箱”に出ていた、アメリカの若者の実際の質問である。


Shoul I text him? Will he text me?


Im supposed to go on a date tonight, so this guy is taking some summer classes and he told me he gets out at 9pm, but he was supposed to text me at 6 to confirm if he is actually getting out at 9 o maybe earlier and now its 7pm and no text from him....should i text him???  will he text me??


btw..im gay...AND DONT BE RUDE


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本文和訳:

今晩デートに行くことになっているんです。で、カレが夏の補習を受けているんで、終わって出てくるのが9時だって言ったんです。だけど、ほんとに9時に出てくるのか、それともたぶんそれより早くなるのか確認するのに6時にメールくれることになっているんです。でも、今もう7時なのにカレからメールがないんです。こちらからメールすべきでしょうか。それともカレのほうからメールしてくるでしょうか。


ちなみに (btw. = by the way)、私はゲイです。 邪けんにしないでネ。


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Should I text him?    "text" は、ここでは動詞で、"text message" を携帯電話などで送ることをいう。


● I texted him about that matter.  = その件で彼にメールした。


● Please text me later. =  あとでメールちょうだい。


● AVOID TEXTING WHILE DRIVING  =  「運転中携帯メール禁止」


● She was texting him when he phoned her.  =  彼にメールしているときに彼から電話が入った。


2011年のこんにち、自分宛てや自分発で、文字、文章に接するのは電子メールがほとんどを占めるという人はかなり多くなっている。これは日本に限らず、グローバルな現象で、IT化が進んでいる欧米諸国をはじめ、中国、インドなど開発途上国でも同様の傾向にあるようだ。"text" という語はもとは名詞で、テキスト、文書、元原稿の意味であった。しかし、携帯電話、そして電子メールの急速な普及にともなって、電子メールを打つこと、送信すること、やりとりすることを表す動詞として使われだした。それが10年ちょっと前である。動詞として使う場合だけでなく、名詞としても "text" は”電子メール”のことを指す場合が増えてきた。

 私が "text" の”電子メール”の意味での用例を初めて目にしたのは、英国のミステリー作家 Chris Ryan の2006年出版の "WILDFIRE"という作品中である。以下のような文で、名詞としての用法である。

● He had received a text with a picture attachment.  (ペーパーバック版31ページ)

   彼は画像添付のメールを受け取っていた。

或る語が小説で新しい意味で出てくるのは、一般人がある程度使っていることが前提である。"text"というこの語は、名詞としても、動詞としても、今この時点でまさにリアルタイムで爆発的に使用者を増やしているにちがいない。

次に目にしたのは、イギリス系のミステリーばかりで恐縮だが、Andy McNab の2007年出版の"CROSSFIRE"という作品である。こちらは動詞としての用法である。小説でも携帯電話は重要な小道具としてというよりは、むしろ環境の一部として自然な存在になってきているために、"text" する状況はごくふつうの場面になりつつある。

● "Great - can you text me the number?"  (ペーパーバック版268ページ)

   いいぞ、その電話番号をメールで送ってくれないか。

実際、“text”の用例が、イギリス英語の最高権威であるオックスフォード英語辞典には、2004年の6月にすでに採録されている。

いっぽうアメリカ英語の最高権威であるウェブスター英語辞典には、さらにさかのぼって、すでに以下のように出ている。

text :

Date: 1998 (初出 1998年)

transitive verb (他動詞)

: to send a text message from one cell phone to another

(:テキストメッセージを携帯電話間で送信すること)

intransitive verb: (自動詞)

: to communicate by text messaging

(:テキストメッセージで交信すること)

日本で出版されている英語辞典にはまだ載っていないようであるが、採録されるのは時間の問題であろう。おそらくいくつかの辞書では次の改訂版に登場すると思われるが、もし新しい英和辞書を手にすることがあったら、ぜひとも確かめてみたまえ。君は一つの英語の単語が世界的に普及して、市民権を得て、さらにおそらく日本の辞書(電子辞書)にも載るまでのプロセスを見届けることができるだろう。

(写真の警告板は、2009年1月から"TEXTING WHILE DRIVING"が罰金の対象となったアメリカ、カリフォルニア州のものである)