Snapeの英語指南

英語長文対策、英語速読法、英語学習法、高校生、中学生、社会人の英語学習に役立つヒントを紹介。

He was heard to sing.

2010-03-30 09:30:05 | なるほど英文法 

We       heard         him            sing        .

       知覚動詞 + 目的語 + to 無しの不定詞

「私たちは、彼が歌うのを聞いた。」

おなじみの構文である。
そして、この文を受動態にすると、以下のようになるのだが、この to  がくせものである。

He      was heard        to sing          by us.

「彼は、私たちによって、歌うのを聞かれた。」

なぜ、ここで、能動態のときになかった to  が出てくるのか。どうしてこれが必要なのか。


まず、英文法でのきまりにはすべて理由があるわけではない。英語という言語に限らない。日本語でもロシア語でも、ベトナム語でも、どんな言語にも規則と言うよりも、”規則性”があるが、それがどうしてなのかについてはうまく説明がつく場合もあれば、説明がつかない場合もあるのだ。

この、能動態のときは、 ”to 無しの不定詞” なのが、受動態になると、”to不定詞”になることについては、どうだろうか。おそらくその”理由”については何も教えられなかった中学生や、高校生がほとんどだろう。授業でも、「受動態のときは、to が付くから、気をつけること!」で終わっていないか。そして、”呑み込みのいい”生徒たちは、それをそのまま覚えて、テストで正解になり、点をもらって、先へ進むことになる。理由があってもなくても関係がない。そういう意味では、私が以下で説明する内容は、ムダなことかもしれないが、”飲みこみの悪い”生徒には少しは役に立つかもしれない。

まず、能動態の文から見よう。以下の例文はすべて  Harry Potter and the Sorcerer's Stone 「ハリーポッターと賢者の石」から採用した。

1) He saw Snape enter the forest.「彼(ハリー)はスネイプが森に入るのを見た」
2) "Broken wrist," Harry heard her mutter. 「「手首骨折」ハリーは彼女(フーチュ)がつぶやくのを聞いた。」

3) Harry felt the blood drain out of his face. 「ハリーは自分の顔から血の気がひくのを感じた。」

知覚動詞表現の文では、1つの文の中に動詞的部分が少なくとも2か所あることになる。

1) saw  /  enter

2) heard  / mutter

3) felt  /  drain

動詞というものは、文の中でも重要なもので、言うなれば、意味の電流が流れている部分である。それだけに扱いに注意しないと、文という回路の中で、ショートを起こしたり、過電流を起こしたりして意味が通じなくなってしまうことがある。

He saw enter Snape the forest.

Harry heard mutter her.

Harry felt drain the blood out of his face.

上記のようにいじくってみると、いずれも、別の動詞、それぞれ意味上の主語が異なるはずの動詞が接触してしまい、意味の回路がショートを起こして、正しい意味が伝わらなくなってしまう。

He saw  Snape  enter the forest.

Harry heard  her mutter.

Harry felt  the blood  drain the blood out of his face.

あらためて、元の文に直してみると、二つの動詞部分が、その間に”絶縁体”をはさむことによって接触が回避されていることがわかる。

これが、受動態になるとどうか。

Snape was seen to enter the forest by him.

She was heard to mutter by Harry.

The blood was felt to drain out of his face by Harry.

受動態部分は文の中の中心的な動詞部分であるが、そのあとに続く enter,  mutter,  drain   はそれぞれ動詞部分とは言っても、準動詞であって、文の中では従属的な地位にある。準動詞であるのに、to が付いていないと普通の動詞に見えてしまう。そこで、文の中心的な動詞と絶縁し、不定詞であることを明確にするために、 enter ではなく to enter にしているのである。ここでも to  が絶縁体として機能しているとみることができる。

 

 

 


主語1語主義

2010-03-05 23:45:20 | なるほど英文法 

以下の文の主語と目的語に下線をつけよ。

My brother has a white bike.

 

多くの英文法の参考書や問題集では以下のような解答を要求しているようだ。

1)  My brother has a white bike.  

       主語       目的語  

私の考えでは主語とは、文の中で主語の位置にある語(群)のことであり、目的語とは、目的語の位置にある語(群)のことなので、[   ]で表すと以下のようになる。

2)  [My brother] has [a white bike].

            S                       O

1)のような解答を求める教師や英語学者は、主語や目的語、さらには補語といったものはそれぞれ1語でなくてはならないと思っているようだ。「主語になれるのは名詞だけで、My は形容詞ではないか!brother だけが主語の位置にある唯一の名詞だから、この文の主語は brother 1語である。」というわけだ。このように、主語は1語だと考える輩(やから)を、”主語1語主義者”と呼ぶ。

目的語も同様の論理で、「目的語は名詞でなければならない。a  は冠詞だ!white は形容詞だ! bike は名詞だ!だから bike が目的語だろう!」

主語にしても、目的語にしても、日本における英文法は明治以来、subject を 主語、 object を 目的語 と訳して、何の疑問も抱かずにきた。主語、目的語にしても、 "~"というふうに、それがあたかも単語であるかのような訳語を使い、今度は逆にその訳語にしばられて subject が単語であると思い込んでしまうのだ。英文法においては、subject の訳語としては、「主体」「主部」のほうが弊害は少なかっただろう。

1)のような文構造分析は、単語レベルの、ほとんど品詞分類に毛が生えた程度のものでしかない。小学生、中学1年生程度の、文といえば、単語数が多くて7つか8つくらいの文のレベルにしか使えない代物である。

まず、subject, object, complement, といった文の要素は、1語であることもあるが、2語以上の語群であることもある。はっきりいって、語数は関係ないのである。現実には、代名詞と固有名詞を別にすれば、2語以上であることのほうが圧倒的に多い。以下の例を見ていただきたい。

a)   He loves Mary.

b)   Mrs. Green and my mother often go shopping together.

c)  The charming woman who asked me about your whereabout left this message.

 

上記 a) のようにいわゆる S、V、O  がそれぞれ1語であるケースはむしろまれである。こうした例外的なケースを理想的な例文として考えるような発想自体がちょっと現実の英語の世界を知らなさすぎて、滑稽である。

主語1語に絞り込まずにはいられない主語1語主義者は、上記 b) の文の主語はどうするのだ? Green だけを主語にするのか、mother のほうだけを主語にするのか、それとも主語はGreen と mother の2つだとするのか?ぜひとも1語を選び出していただきたいものだ。ちなみに、私は Mrs, Green and my mother   を、一かたまりの ”主部”と考える。

上記 c) の場合、主語1語主義者は woman が主語であると勝ち誇ったように指摘することだろう。私は、 The charming woman who asked me about your whereabout  の9語を、一かたまりの ”主部”と考える。この部分は以下のように、代名詞 she 1語で置き換えられるのだ。

[The charming woman who asked me about your whereabout]  left  this message.

[                                      She                                     ]  left  this message.    

ということは、この[   ]部分は、1つの名詞に相当することになり、subject である資格を十分そなえていることになる。9語では多すぎる、長すぎると感じるひとは、実際の英語を知らないひとである。このくらいの長さのフレーズはふつうである。この文全体の中で woman が主語だ!という指摘にどれだけの意味があるだろうか。それよりも、The から whereabout  までの9語が一かたまりで 主部 を作っているという認識のほうがはるかに実際の英文読解に役立つだろう。