顎鬚仙人残日録

日残りて昏るるに未だ遠し…

秋の気配が…

2020年08月25日 | 散歩
まだまだ残暑が厳しい日が続きますが、朝晩の涼しさとこの花が咲き始めるとなぜか秋を感じます。

シュウカイドウ(秋海棠)はベゴニアの仲間でシュウカイドウ科の多年草球根植物、春に咲くバラ科の落葉庭木カイドウ(海棠)に花の色と垂れる咲き方が似ているので名が付きましたが…?。

ところで、シュウカイドウは雌雄同株異花です。雄花の花弁状のものの小さい2枚が花弁で外側の大きい2枚は咢です。雌花は基部(子房下位)に3個の翼状の突起が付いていて、2枚の咢の中に雌蕊があります。
秋海棠西瓜の色に咲きにけり  松尾芭蕉
秋海棠ほろほろ言葉染まるなり   河野多希女 
早朝の散歩道では、ツユクサ(露草)がびっしょり朝露を浴びています。太陽が上がる前、日中の暑さが嘘のような涼しさです。

ヒルガオ(昼顔)も一日花を咲かせました。

コガネムシ(黄金虫)も夏の一生を終わりました。夏の終わりに孵化し幼虫で越冬、翌夏に蛹になり羽化する1年の命です。

昆虫の寿命は約1年が多いのですが、セミ(蝉)は幼虫時代に地中で約3~5年(このアブラゼミの場合)過ごし、夏に羽化して約1週間といわれていましたが、最近の研究では1か月近く夏を謳歌するそうです。

稲の穂が垂れてきました。梅雨の長雨の影響が心配されましたが、昨年並みの収穫という予想も…、ただコロナ禍などによる景気低迷で需要が落ち込み価格が下がるのが生産者には心配の種です。
稲の波かぶりて遊ぶ雀かな  正岡子規
奥津城も稲の香ぞするふるさとは  石塚友二

最後に…今年は短かった夏休みの終わり、小学生の孫がやっとザリガニを掴むことができました。得意げな顔が浮かぶ手の表情です。普段とは違うこの夏の、大きな快挙でした!

朝露の散歩道で…

2018年07月15日 | 散歩
この時期は明るくなるのが早いので時々眼が覚めてしまい、つい散歩に出ることがありますが、朝の冷気は日中の酷暑が嘘のような爽やかさを与えてくれます。

ハマヒルガオ(浜昼顔)は、日本全国、海外にも広く分布し海岸の砂浜に群生すると図鑑に出ていますが、ここは海から直線で5キロの田んぼのあぜ道です。みずみずしさが炎天で咲いているいつものイメージとはずいぶん違います。

ツユクサ(露草)はツユクサ科ツユクサ属の一年生植物でどこでも見かけますが、朝咲いた花が昼しぼむことが朝露を連想させることから、名前がついたという説もあります。
朝露のいちばん似合う花かもしれません。

草刈り後に花茎が伸びたので命拾いしたノカンゾウ(野萱草)が開き始めています。ニッコウキスゲなどの仲間で、夕方には萎んでしまう一日花です。似ているヤブカンゾウ(藪萱草)は花が八重で上向きに咲きます。

イヌゴマ(犬胡麻)は、胡麻に似ているが食用にならぬ役立たずという命名、湿性の環境を好むシソ科の多年草ですが、まさにピッタリの環境で大きく育っています。

ユウゲショウ(夕化粧)は、夕方に花を開かせるので付いた名前ですが、いまは一日中化粧を落とさず開いています。南アメリカ原産の帰化植物で、明治時代に観賞用として移入されたものが日本全国に野生化しています。

坂の途中の山百合は、草刈りをする人に残してもらえるように、仙人が事前に棒を立ててヒモで縛っておいたものです。無事に7,8本の山百合が花をつけ、甘すぎる匂いを振りまいています。

この山百合を見た近くの人から、うちでも見事に咲いたからぜひ見に来てといわれ撮って来ました。午前9時、朝露はすでに消え、今日の猛暑が始まっていました。

山百合が目覚めといふをくれにけり  細見綾子
山百合のうつむきがちに霧流れ  伊東宏晃

散歩道でスウィーツ

2018年05月20日 | 散歩

久しぶりに道端の蕗を採りながらの散歩に出かけたら、ちょうどキイチゴの鈴なりの時期で、ジューシーでうす甘い、懐かしい味を摘まむことができました。
このキイチゴ(木苺)は正確にはモミジイチゴ(紅葉苺)、葉の形がモミジの形で、白い花も黄色い実も下向きに付くのが特徴です。
少年時代の山歩きで、空いた弁当箱に入れて母にお土産と持ち帰ってみましたが、山で食べた美味しさを家では感じられなかった記憶があります。

スイカズラ(吸葛)は、名前の通り花のつけ根の部分の蜜を吸うことからの命名、今でもつまんで啜ると、舌に甘い味覚が残ります。冬でも葉が生い茂り寒さに耐えているように見えるところから忍冬(ニンドウ、スイカズラ)ともいい夏の季語です。

すひかづら髪に一輪戻り海女  八木林之助
忍冬のこの色欲しや唇に  三橋鷹女



番外編、道端のオオキンケイギク(大金鶏菊)は北アメリカ原産の宿根草で、日本では工事の際の法面緑化に利用されていましたが、強い繁殖力が問題となり、「特定外来生物」に指定されています。栽培禁止ですので、まもなく刈り取られるまでのつかの間の饗宴です。
白いフランスギクも混じっています。これも外来種で、冬を越せない同種のマーガレットを尻目に日本中に蔓延っています。右の青いネットで囲われた一画は、いま水戸市で推奨しているジョイント支柱栽培を実践している梅林です。

ニュータウンの公園の秋    (水戸市)

2017年11月23日 | 散歩

平成4年に茨城県住宅供給公社(その後経営破綻)が高級住宅地として分譲を開始した百合ケ丘ニュータウンは、53.2ha、912戸の大規模団地で、ブロックなどの塀を廃して生け垣などを推奨した画期的な街づくりが当時話題になりました。

その北西にある六反田池を含む北街区公園一帯は、豊かな自然を残した緑地帯です。いま訪れる人もまばらな中で、街中とは思えないほどの見事な紅葉を惜しげもなく見せています。

いたるところに驚くほどしっかりした敷石や石の階段、木製のデッキが贅沢に設置されており、確かに高級住宅地のコンセプトにはしっかと合ってはいます。

この巨大な橋の片側は行き止まりで道路がありません。現代建築の粋を集めたような立派な構造物が、どのような経緯で出来上がりしかも何年もの間不思議がられずに存在していることに驚いてしまいます。

しかし自然はそんなことお構いなしに、公園の中で秋の顔を見せてくれます。
アキグミ(秋茱萸)は少年時代のおやつ、今摘むとその酸っぱさに顔をしかめますが。

ガマズミ(莢蒾)も同じく少年時代のおやつ、ヨツズミと呼んで霜が降ると甘くなると言われていましたが、酸っぱさだけの記憶しかありません。

スズメウリ(雀瓜)、灰白色の実は雀の卵に似ているからの命名との説もあります。

ゴンズイは、ヒレに毒を持つ小魚のゴンズイから、何の役にも立たないという意味で名がついたそうですが、とんでもない!秋の山をしっかり彩っています。

ヘクソカズラ(屁糞葛)の実、なんとも哀れな名は葉や茎に異臭があるからで、黄熟した実は昔からしもやけ、あかぎれなどの外用薬として知られています・。

ウメモドキ(梅擬)は葉の形や枝の出方が梅に似ているから名が付きましたが、雌雄異株のモチノキの仲間です。晩秋いつまでも赤い実が残って小鳥の餌になり、排泄された種子からが発芽条件という自然の仕組みになっているそうです。

日が当り囀りさうな梅擬  高澤良一
梅もどき鳥ゐさせじとはし居かな  蕪村

柴栗の一生

2017年09月23日 | 散歩
散歩コースに柴栗(山栗)がたまたま目の高さにあったので、その成長ぶりを撮ってみました。

5月27日、まだ蕾の段階では、あの独特の匂いはなく、可愛いらしいものです。雌、雄同株で長い花穂はほとんど雄花、下の方に短い雌花がつきますが、まだこの段階では区別が分かりません。

6月11日、花は黄色くなってきました。間もなく雄花だけの花穂は根元からとれて落花しますが、根元に出ている雌花の確認はまだできません。

6月23日、雌花の根元に小さな栗の実が顔を出しました。

6月25日、栗の実が着果した花穂は、着果部分から先の花穂は茶色になって離れ落ちます。

7月7日、だんだん成長する栗の実、もうすでに一人前の顔をしています。

8月11日、野生のものはこの時期になると、病気や害虫で落果するのが多くなります。

9月22日、イガの口が開いて栗の実が顔を出しました。イガはさらに開いて、栗の実も自らも地面に散らばせます。

落ちたところはアスファルト、これでは子孫を残すことはできません。拾ったら27個ありましたので、茹でてカチグリに挑戦してみます。約4ヶ月の柴栗の記録でした。

季語では、栗の花が夏、実は秋、緑のイガは夏に入れてもいいのでしょうか。

中年に中年の修羅栗の花  伊丹三樹彦
木曾仔馬青栗のいが道にでて  森澄雄
柴栗の破顔一笑野良着干す  今井茅草

【カチグリの報告10月5日】

約15分茹でてからザルに上げて、約2週間秋の太陽に干しました。確かにカチンカチンのカチグリです。渋皮をむくと細かい破片になり口に入れると歯が欠けそうな硬さです。かすかな甘味は残りますが、小さい頃糸で通して干したのとはまるで違う味です。保存食とはいえ、水で戻さないと使えないような失敗作でした。