カップ(cup)とコップ(glass)の違い
カップ cup: 例 tea cup, a cup of coffee
1. 形状: カップは取っ手がついている(熱いものを飲むため)
2. 用途: カップはふつう熱いものを飲むのに使う
3. 大きさ: カップはコップほど背が高くない
4. 素材: 陶器でできているのが一般的
コップ (グラスと言う場合もある) glass: 例 beer glass, a glass of milk
1. 形状: コップは取っ手がない
2. 用途: コップはふつう冷たいか室温のものを飲むのに使う
3. 大きさ: コップはカップより背が高い
4. 素材: 本来ガラスでできているのが一般的で、そこから glass と言えば、いわゆるコップとなった。
語源: ちなみに外来語として定着している “コップ” はオランダ語の "kop" からきていて、江戸時代に日本語に入ったが、語源的には英語の "cup" と同じである。面白いことに、元は同じラテン語の "cupa" なのに、まずはオランダ語として、次に英語として日本語に入ってきて、コップ と カップ というふうに似ていながらも別のものを指すようになった。
以上が、わたしが整理したカップ(cup) と コップ(glass)の違いである。
しかしである。
使い捨て(disposable)の “紙コップ” は英語でなんと言うのか。
実は paper cup である(コップではない)。これは紙製の取っ手があろうがなかろうが paper cup なのである。形状としてはどう見てもコップではあっても、paper cup であって、paper glass とは言わないのである。たしかに paper glass のpaper は「紙製の」という意味であって、glass はもともと「ガラス」であるから、“紙製のガラス” のような感じで違和感がある。
紙の場合はいいとしよう。やっかいなのはプラスチックである。使い捨てコップ、使い捨てカップとして最近は紙コップよりも普及していているかもしれない。ではこれは英語では何と呼ぶのか。
スタバや、立食パーティー会場で使用される使い捨て(disposable)のものは一般的には plastic cup でよい。いくらLサイズのずん胴のものでも英語では plastic cup で通してよい。 もちろん取っ手がついているものはなおさらである。
さて、問題はみなさんが朝、歯を磨くときに使うような “プラスチック製のコップ” である。この類いのものは、
1. 形状: プラスチック製のコップは取っ手がない
2. 用途: プラスチック製のコップはふつう冷たいか室温のものを飲むのに使う
3. 大きさ: プラスチック製のコップはカップより背が高い
4. 素材: 透明、不透明、半透明のプラスチックで、ふつう “使い捨て disposable” ではない。
素材の点を除けば、そのまま英語の glass (コップ) に相当する。 では、 プラスチック製のコップは、plasitc glass でいいのか?
調べる前は、「いくらなんでも、それはないだろう」とわたしは思っていた。“プラスチック製のガラス” になってしまうではないか!しかし、調べてみると、plasitc glass で正解なのである。
つまり、“使い捨て” なら、 plastic cup で、 “使い捨て” でなければ、plastic glass なのである。
実は、この plasitc glass はさすがに英国人、米国人にも違和感があるらしく(“プラスチック製のガラス”?)、他の表現はないかと悩んでいるひとも多いのであるが、もうすでに市民権を得た表現である。つまり、glass には2通りの意味があると割り切るべきなのだ。すなわち、 1) glass: ガラス、ガラス製の、 そして、2) glass: コップ の二つである。
新聞 the Manchester Evening News での用例:
"Police are advising pubs and clubs to use plastic glasses and employ extra door staff for Monday night’s crunch Manchester derby."
テレビ BBC NEWS での用例:
"A proposal to extend the use of plastic drinks glasses to all pubs in the Highlands has been dropped."
出典:ttp://english.stackexchange.com/questions/137254/is-plastic-glass-as-a-container-a-valid-expression
現にイギリスのパブで、プラスチック製のグラスを嫌がって、バーテンダーに "Give me a glass glass!" と客が言うと、ちゃんとガラス製のグラスでビールが出てくるのである。「ガラス製のグラスをよこせ!」である。
ここまできたのなら、読者の皆さんにはぜひこう訊いて、突っ込みを入れてほしいものだ。
“使い捨て” でないプラスチック製の コップ が plastic glass なら、
“使い捨て” でないプラスチック製の カップ は 英語では何と言うのか、と。
もちろん、すでに見てきたように、plastic cup は「使い捨てのカップ」という意味ですでに使われてしまっているので、使いにくい。使えば、多少の混乱が常につきまとうだろう。
そこで、「“使い捨てではない”プラスチック製のカップ」を指すために使われだしたのが、 plastic mug である。 mug はもともと厚手の陶磁器である。使い捨て(disposable)のプラスチック製カップはたしかにペラペラで薄手である。これと区別して、使い捨てでない、そして比較的 “厚手” のプラスチック製のカップを plastic mug と呼びだしたのである。
日常的な、あまりにもありふれた食器類であるが、それを実際に英語で何と呼んだらいいのか、はっきりさせておくことも必要であろう。