背もたれを倒せば広き車なり娘の荷物と娘をはこぶ
助手席の足元にある空間にあらんかぎりの靴を詰め込む
ブタさんの大きなぬいぐるみも乗せる 二十年来の娘の相棒
本棚の長きを積んでひだりがわ見難きままにゆく東北道
初めてのひとりぐらしはうれしいかさみしいか なんて問うこともなく
武蔵野の道ややこしやややこしやカーナビさんの言うことをきく
十年の昔に買ったカーナビがやさしい声でがんばっている
自家用車にいっぱいの荷物二往復 娘ひとりのくらしのために
今生の別れとまでは言わねども手を振る娘に手を振りかえす
月の夜はあるいは月のなき夜はひとりぐらしの娘を思う
_/_/_/ 未来12月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/