顎鬚仙人残日録

日残りて昏るるに未だ遠し…

特別展「志士のかたち」  (茨城県歴史館)

2017年11月19日 | 歴史散歩
今年は、水戸徳川家に生まれ15代将軍になった徳川慶喜が大政奉還をおこなってから150年、近世武家社会から近代社会へと向かう大きな転換点から節目の年にあたります。この大変革の原動力となった水戸藩を中心に,茨城ゆかりの志士の果たした歴史的役割や生涯を彩る名品の数々が茨城県歴史館で11月23日まで展示されています。

テーマごとに各章に分かれた展示構成が時代の流れに沿ってわかりやすく、また他の博物館蔵や個人蔵の貴重な品が水戸で見られ、中味の濃い企画でした。資料、写真は歴史館のホームページより借用させていただきました。

第1章「文と武の系譜」では、好学の気風を伝える水戸藩の藩校弘道館や私塾で形づくられた志士の資質について,文武両面から紹介しています。
写真は、刀 無銘(葵崩し紋)徳川斉昭作 弘道館鹿島神社所有(歴史館寄託)です。
弘道館の開設に伴い鹿島神社を分祀し、斉昭自ら鍛えた刀を奉納しました。

第2章「境界をこえて」では、藩や身分・格式といった近世社会における秩序や制約をこえて,吉田松陰や西郷隆盛ら各藩の志士と積極的に交流しながら,全国におよぶ交流網を築いてゆく水戸藩士を紹介しています。
写真は藤田東湖と橋本左内 島田墨仙筆(東京国立近代美術館所蔵)です。
福井藩士の橋本左内は安政の大獄で斬首されましたが、藤田東湖との厚い交流で知られています。

第3章「尊王と攘夷の空間」では、文久年間(1861~63)の尊王攘夷運動の各地の志士の思想と行動、水戸藩と関わりの深い東禅寺事件や坂下門外の変などの諸事件から新選組の誕生にいたる時代的背景を紹介しています。
写真は、加茂行幸図屏風(右隻,霊山歴史館所蔵)です。
孝明天皇が文久3年(1863)に攘夷祈願のため両加茂社に行幸された図で、お供の中に徳川慶喜と水戸藩主慶篤も描かれています。

第4章「決壊の元治元年」では、水戸・長州の両藩を中心に,激動の元治元年(1864)の禁門の変、天狗党の乱における水戸・長州の両藩を中心にした志士の動向を紹介しています。
写真は、水戸天狗党絵巻(部分,国立歴史民俗博物館所蔵)です。

そして第5章「大政奉還、残照の近代」では、徳川慶喜が行った大政奉還という歴史的決断から近代国家の確立に向かう歴史の奔流のなかで,いわゆる草莽の志士がどのようにして歴史的役割を終え,その後,今日にいたる「志士」像が確立していったのか,その過程の一端を明らかにします。
写真は、大政奉還 下図 邨田丹陵筆(明治神宮所蔵)です。
徳川慶喜が10万石以上の40諸藩重臣を二条城二の丸大広間に集め大政奉還の決意表明をした有名な絵です

幕末の志士たちの息遣いが聞こえる空間から外に出ると、まぶしい秋の日が旧水海道小学校本館(明治14年建築・県指定文化財)を浮かび上がらせていました。

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