Snapeの英語指南

英語長文対策、英語速読法、英語学習法、高校生、中学生、社会人の英語学習に役立つヒントを紹介。

なぜ英語ができないのか ― 英語以前の問題

2013-11-10 12:17:29 | 英語の読み方

同僚の先生たちに訊かれた。

「先生、どうしてうちの生徒は英語ができないんでしょうかね」

以下はわたしの答えである。

「たしかに英語ができない生徒が多いですが、英語以前にそもそも日本語がダメですよね。まともな日本語を組み立てることができない生徒が多いんじゃないでしょうか。

普通の会話でもメールでも、短い文で互いにわかりあってしまう。ちょっと複雑なことを言葉できちんと言い表すということができないですね。日本語でできないことが英語でできるわけがないです。」

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高校生に和訳を言わせると、「・・・みたいな感じじゃないっすか。」とか「・・・というか、その、あれですよ、ほら。」といった調子で、言いたいことが相手に伝わらないことに苛立ちを覚えていることがよくある。そこで、「その、アレですよ、ほら。」というふうに認知症の老人のような話しぶりになってくる。17歳、18歳の高校生が、70歳、80歳の老人と同じような認知症的症状を呈してくるのである。

英文和訳をさせると、日本語の実力が本当によくわかる。漢検などよりもずっとよくわかる。漢検はしょせん漢字の知識だけであって、ほとんど暗記でクリアできるものであるが、英文和訳は日本語の運用能力、論理的思考、一般常識が要求される。国語の先生には申し訳ないが、現代国語のテストよりも英文和訳のテストのほうがその生徒の日本語の実力、いや、一般的な言語運用能力がわかるのだ。一部の国語の先生は、このことが分かっている。そういう国語の先生は例外なくある程度英語ができる先生である。英語が苦手で国語の教師になったようなタイプの先生は、はっきり言ってそもそも言葉のセンスがない。考えても見たまえ。外国語に興味を持たない人間に言葉のセンスを期待するほうが間違っている。

さて、以下の文を中学生、高校生、いや普通の日本人に訳させるとどうなるか。

She is studying in her room now.

「彼女は彼女の部屋で今勉強しています」   10人中9人以上がこう訳す。

「彼女は今自分の部屋で勉強しています」 と訳す生徒が1クラスに1人いれば上等である。

 

My father is a teacher. How about yours?

「わたしの父は教師です。あなたの父はどうですか?」 

こう訳して平然としている生徒がほとんどである。たいていの教師もそれを直さないどころか、当人もそう訳して授業している。

「わたしの父は教師です。あなたのお父様何をなさっていますか?」 と訳せるのは大学生にも少ない。日本語の常識では、ひとの親を指して「あなたの父」、「あなたの父親」と言うのはとんでもない失礼なことである。残念ながら、こういうことは学校の国語の授業でも決して教えない。あなたは教わったことがあるか?

 

This library is 28 years old but our shcool is 60 years old.

「この図書館は28歳ですが、わたしたちの学校は60歳です」 と訳して事足れりとしている人間の言葉のセンス。「言いたいことが伝わればいいではないか」という居直りこそが言葉の貧困を招いている。

「この図書館は築28年ですが、うちの学校は創立60年です」

 

Ninety-nine out of a hundred women may have given up, but Marie Curie was that hundredth woman.

「100人の女性のうち99人は諦めたかもしれないが、マリー・キュリーはあの100番目の女性であった」 

この訳はかなりいいところまでいっている。しかし、that  でつまづいている。

「100人の女性のうち99人は諦めたかもしれないが、マリー・キュリーはその100番目の女性であった」  ちなみに、キュリーという名前を知らない高校生は意外に多い。

 

To Benjamin Franklin social responsibility was as much his busisness as trying to discover whether the ant possessed some system of thought communication or to understand how sea shells could be found in the rocks of mountains a mile above the surface of the sea.

この英文和訳問題は大学入試レベルであるが、きちんと訳せる受験生はまれである。たしかに構文は複雑であり、高度ではある。しかし、非常に具体的な事柄を挙げてはいないだろうか。 ant,   sea shells,   rocks of mountains,    the surface of the sea ...  これほど具体物をたくさん挙げている文は珍しいくらいである (蟻、 貝殻、山々の岩、海の表面 ・・・)  この文が何のことを言っているのかの手掛かりは山ほどあるのだ。にもかかわらず、この文の言っていることがつかみきれないのは、一重(ひとえ)に科学的常識、論理的思考が不足しているためである。つまり、そうしたものが欠如している人間にはこれが日本語で書かれていても即座に理解できない内容なのである。そういう頭の人間にどれだけこの英文が和訳できるか。

「ベンジャミン・フランクリンにとって、社会に対する責任は非常に大事なことであった。それは蟻には情報伝達の何らかのシステムがあるのかどうか突きとめようとしたり、海抜1マイル以上の山々の岩の中にどうして貝殻が見つかるのか理解しようとするのと同程度に大事なことなのであった。」

英語以前の問題は多く、それぞれ重大である。英単語をたくさん覚えれば解決するようなことではないのだが、英語教師の側でもそれがわかっている人間は少ない。


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
心のモヤモヤがスッキリしました。 (ゆりこ)
2014-09-13 13:24:13
通りすがりの社会人6年生です。

小中高大学生と、和訳試験は数あまた受けてきて死ぬほど対策しましたが、あの時の和訳は、伝えるための日本語ではなく、辛うじて意味が通じるレベルでした。
単語帳にのる直訳を並び替え、関係代名詞の先行詞を探しあて、適当に句読点で繋げただけのわかりにくい日本語。
それでも採点はマル。言葉のセンスが無いことを自覚出来ず、英語力向上の影でダメな会話の思考回路が定着していたことに気づけなかったのだと思います。
おっしゃる通り、いくら英語教育早期化しても、的確な説明力は損なわれる一方の気がします。
和訳で、時間内に簡潔で、てにをはも正確な日本語でなければ意味が通じてもバツ、なんて試験があれば、国語の授業以上に、国語力、説明力が育つのでしょうけど、先生のスキルが求められますね。

私は小学校高学年から英語塾に通い始め、高校の英語偏差値73、留学を経てTOEIC950点をとり、大学ではスペイン語専攻で、ありがたいことに英語スペイン語では職場でも頼られていますが、仕事の大半は日本語。改めて国語力不足、簡潔な説明力不足を認識している所です。
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