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ミュンヘンなんて、どこ吹く風

ミュンヘン工科大留学、ロンドンの設計事務所HCLA勤務を経て
群馬で建築設計に携わりつつ、京都で研究に励む日々の記録

春は鉄の匂い

2007-01-07 18:21:37 | 帰国・修論+αな日々
「春は鉄までが匂った。」

英文を読むのに疲れると、近所の図書館で借りた松尾宗次さんの『いろいろな鉄』というエッセイ集を読んでいます。文系理系をまたがって、鉄にまつわる古今東西の話がつづられています。そのなかに「香りと鉄」という章があって、そこに冒頭の言葉が載せられていました。町工場で旋盤工をしながら小説を書き、芥川賞と直木賞に複数回ノミネートされた作家小関智弘さんの小説『錆色の町』の結びの言葉だといいます。「かなけ(金気・鉄気)くさい」と広辞苑にも載っているくらい鉄にも匂いはあるそうですが、当時の文芸評論家は「鉄が匂うはずはない、思い込みの過ぎた表現である」と批評したんだそうです。ここまで読んで、僕はふと、自分が生まれた新潟県与板町のことを思い出しました。戦国時代は上杉家の知将直江兼継の城下町として、江戸時代には鍛治町として栄えたこの町は、僕が小さい頃はまだ、金物屋の作業場から火花が散るのを眺めることができるような町でした。豪雪地帯でもあるため、道路にはくまなく消雪パイプが埋め込まれていて、冬の降雪時にはそこからチロチロと地下水が噴き出します。夜遅くに新幹線で長岡駅に着いて、迎えに来てくれた祖父と一緒にタクシーに乗り、運転手と祖父の会話を聞きながら走るときに、前方の道路に降る雪の向こうにひざ下くらいまで吹き上がる水柱をじっと眺めていたことを思い出したのでした。「こんげな日は道路の上の水も凍るすけ、かえって危ねがて…」(新潟弁、間違ってるかも)


消雪パイプ: photo from wikipedia

与板の道は、そんな消雪パイプから出てきた錆の色でオレンジ色をしています。道路に引かれた白線が追い越し禁止の黄色線に見えてしまうくらいに。だから鉄の匂いではないけれど、錆の匂いは僕の鼻に鮮明に残っている。降り積もった雪が解ける頃、春先の朝早く、空気が湿っているときは特にそんな匂いがしました。

というのは僕の思い込みでしょうか。
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5 Comments

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Unknown (難波)
2007-01-08 09:14:37
鉄には間違いなく匂いがあると思う。鉄工所に行くと分かります。もちろん錆、溶接、油といったものが混じった匂いだけど、鉄の切り口に近づくと、醒めたような冷たい匂いがします。
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なるほど (こみ)
2007-01-09 01:53:43
先生の表現を聞いて、匂いは鼻だけで感じるものではないんだろうな、ということがわかったような気がしました。
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うちは川鉄のせいで排煙?くさい (1103)
2007-01-10 03:17:57
ただ鉄磨いてるだけで匂いするよね。


デザイナーズウィークのとき数日間ただひたすら
鉄のフレームを磨きながらの経験上。

でも同じ金属でもアルミって匂わないような気もしないでもない。
酸化鉄が匂うのかなぁ?
人体の感覚器に詳しくないのでなんとも言えないけども。
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金属の匂い (こみ)
2007-01-10 18:21:29
鉄の匂いについてはまだ解明されていない部分が多いようですが、鉄そのものっていうより鉄が何かと反応して匂うという説があるようです。鉄の中に含まれる不純物が触れた手とかと少しずつ反応していくらしい。かと思えば鉄自体には脱臭効果もあるらしくて、かつては列車から垂れ流されていた汚物が、レールの脱臭効果であまり匂わなかったなんて話もあるそうです(ホントかなあ)。

鉄は他の元素との親和性がとても高いので、金属の中でも比較的匂いやすいのかもしれませんね。
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Unknown (自動車部品関係)
2022-02-15 12:27:06
某社のSLD-MAGICなんかもそうですね。だけどこれがサステナブル性能を向上させるんだ。
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