◆ふえ・のおと◆フルーティストYoriko KASAI 葛西賀子 officialblog

~ヨーロッパ仕込みの音楽作り、研究を重ねたフルート基礎奏法・・最近は太極拳を通して体幹づくり研究も進んでいます!!

◆本番で恐怖と向き合うには ~マリア・ジョアン・ピレシュさんの言葉~

2008-09-21 00:16:18 | 大切なこと
フルート以外の音楽家に何人か尊敬している巨匠がいます。

その中でも今もっとも私が尊敬しているのが、
ピアニストのマリア・ジョアン・ピレシュさんです。

彼女の音楽ほど、自然に、人の心に染み入るように、

そして、

音楽には普遍的に人の心をとらえる和声の流れというのがある
のですが、それを演奏に、しかもここまで”自然”に醸している
演奏家は他にあまり見たことがありません。


以前、実は彼女の生の「言葉」を聞く幸運があったのですが、

そこで、彼女のあの音楽のルーツを、すぐ納得できました。

それは、彼女が音楽の勉強で手にしたもの、だけでなく、、、

それまでの彼女の人生、そしてその、想像を絶する様々な重圧、
苦悩、喜び、などから得た彼女の哲学が音楽に姿を変えている。

その根底が、あの彼女の至芸につながっているのだと思います。


◆◇◆◇

で今、嬉しいことに、毎週土曜日の12:30からNHKで、
彼女のピアノ・レッスンが放送されていて、
彼女の言葉と音楽を聞くことができます。


そんな今日のレッスンのテーマは、


「本番の恐怖をどう乗り越えるか」




彼女の言葉を聞いて、自分なりにまとめてみました。


まず”本番の恐怖”というものは、(大・小あるにせよ)
誰もが経験すること。

なぜ恐怖に陥るか・・その存在というのを私たちは具体的には
つかむことができない、恐怖は、目に見えない「敵」である。


無理やり恐怖の理由を考えるならばそれはやはり、

<人(聴いている)にどう思われるか、
間違えたらどう思われるか、
どう比較され、どうクリティーク(批評)されるか、・・>

などなど、対人的なことが挙げられる。

しかし私たち人間は、形はそれぞれであれど、必ず、
「内側に、その人そのものの本質的な良さ」を持っている。

にもかかわらず、

人間は弱いもので、とかく外見にとらわれがちで、
そういうときは本質を見失いがちになる。

さてそこで、

「恐怖という、自分の恐れるものに対しては、
敵が襲ってきてからあたふたする前に、
自分から先に『受け入れる』または『迎え入れる』準備が必要だ」

「恐怖よ、いつでもこい!おいで、私の中に受け入れるから」

と・・・自分の中で起こっている恐怖を、消えるように否定
するのでなく、心臓のバクバク音も、震えも、自分で認め、
「受け入れる」のです。それとともに舞台に立とう、と。



ここで、少し私の体験談に飛びますが、

以前、フルーティストのヤーノシュ・バーリントさんに
教えていただきました。


「まず私たちは舞台という重圧を乗り越えなければならない、

私達管楽器奏者は特に”アガリ”は呼吸に大きな影響を及ぼす。

だからこそ、呼吸を整えなければならない。


本番前に舞台袖で、2分でも3分でも出来ることだから、

目を瞑って『深呼吸』をしてごらん。

最初は5秒で深く吸い、5秒で深く吐く、

次は6秒で、そして次は7秒で・・・

と、息が整って落ち着くまでやるんだ。」


実は私は以前、日本の自分の師匠に、
「お前は心臓に毛を生やそうナ」と言われていました(苦笑)

そして私もいつしか、ドイツでリサイタルなどの大舞台を
経験するようになり、その舞台経験の「慣れ」もある程度
緊張緩和の助けにはなりましたが、


私は今でも必ず、コンサートの前の舞台袖で、目を瞑り、

緊張で固まりがちな「胸郭」を柔軟に開く準備運動のためも
かねて、「深呼吸」と「瞑想」時間を1分とります。

そして、「よしっ!」と一言自分にゲキを飛ばし!?
あとはにっこり笑って舞台に向かうことを儀式としています。

その瞑想中、心臓はもちろんバッコバッコ言っています。

でも、そのバクバクを、

「おぉ~~~バクバクいってるいってる!緊張してるぞ~~~」

みたいな風に、その鼓動・緊張状態を認めるようになってから、
舞台のライトの下にたっても、
いつしか集中できるようになったのです。



そして、ピレスさんは今日言いました。


「緊張のときには、『呼吸』をすることです。」


まさに、今私が上記に書いたこと、
彼女も今日、しっかりと言いました。

◆◇◆◇

そして追記するならば、前回書いた「呼吸」のことにも、
この今日の話はすごくつながるのです。


体や肩を緊張させることなく、「無理やりじゃなく」息を深く吸う、

そして深く吐く、これこそが、フルート演奏自体にも、自然で

緊張のない豊かな音にとつながる、とても大切なことのです。



呼吸というのは、

実は私は坐禅を組んでいた時期があるのですが、

目を瞑り深く呼吸をし、体と心が整うまでを実感するのは・・
少し毎日の積み重ねが必要かもしれません。

でも音楽や演奏、それから音楽に限らず日常生活においても、

心を静かに過ごすには、

そして、物事の外見にとらわれず、自分勝手にとらわれず、

本質の良さ、人の良さを見極めるためにも、


この、どんどん情報がはいってくる忙しい世の中、

目を瞑り深く呼吸をし平穏な時間を、自分のために、
できれば毎日 ―2,3分ですむのです― 取り入れたいですね。


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◆「管楽器は息で音楽をつくるのだ。」

2008-09-17 11:53:10 | 呼吸
・・これは、ドイツ留学時代に、室内楽のレッスンを、
その市のオーケストラ首席ファゴット奏者に木管重奏を通して
習っていたときの、その先生の言葉です。


この言葉は当たり前でありながら、実際そこにこめられている
本来の意味をまじめに考えてみると、意外と果たして、
自分は本当にできているのかと自問してしまいます。

◆◇◆◇

その先生の室内楽レッスンは、先生自身も一緒に
ファゴットとして演奏に加わる非常に貴重なものでした。

しかし、レッスン始めたての半年は、
うまい先生を前に緊張して、悲惨たるもの・・。

木管アンサンブルの場合、かなりの確率でフルートが
曲の出だしを与えなければいけません。

楽器を構えて、息を吸おうとした途端に入るストップコール。

「それじゃぁ、わからん。」

・・まだ音も出してないのに、ナゼッ!?


もう一回トライ。またストップコール。

「わからないよ。僕たち 他の奏者は、Yoriのその吸う息の長さや
速さで、曲のテンポや、その曲がどういう雰囲気なのかを
一瞬で把握しなきゃいけないんだよ。

第一、他の奏者に”いくよ!”っていうアイコンタクトすらせず、
一人で曲を吹くのかい?
この曲は何人いて初めて一つの曲になるんだい?」

吸う息から、次にどんな雰囲気の曲が流れ出るのか
読み取れない、と先生は言う。

(私はこれをきっかけに、それまで意識が甘かった呼吸法に、
本格的に疑問を抱きはじめ、メスをいれなおしていくのですが・・)


そうなると、指揮者の振りや弦楽器の弓を思い浮かべると、
わかりやすいかもしれませんね。

どんなテンポか、どんな雰囲気なのか、
指揮者は音が鳴る前の振りで、オケ奏者にそれを示す。

そして音楽は、その曲が始まってから終わるまで、
流れてとめどない。

(無音空間だって、一瞬の静寂の緊張でありながらも、
その静寂の後には次が待っている。
音楽自体の時間は止まっていない。)

その、彼らの振る”弧”はその曲の雰囲気に合って、
音が鳴っている限り、とめどなく弧を描く。

その弧が、音楽を作る。


そして管楽器は、その弧を息で作る。

ということは当然私たちは、音の出る前の振りだって、
指揮者のように、弦楽器の弓のように、
吸う息でもってそれが成されなければならない。

ゆったりした曲であれば、深くゆったりした吸気を、

早くて元気な曲であれば、弾むような吸気を・・・


その吸う息・・・いわゆる音楽の準備が、
吸い方が充分でなかったり、浅かったり、力んでたり(主に肩)、
はたまた暴力的・・など、無頓着であったりしては、

その次に出てくる音・音楽の出だしは・・音は出ても、
もちろんその音楽にそぐうものではおそらくありません。


「管楽器は息で音楽をつくる」


そのファゴットの先生からは、管楽器における、
「呼吸と音楽の、本当に大切な意味での密接なつながり」を
教えていただきました。

またそれと関連して、呼吸法、室内楽の極意なども・・

楽器は違えど、楽器というジャンルを離れ、
「音楽」における大切なことを本当にたくさん学びました。


フルート(管楽器)において、

前回のテーマであった「頭」―意思や想像力―

そして今回のテーマ「息」 ―呼気も吸気も―

この二つは自動的に私たちの体内で関連し、
それがどれほど音楽に命を吹き込むか。

指や音をきれいにする練習をしつつも、
常に念頭においておきたいテーマです。


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◆de la SONORITE ~音のために~

2008-09-10 20:36:11 | 大切なこと
もしかすると・・今から書こうとするこの事を、
まずこのブログの念頭にもってくるべきだったかもしれません。


フルートを奏でる。

その自身の音色を磨くには、まずは自身の音を本当に聴く
「聴く力」 「集中力」、そして、
音色を、そして音楽を求める不断の「努力」と「忍耐」
を要します。


よく、音を楽に、美しく響かせるにあたってどうすれば、と
色々な技術的な質問を受けます。

そして私は職業柄・・そのフルート吹く方々の音色、
そして音楽を磨くお手伝いをしているわけですが、

もちろんそれは、その人それぞれの体の特徴も考慮にいれつつ、
お腹のこと、呼吸のこと、口の形のこと、楽器の保持のこと、
姿勢のこと・・色々なアプローチから、
いわゆる”具体的な技術的な要素”を考えます。

ただし、本当のところ、その具体的な技術的な要素と匹敵する、
いえ、もしかして
それ以上に大切なことが、「音創り」にはあるというお話です。


さてここに、いわゆる”ロングトーン”という基礎練習のこと、
そして、その代表格であるM.モイーズ著 「ソノリテについて」
(Leduc社)を例に挙げてお話します。


この本の冒頭にはまず、こう書いてあります。

 >この著書から、美しい音を得る確実な方法をみつけようと
  期待すべきではない。

 >この問題は理論的に取り扱うことはできない。~中略~
 >「美しい音」とは理想としていろいろ考えられるであろうが、
  それは自然のままの肉体の状態だけではつくりだすことは
  できないという確信を得たのである。


ソノリテの教本を持っていらっしゃるフルート吹きの方は
非常に多いと思います。

・・・しかし、この冒頭にこめられた意味を、いったいどれだけ
咀嚼されているか?


ワイマールでの留学時代、私は幸運なことにオーレル・ニコレ氏
のマスタークラスに立ち会う機会がありました。

多くの若手フルーティストが集まるマスタークラスの中、
彼は、まず最初にこの「ソノリテ」の冒頭を吹くこと要求しました。


最初のフレーズ、「シ―♭シ」(2回繰り返す)

ニコレ氏は言いました。



「きみは、今のそのフレーズにどんな”ファンタジー”を持っているのか!?」


ようするに、そのシ~♭シを吹くにあたって、自身、
どういう表情をその音にのせようとしているのか。

明るいのか、暗いのか、優しいのか、力強いのか、云々・・


その”ファンタジー”を毎回怠ることなく想像力を働かせ、
様々な音色のバリエーションの「目標」を定めつつ、

その音色を実際奏でることに・・この冒頭に書いた、
自身の耳と脳に全集中力を研ぎ澄ませ、

その自分の要求する音色をしつこく求め、
納得のいく音が出るまで出し続ける・・・


これこそが、【de la Sonorite】なのだ!!
(※最後の e は斜め線付)

ただ音を綺麗に雑音なしに鳴らすための教材ではない!

2回繰り返すなら、なぜその2回に変化をつけようとしないのだ!!

・・と若手フルーティストを一蹴しました。



◆◇◆◇


そして、私が今回特筆すべき大切なこと、

【笛の音は、人の声に通ずる】


こんなことがありました。

以前、プロの声楽家の方にフルートのレッスンをしました。

声楽はプロ、しかしフルートは初心者でした。

楽譜はもちろん、音符から音楽の流れも読み取れる彼女は、
フルートの単なる技術的な面だけが、砦でした。

色々とフルートを吹くための技術的な(体の)説明をし、
音は出てきたものの、今ひとつ不満足・・といったところで、

私は彼女に、今自分のできうる最上の響きで、という注文で、
その音を歌っていただきました。

そして即座に、
では、その美しい響きをフルートでそのまま表現しようと
してください、と言ったところ、音は・・すごく美しい響きに。

まるで魔法のようでした。


人は誰でも、
高い声、低い声、ゆったりあたたかい声、金切り声、・・・

これらの声をだすのに、具体的な体の技術説明などは
逆にまわりくどく、難しいです。

頭(脳)でただこれらの声を出そうという「意思」と「イメージ」
だけで、体は自然とそのモードをつくるのです。

フルートの息遣いも、また然りなのです。

もちろん、手や肩や口やノドを緊張させない、といった
具体的なアプローチ方法も一方で必要不可欠です。

でも人間には、そういう言葉では言い切れない、
『自然な力』というのも備わっていて、それが時には、
1000の言葉をもってしても太刀打ちできないほどの
力をもっているのではないでしょうか。


「フルートを奏でる」ことは、楽器という媒体があるだけで、
まさに「歌を歌う」ことと奥深いところでは一緒なのです。

フルートの美しい音を出すのには、そして音楽を奏でるには、
まさに声と同様の、その音を出したいという「意思」と、
頭での想像力「ファンタジー」が必要であること。


そしてまさにそれがないと、普段の基礎練習・・
ソノリテ、そしてロングトーンの本来の意義を成さないということ。


・・・意外と、いつもの練習でフルートの譜面を開いたあとで、
すぐ楽器を構えることをふと立ち止まり、歌ってみると、
体の余分な力も抜けたり、音楽の大きい流れがつかめたり、
収穫は大きいのではないでしょうか!


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◆フルートって横に長いのです。

2008-09-07 00:41:11 | 持ち方
他の管楽器と違って、横になが~いフルート。

フルートって、アンブシュア(口の形)やら指の動きやら
呼吸やら、色々と考えなければいけないことは多いですが、

そのすべてに大元となる問題が、この横の長さからくる
「持ち方」(そして姿勢)の難しさにあると思うのです。

この横に長い棒が、ヘンな方向を向いてしまっていたり、
ヘンな角度をしていたりすることで、
持つ指や、吹く口、唇、そして顎などに負担がいってしまう。


フルートはバランスで持つ。

さながら、天秤のように。シーソーのように??

左人差し指下の支えが中心の要です。
右手の親指などではありません。

そしてそのシーソーの両端が、口と右手の親指となるのですが、
それらのどちらかに、支える比重が偏っては
この長い棒、もう一方の端に負担がいってしまいます。


なぜこのバランスの大切さを痛感したか。
それは、私がものすごくヘビーな楽器を使いはじめてからです。

この新しいヘビーな楽器を、それまでの楽器の持ち方で持って、
しばらくして右親指が痛い日々が続きました。

そこで重心のバランスをあらためて考え直し、
この「シーソー」を実行したところ、
右の親指の痛みが消えたどころか、指まわりもより軽快になり、
ついでに下顎(アンブシュア)への負担も減りました。

そして、指と顎の負担が減ったことから、
今まで難所だった部分が急にするっとできるようにもなったり。

ほんの些細な一部が、思った以上に色々な所に関連しあって・・

考え出すとキリがない、けどおもしろい!ですね。


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◆フルート・レッスン・ノート 開講!?しました。

2008-09-06 23:48:13 | ごあいさつ
フルート・・・その音色は流麗で、美しい。
フルートを始めるきっかけって、
この美しい音色に惹かれて、
ということが多いのではないでしょうか。

でも流麗に見えて、実際始めてみると・・・あれ?
なかなか美しい音が出せない!

どころか、初めてすぐは音はガサガサだわ、息は苦しいわ、
しまいには酸欠!・・・
・・・となかなか自分の描いた理想と違うものです。


そう、フルートって、やっぱり「真の響」を得るには、
今日明日というわけにはいかないのです。

やればやるほど、色々な疑問がわいてくる。
そんなこんなで時々迷宮入りもしちゃう。
でもだからこそ、おもしろい。


そんな、フルートを吹く人誰もが一度は通りうる、
「真の響」を得るためのフルート奏法の疑問・カギなどを、
日ごろの練習やレッスンを通して思いついたまま
様々なテーマで書き綴っていきたいと思います。

でも、あくまで気ままです。

テーマも、思いつくままです。


普段こちらにレッスンに習いにきていらっしゃる方にも、
ここが初めましての方にも、
フルートを楽しく、そして楽に吹けるようになれるための
ひとつのお供となれれば幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。


Yori


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