◆ふえ・のおと◆フルーティストYoriko KASAI 葛西賀子 officialblog

~ヨーロッパ仕込みの音楽作り、研究を重ねたフルート基礎奏法・・最近は太極拳を通して体幹づくり研究も進んでいます!!

◆ 演奏に必要なこと~一流演奏家の言葉

2009-08-28 16:39:50 | 大切なこと
今回の記事は前回の続編ともいえるかもしれません。

私を含め音楽を志すものにとって、楽器の境なくとても大切な
ことですので、表現に手間取り長文になってしまいましたが・・
最後までお読みいただけましたら、幸いです。

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この数日間、夏休みをかねて日本で毎年行われている音楽祭、
「草津夏季国際音楽フェスティヴァル」に行ってまいりました。

日本屈指の名湯の地・草津温泉にて行われる、世界に名高い
各楽器のヨーロッパの一流の教授たちが、夏の終わりの気持ち
の良い草津に一堂に会し、2週間まるまる、朝はマスタークラス、
夜はその教授たちを中心としたコンサート、と音楽三昧・・

一流演奏家たちの、稀有で貴重な競演もいっぺんに聴くことが
できる(そして名湯も堪能)、音楽愛好家にとっては夢の空間。


そしてその音楽祭は私にとっても、私の音楽・・だけに留まらず、
今の私の人生を導いてくれたともいえる、宝物みたいな場所。

私は学生時代からそこで、実に10年近い長いながい間、
音楽祭のスタッフとして、働かせていただいておりました。

あのときの、ヨーロッパの一流に属する音楽家の一流音楽という
すばらしい空間を、毎年どっぷり2週間、とても間近に接する
ことができたその経験が、今の私の音楽人生にかけがえのない
宝物となっており・・思えばそれが、
私が音楽の道を本格的に志すきっかけともなったのです。


特にドイツから帰ってからは、以前と違い、ドイツ語で直接
プロフェッサーから通訳を介さない生の言葉で音楽談話ができ、
彼らプロフェッショナルの音楽に対する考えや取り組みを、
生の言葉として知ることができるので、

今回はそんな彼らの貴重な言葉の一端を皆さまにも少しでも
お伝えできれば・・と、ブログを書かせていただきます。

◆◇◆

今回初めて音楽祭をゆっくりと堪能できたので、色々な楽器の
クラスを聴講したり、コンサートを聴くことが出来ました。

まず、その中で強く切に感じたのは、私も以前からブログで
記述しておりました、
楽器は様々、その都合も様々あれど・・ 「音楽は音楽」
ということです。


多くの教授の言葉を聴講したなかで、受講生に対して注意する
言葉の表現は様々であれ、教授それぞれに音楽の創造力はあれど
その大元で動かぬ、一環していることは、

その音楽のもつキャラクターを、真に音楽表現しているか?
ということでした。

音楽には、演奏家には、飽くなき探究心が不可欠だ。

テクニック練習を重ねるうちについ忘れさってしまう、
「その音楽そのものと向き合うこと」

それが、音楽の道を志す今日の若い演奏家に一番足りず、
プロフェッサーたちが切に伝えたいメッセージ。


そのためには、前回私もブログで書きました、”本当に音を聴く”

もう一度端的に書きますが、
本当にその箇所箇所で自分の望む音が、果たして本当にこれで
出ているのか・・耳をよく注意深く研ぎ澄ますことです。

そのためには、本当にゆっくりから練習を始めないことには、
音が本当に聴こえ、脳、そして体に伝達しないものだと。

これは草津でもやはり、多くの教授がおっしゃっていました。


とても新鮮だった言葉は、ピアノの遠山慶子先生のお言葉、

私たち演奏家は、そのとき演奏する楽曲の作曲された時代や
背景(例えば宮廷とか)などをよく勉強し、よく想像力を働かせ、
そしてそれを音楽にし・・

その時代の世界を、コンサートという生の空間を通して、
お客様に再現し運んであげるお仕事なの、とおっしゃられた。

そして、ドキッとしたお言葉も。

「練習とはこわいもの。技術的に難しいとき、変に集中して
しまって、何度も何度もその箇所を繰り返していくうちに、
そこにあるべき音楽をつい忘れてしまうの。

いつも、どんな難しいパッセージにも音楽を忘れてはいけない」



教授方は、とにかく楽曲を奏するのにファンタジーの宝庫。

巨匠、しかし子供のように、純粋に楽しみながら音楽している。


高音のひらひらしたパッセージ・・でも難しいから力が入って
しまうようなところを、蝶々が舞うようでしょ!?と表現したり、

その楽曲がバロックや古典の宮廷音楽時代の作曲であるような場合、
これは宮廷音楽、ひらひらしたドレスで踊るの、想像できる?とか

とにかく創造力を生徒に促す・・


しかしそれはだからといって、単なるイメージと感性からくる
何となく・・というだけのものではなく、

そこで発生する、音楽に絶対必要不可欠な「緊張」と「緩和」の
”寄せてはかえす波”の中には、トニカ・ドミナントなどの和声、
様式、拍感、転調、などなど・・

これら、きちんとした「知識」から発生する緊張と緩和の法則。

それに「感性」と「想像力」が加わり、感動を伴う音楽が創られる。


楽器の分野を問わず、すべての音楽を志す者に・・
これはもちろんものすごく時間と手間と根気がかかり・・努力が
必要なことですが、そこを努力した人だけに与えられる、

音楽をよく聞かせ、奏者自身にも聴いている人にも、最高に楽しい、
これぞ「音」を真に「楽」しめる、神からのプレゼントだと・・
私は自分自身の変遷でもって、強く確信しています。


◆◇◆

私はフルートという、ハーモニーを同時に奏でられない単旋律
の楽器を吹く者として、特に声を大にしてお伝えしたい、

機械的で抑揚に乏しい演奏でなく、本当に良い音・良い響きで
音楽を音楽らしく奏でたい、と思うならば・・少しでもいい、
どうか、
楽器を奏するのに必要な技術的なことや、実質的に楽譜に書いて
ある通りの強弱などの表現を実行しようと練習する前に、

並行に、
「音楽全般」に必要な基本的なこと、ハーモニーや様式、
またヨーロッパ音楽にまつわる作曲家や時代背景の歴史など、
興味をもって取り組んでみてください、と。

もしそれら音楽の知識に興味はあるけど・・その勉強をどこから
どう始めていいかがわからない・・というフルートの方がもし
いらっしゃったら、私は、私の知りうる限りですがその取り組み
方を、喜んで、努力を惜しまずご提供したく思っています。


そこをもってしない限り・・いくら吹き方や運指・音の響かせ方を
がむしゃらに技術的な吹くことのアプローチから練習しても、

本当にその音楽やハーモニーにあった生き生きとした息運び、
またそこから来る正しい音程には辿りつかない・・

例えチューナーのメーターが「0」を指したって、
微妙に音が和音にとけこんでなく音痴に聴こえたり、

それから、演奏中のからだの動き!ここに多くの無駄が発生し、
音楽の自然な流れの大きな妨げとなります。
(体を全く動かさないという意味ではなく、適材適所な動き)

しかしこの、フルートを吹く際の「動き」に関しては、
私自身が何よりまだ研究途中でもあり、これ一つで立派な
ブログネタになることですので、またそのうち自分の中である程度
確信がかたまったら、書かせていただきたく存じます。


自身の音楽とフルートに対する取り組みを、気持ち新たに、
また次への活力となった素敵な3日間の休暇となったのでした♪


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◆ 音を本当に「聴く」とはどういうことか

2009-08-19 11:17:55 | 大切なこと
お盆が過ぎ、暑い中にもなんとなく涼しさもでてきましたね。
暑い夏には活動数値(?)が半減する自分にとっては、やっと
過ごしやすい時期となってきました



先日の静岡のホテルでのコンサートには、台風にもかかわらず
多くの方にお越しいただき、ありがとうございました!

ホテルでのトークコンサートは初めてで、それはそれで普段の
コンサートとはまた少し違った、古く由緒あるホテルの雰囲気、
それによる落ち着いたあたたかい空間・・・

そして何より三島のお客様の良さ!!
とてもあたたかい眼差しで真剣に聴き入ってくださり・・
本当に演奏する側にとっても心地よいひとときでした。
ありがとうございました!

しかし実はその日静岡は大地震・・。

偶然静岡に居合わせ、まずは大事に至らなかったことに
ホッと胸をなでおろしつつ、しかしある意味、人間いつ自分に
降りかかるかわからない災難を再認識したのでした。

◆◇◆

さて、今回は、「音を聴く」ということについて、
先日ピアニストの辻井伸行さんの特集をテレビで見たことを
きっかけに、考えてみました。


辻井さんは、数年前のワルシャワでのショパンコンクールに
訪れた際に、演奏をお聴きしたことがあります。

われながらものすごい陳腐な表現に嫌になりますが・・
とても美しい音と音楽でした。音楽の流れが極めて自然・・

そして先日のテレビの特集では、
2歳の小さいころに、お母様の歌っていたジングルベルを、
おもちゃのピアノで音を探しあて、いつのまにか弾いていた、
というエピソードがありました。

彼にとって、音は本当に聞くことだけが頼り。
音符や楽譜の視覚にとらわれず・・それはきっと、最初から
音の響きだけを頼りに音楽をつくっているのでしょう。

彼の演奏シーンには、完全に別の世界がつくられているように
見えます。本当に、演奏中のその時間、
その自分の奏でる音楽のもつ世界に身をおいている・・。



話は少しとびますが、ワイマールでのニコレ氏の講習会の時、
「なぜフルーティストは暗譜をしないのだ!おかしなことだ!」
と非常に怒っていらっしゃいました。


暗譜の必要性・・その根拠の一端には、あまりにも楽譜という
視覚にとらわれ、音楽を本当に聴けないから・・というのが
あるからなのだろうな、と思いました。

実際、自分の練習において目を瞑って取り組んでみました。


目を瞑ってよく聴きながら吹いてみると、
クレッシェンドやディミヌエンドの度合い・タイミングが
自分で思っていたより微妙に早すぎたり遅すぎたり、

フォルテやピアノの表情が、その音楽に見合っているように
本当に出ているのか・・目を瞑ると案外、
音や音楽の表情の凸凹の乏しさが浮き上がってくる・・。

自分では聴いてたつもりが、やはり知らずのうちに
つい視覚に頼って耳が鈍いことを知らされました。


目を瞑ると、時々、ふとした音の跳躍や、クレッシェンドの
行き着いた先、速い連符中の音、またその行き着いた先の音、
ディミヌエンド後の音の処理、等・・

様々な「つい」のシチュエーションで、その音はキィを一応
きちんと押さえている関係で、きちんと出て「聞こえている」
にしても、ちゃんと「自分で聴こえている=認識している」
音程をとれていないことがある。

こういうのが、自分の録音を聞いてみた時に・・ふとした
音痴な部分、いい加減なおろそかな部分として聞こえるのだ。


そしてこういうことが、音階やアルペジオ、その他基礎練習、
こと、かの有名なタファネル・ゴーベールのような、
一見運指のために書かれているような連符だらけの基礎練習で
もっとも心がけなければいけない、いや、
そうしなければ意味のないことなのです。


昔、当時習っていた先生から、次はテンポ120の速さで、
次はテンポ132で・・・とどんどん指を速く動かすように
要求され、ノンストップで全音階をできるように、などとも
言われ、とにかく当時は必死で指の可能な限り速い動きと
完走(!)を目指して練習していた・・。

鍛えればどんどん伸びる、10代20代にはそんな練習も必要だ。


とはいえ反面、そのときに音をきちんと聴かずに練習した
自分に悔やまれる・・

あのときに、速い練習しかしなかったがために、一つひとつの音に
見合った適切な息運びから成る、真に「鳴っている」音を聴く
能力が、自分の耳に備わらず、それで慣れてしまっていたのだ。

それは、ドイツで指摘をうけた。

指だけ押さえて、音をぶっとばしているだけだ、と。
そこに音の粒・音程は聞こえない。

そして、信じられないほどゆっくりな速度で、
音階をあらためて練習してみた。

ゆっくりな練習の中でよくよく意識してみると、一音一音、
笛のつくりとも関係し、息の入り方が微妙に違う。

その音に見合った適切な息の具合とエッジとの距離など、
音によって微妙に気をつけなければならないこと、
まずはゆっくりじっくり聴きながらそれらを認識し、練習し、
体にその感覚を叩き込ませ、そこから速くしていかないと・・
例え指が速く動こうとも「音楽」には使えないのである・・。


炊き立ての新米のような!?みずみずしくもふっくら艶のある、
まず一粒一粒にそれがあってこそ、全体的にも美味しいごはんだ。


昔から「ゆっくり練習しなさい」とは言われていた・・その本当の
意味・必要性が、ようやく真にわかった近頃です。


テクニックを育てると同時に、どれが悪い状態の音でどれが良い
状態の音なのか、自身の「聴く耳」を養うことが、
本当に楽器を極めるのに必要不可欠であり・・

自分の演奏により反映させるよう精進しなければならないことは
もちろんのこと、

同時に小学生や中学生、高校生などの次世代の子を育てる立場に
自分がなった今、教育者としての自分の大切な使命も
あらたに思うのでした。


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◆ 更新が滞っているので近況報告!?

2009-08-09 07:44:17 | コンサート情報
なかなかすっきりと晴れないのに、
どんよりと蒸し暑い毎日が続きますね・・・

すっかりご無沙汰&また少し出かけてしまうので、
近況がてら少し更新を


あまりの毎日のすっきりしない天候に、なかなか気分もどこか
すっきりしない毎日でしたが、

昨日は初めて、教え子の結婚式に参列♪(もうそんなトシかしら)


結婚式・・そこは暑くても何でも、時期に関係ない幸せ空間。

特に昨日は、私もフルート新米先生、彼女もフルート初めて、
という時からの、なが~~いつきあいの生徒さん。


性格的にとってもおっとりとしていて、優しい。
でもだから、フルートで速い運指やキレのあるリズムなどは
吹くのが苦手(><)といつも気にしてます。

でもそんな彼女が今回、結婚が決まってから、一大決心して、
彼女にとってはずっと憧れてたけど、とても無理・・と
言っていた難しい曲を式当日演奏することを決意!

半年ほど二人で頑張って曲をみて、
時には「本当に間に合う!?」・・と二人で暗澹たる日も・・

当日はなんと言っても新婦さんだし、ドレスも着てるし・・
(結婚式用のドレスって胴回りがすごく締め付けられるから、
けっこうフルートには悪条件なのです)

結婚式準備の疲労と、ドレスの重さとで・・悪条件だし、
もう少し余裕をもてる曲にしたら?と尋ねたりもしたけど、

でも彼女は、最初の決意を曲げずに、おっとりながらも
自分のペースでコツコツとじっくり・・・


そして、昨日の本番(結婚式)。美しい花嫁姿の彼女は、
披露宴の最後に見事にその曲を吹ききりました。

人前、苦手なはずなのに。式準備ですごく疲れてるだろうし。

列席者は感動。

でも何より感動して、たくさんの勇気をもらったのは私かな・・。

もちろん私も、彼女を幸せを願って渾身の2曲!?をプレゼント。


今世の中蒸し暑く、暗いニュースも続くけど、、

昨日は本当に幸せと元気をたくさんいただきました。
ちさとちゃん、ありがとう。本当に心から、お幸せに!!!



・・と、感動も冷めやらぬまま、今日から明日のコンサートに
向けて、少しお出かけです。


明日、静岡・三島プラザホテルという会場で
そのホテル120周年チャリティーコンサートに出演します♪

プログラムがなかなか決まらず、こんな直前の発表となって
しまいましたが

もしお近くにお住まいの方はぜひ聴きにいらしてくださいね。



【三島プラザホテル120周年記念チャリティーコンサート】

2009年8月10日(月)開演18:30~

フルート:葛西 賀子 / ピアノ:瀬川 玄

チケット代:2,000円

◆チケット問い合わせ
 http://www.mishimaph.co.jp/event/event120th.html
 三島プラザホテル 055-972-2121
 (席数残り僅かだそうなので、お越しになる前に必ず
  電話でお問い合わせください。)

~Program~

・グルック:妖精の踊り
・モーツァルト:「きらきら星変奏曲」(ピアノソロ)
・林光の編曲による「日本の歌」変奏曲 ~宵待草/七つの子
・宮城道雄:春の海(アルトフルート)
・ボルン:カルメン幻想曲


今回、上記「春の海」ですが・・
最初出来心でアルトフルートの音色がこの曲合うかもー!なんて
用いて試したところ、その独特のぼぉっとした音色が、
なんだか本当に尺八のようで・・即採用!(笑)

しかし後から、音を移動させてみたら(アルトフルートは4度下)
音が予想以上に高いわ、運指は格段に難しくなるわ、楽器が重く
曲全部吹ききるには予想以上に腕が痛いわで中々無謀

しかし昨日勇気をいただいたし!
初試みの「春の海」アルトフルート版、がんばります!

また帰ってきたら、フルート談義しますね!♪

それでは皆さま、それぞれによい夏休みを


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