昨年参加させていた同人誌『タンカドウラク2』に載せた連作を
こちらにも載せておきます。
既発表歌を編集したものなので、このブログのどこかにある歌たち
なのですが、仮名漢字を調節してすべて26文字にしてあります。
それから、ほんのりとアクロスティックにしてあります。
呪禁博士
陽が昇るころにしおれる花たちに呪禁博士は粉ふりかける
とある朝フルーツ牛乳配られて家という家とろけるようだ
なっとくのいくやりかたでわたあめをわけあう姉と妹と空
潰されて景色の中に馴染んでる午後の紅茶とのどごし生は
この世界に転がり落ちたばっかりに三本ずつに裂く刺繍糸
特大の洗濯ばさみに挟まれてふとんは昼に寝ているんだな
ハイウェイスターを口ずさみながら歩く速さで鬱期に入る
台風が残していった言葉たち違うちがうよただの落ち葉だ
地下街はどろどろの血だすれ違うまたは追い抜く人人人を
もし爪に神経細胞あったなら爪切るたびにぎゃあと叫ぶよ
どちらかの川の名前は消えてゆく川と川とが交わるところ
メガシャキと眠眠打破を見比べて暫し迷えるひと時がある
手掴みで食べるポテトの塩味よ野性を思い起こすことなく
東京のすべての家のエアコンをたたき壊せば昭和がきざす
必要にせまられて飲む正露丸念のため飲むマルチビタミン
タクラマカン沙漠今日とて晴れわたり近畿地方に降る俄雨
爪の先をやすりで削ると粉が出るまがうことなく人間の粉
穴掘ればときどき釘が現れるステンレス製の釘にさびなし
咲いてても咲き終わっても嫌われる夾竹桃の花弁ねじれて
橋桁の際の流れのとどこおり背中の乾いたあめんぼすべる
逃げだしたトラけつまずく街角の歩道と車道の段差を思う
ココナツの香りなのかな黒髪の熱帯雨林にうずもれながら
庭土のどこにあるんだ草のたね勝手に生えてくるなつ休み
効率のよい栄養のとりかたのひとつと思うひとの血吸うは
仄々と熱をまとっている肌の柔らかければ蚊はふかくさす
夜明けまで実験室にこもりおり方向音痴のアリをみつめて
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