水中花かざる窓辺のあかるさよ春に逝きたるひとと向き合う
ようかんのきめ細やかな舌触りこういう時しか食べないけれど
白隠禅師座禅和讃は面白しこういう時しか読まないけれど
手のひらのくぼみのように静かなり曇り日なればひかりは射さず
新しい卒塔婆を墓の脇に置くあたらしきものは気持ちよきかな
はなびらをたっぷりつけて立っている墓地南庭の河津桜は
死んでから丸七年と言う父を丸六年よと母はとがめる
キャラメルの黄の空箱を投げつけて祖母を泣かせたむかしもありき
ラジカセをぶっ壊されて何てことするんだと怒鳴ったこともありしよ
午後九時の大和トンネルくぐるとき祖母のくしゃみを聞いた気がした
_/_/_/ 未来6月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/