◆ふえ・のおと◆フルーティストYoriko KASAI 葛西賀子 officialblog

~ヨーロッパ仕込みの音楽作り、研究を重ねたフルート基礎奏法・・最近は太極拳を通して体幹づくり研究も進んでいます!!

◆ 奏法改善 ~盲点は「立ち方」!?

2009-05-29 12:10:19 | 姿勢
このブログを書き始めて以来、演奏に様々な疑問や悩みを抱く
フルート吹きの方々がレッスン室に訪れてくださっています。

とはいえ、お一人お一人、唇の形、歯並び、顎の大きさ・出具合、
腕や手など体の大きさ、あるいは顔の表情筋の発達加減など、
千差万別ですから、良い音の出るポイントやコツは「これ」と
いった決まったマニュアルはなく、一人一人の実際の吹奏時に

体はどこがどのような状態か、
筋肉のどこの部分を過度に固まらせてしまっているか、
あるいは、どの部分にもう少し意識が必要か・・・

細かく状態を観察しながら改善を試みていくことになります。

これには、レッスンを受ける側にも、そして、
その人独特の細かなクセを見つけ出し改善していく側にも、
双方どちらにとっても時にとても忍耐と努力が必要となります。


しかし、本当に体と共鳴するような深い豊かな音を得るには、
一朝一夕にいくことではなく、不断の努力と忍耐が必要なことを、
やはりどうしても、申し上げなければなりません。
こと、体にある種の吹き方のクセがついてしまっていては・・

奏法改善とは、筋肉の使う場所や力の方向を変えていく訳です
から、クセの程度にもよりますが、数ヶ月、ましてや1・2回の
レッスンで治るなどということはほとんどありえないでしょう。

これまでのクセに負けないよう、レッスン時はもちろんですが、
個人の練習時に特に、細かな注意力が必要になります。

(私自身は、ドイツ1年目に吹き方のマチガイを指摘されて
180度奏法の転換をされて以来、毎日の奮闘・紆余曲折を経て、
本当に、少し・・吹き方が安定してきたかな?と思ったのに
3年はかかったと思います。石の上にも3年!?今思えば・・

しかしその間全く曲を吹けなかったか、といえばそういう訳で
なく、少しずつ・・。毎日が「三歩進んで二歩下がる」ような
奮闘の日々でしたが、その経過も楽しみの一つ・・!?)

ですので奏法改善にそれだけの忍耐力がいること、時として
その苛立ちなどは私自身よく経験してますから共有できます。

あきらめず、あせらず、長い目で・・
フルートとゆっくり長く楽しく向きあっていきたいですね。

◆◇◆

さて、今回はひとつ、万人に効く特効薬は無い・・としながらも、
私がお教えしている方々の内で、すごい高確率で音が変わる、
限りなく特効薬に近い、構えのある種の「型」・・
「立ち方」をご紹介したいと思います!

百聞は一見に如かず、下の図をご覧ください。



これは、私が普段初級者用教材として愛用させていただいている
加藤克朗さんのフルート教本から引用させていただいた図です。

この教本、よくよく熟読してみると、何と大切なことがしっかり、
わかりやすく書かれていることか・・!


さて、加藤さんのこの図に対する説明、

●左足は正面(譜面台の方向)に向け、右足は少し後にひいて
 45℃ほど外側に向けます。

●首を左に少しひねって正面(譜面台方向)を向き、
 フルートを譜面台と平行にします。

他にも、この図に対し注意事項が多々記されてますが、
特に重要な点を抜粋しますと、

・肩の力を抜いて、低く
・両腕が身体にくっついてしまわないよう、無理なく肘を離す
・フルートを(譜面台とは平行でも)床と平行にする必要はない

これらの注意事項すべて、裏付け論理説明がつけられますが、
今ここで、まとめ・特筆すべきは、


【体は譜面台に対し、少し右斜め、
 しかし顔は正面、フルートも譜面台と平行】

ということは、
右手右腕がけっこう前に出(肘が胴体側面より後ろにいかない)
フルートを構える右側が、その分少し、角度が空きます。

実はこの空きが、
アンブシュアで、発音に多大な悪影響を及ぼす「下顎の引き」・
下顎へのプレッシャーを改善してくれるのです!

逆の言い方をすると、肘や腕が身体から離れてない、ある意味
楽器を体に近く引き寄せるような構えの時は、

それだけフルートで下顎にもプレッシャーをかけており、
下顎を「引かざるをえない」状況をつくっているということです。


とはいえこれにはその他にも、
楽器を「三点支持」に近い”バランス”できちんと持つことや、
また特に、右手のフルートの持ち方も関わってくるので、
とてもここですべてを書ききれないのが残念ですが・・



日々練習と譜面に奮闘している最中、気がつかないうちに
思わず譜面にかじりついていることがあります!

そのふとした日常の練習の一時でさえも、音を悪くしてしまって
いる要因をつくってしまっている場合もあるのです。

この譜面台との構え関係だけでもとりあえず、ぜひ日常の練習に
ご参考の一端として加えていただければと思います!


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◆ 本番の「緊張」について考えました。

2009-05-22 13:17:17 | 大切なこと
本番ラッシュがひとまず終わり、一息つきつつも・・・
この後どうすればさらに良くなるのか、反省が頭をぐるぐる
まわり、まだまだ落ち着かない近頃です。


遅ればせながら、
5月8日のルーテルでのコンサートにお越しくださいました方々、
聴いてくださって本当にどうもありがとうございました!

予想以上に多くの方に足を運んでいただき、あたたかい雰囲気
の中で演奏させていただけて、とっても嬉しかったです。


ルーテル市ヶ谷というのは(今回初めて使わせていただきました)
噂どおり、フルートのコンサートにはすごく適していますね。

残響が多い、とは別の意味で、響きが非常に心地よく、
オルガンや、十字架がある教会だからでしょうか、
本当にいい心持ちで演奏させていただきました。

特に、一番実は心配だったバッハの『ソナタ ホ短調』が、
バッハの、神への強い信仰心に守られたかの如く不思議な力が
働き、非常に安定して最後まで吹ききることができたのには
我ながら・・自分の力じゃないものが働いた!と驚いています。

◆◇◆

さて、本番というものは、そんな奇跡なことも時にはありながら、
やはり毎回演奏が終わっていつも頭をもたげるのは
もっとあぁできた、こうできた、、ここ失敗した、、など。

それには、本番に起こる「緊張」が原因となるものですが、
この緊張・・なぜ起こるのか、そしてまた起こったとしても、
どうすれば乗り越え演奏ができるのか・・


結局のところこれには、100%特効薬になるような答えなく、
(というのはその日の体調やバイオリズムにもよるからです)
一生闘い続けるもの、とあきらめ・・いえ達観しておりますが


そんな中でも、過去のブログで前述しましたが、
昔、本当に先生をも困らせる”緊張しい”だった自分。

そこから、いくつかの対策に日々努力をすることで、ある程度
軽減、または打破できる、これは身を持って証明できます。


この、いくつかの対策 ですが、

よく聞くのには”場慣れ”があります。
これは、確かに無きにしもあらず、ですが・・・

何度舞台を踏んだって、緊張は、起こるときは起こる!(涙)

むしろ、場馴れに頼っていては・・何らかが引き金になって、
舞台上で突如として緊張することだってあるので、
そんな不測の事態に、対策を練ってなくガタガタ・・なんて、
あまりに危険なミズモノ的なもの!?

なので、緊張は「するもの」と捉え、それに向けて
普段から「不断」の充分な練習を積むこと、
これがまず何をおいても第一でしょう。

ただこの、充分な練習とは、時間の問題だけではありません。

楽譜を読み込み、一曲、楽章、1フレーズ、とにかく細かく
音楽の方向を分析し、分けて、細かい練習をすることです。

時間が非常にかかる作業です。
でも、そうやってその曲に取り組んであげる時間が長ければ
長いほど、安心感が増し、当日緊張を引き起こさない、あるいは
緊張が起こったとしても、緊張の中でもやるべきことは出来ます。

練習時間は、自分は要領が悪い、などと否定的にならず、
納得いく練習ができるまで充分かけないといけないと思います。


私も以前は、なんでも譜読みが早く、吹ける人を要領よく
うらやましく思っていました。
というか、自分自身すっごく感覚派だったのです、実は・・。

20代前半までは、当時の先生に厳しく鍛えられたおかげで、
幸い指も早く動き、初見などの譜読みも問題ありませんでした。

だけど、指や、曲を問題なく演奏することばかりに練習が
とらわれていたので、本番になると決まって緊張でボロボロ。

そして今、20代から30代にうつり、スポーツ選手と同じように、
昔知らないうちに出来ていたことが少しずつ難しくなった近頃、
「裏づけ」なく楽器を演奏することの危険さを切に感じています。

音楽の流れをつかんでない、あるいは、感覚で漠然としか
捉えてないこと、これは私にとっては所謂「砂上の楼閣」。


今フルートを勉強されている皆様も、ぜひ、楽譜にはしっかり
「音楽のライン」をつくって、書き込んでさえ欲しいと思います。

それには、ここでも何度か言及した、「和声」を分析することが、
非常に大きな「鍵」となるでしょう。
(というか、これ無しには音楽の流れはつくれないほどです)

◆◇◆

そして、本番直前、充分な準備(練習)したうえでの、
最終的な対策は、

「迷わないこと」  不安に、立ち止まらないこと。


書いてしまいますが、ルーテルの時、ベームの例の超絶技巧曲、
大きな事故はなかったものの、”何とか乗り切った”という・・
自分としては無念が残っています。

和声を分析したり、流れを作ったり、練習準備は他と変わりなく。

だけど・・前曲の、ベートーヴェンが終わってホッとして、
次はベームだ、と頭を切り替える瞬間に、

「・・大丈夫かな。無事練習通りいけるかな、、」

・・って、つい。ポロッと、頭をかすめてしまったんです・・

それがいけなかった。
そう思ってしまった、その不安が緊張を引き起こしてしまった。


ということで、
普段は、重箱の隅をつつくように、充分すぎるほど
対策を練って危険箇所を中心に練習すること。

でもって、本番は、迷わないこと!

変に、”自分を信じて!自信を持って!”などと言うのは
あまり機能的でないでしょう。

というよりは、
練習でも、本番直前でも、また本番中でも、
その「楽曲のもつ本質」から”心を離さない”ことだと思います。


◆◇◆

それから最後に、まったく違う角度からの対策として、
「体のポジションを整えること」をぜひお勧めしたいと思います。

私には、自身にも、生徒さんたちにも普段重点をおいている、
「体の(詳しく言えば譜面台との)ポジション」があります。

実はフルート演奏には、吹くときの「体の型」が、
本当に本当に根本だと疑っていません。

持ち方、呼吸体制やアンブシュア・・それぞれに皆さま悩みを
お持ちですが、それは、この「型」を整えるだけで、実は5割
ほどの悩みはクリアになるほど、姿勢を治したどの方も
音が変わる、それほど強い影響を及ぼしている大事な点です。


本番でも、この「型」に少し気を配るだけで、
快適に演奏環境を整えることができると思います。

とはいえ文が長くなってしまったので(いつものことですが、、)
この「型」については、次回ご紹介したいな、と思います!


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◆ ありがとう・・ブラームス。

2009-05-03 22:17:10 | 楽曲
今まで、音楽を聴いて涙することは多々ありました。

けど今日、初めて、

自分で演奏しながらいきなり涙が溢れて吹けなくなりました。

旋律とかに感動して泣きたくて泣いているのではなくて、
なんというか・・

なんで泣いているのか、

いったい今誰が演奏しているのか、

自分が今吹いている立場なのか、聴いている立場なのか、
よくわからない。

確かに自分が演奏しているはずなのに、
全然吹いている感覚がない。音楽が勝手に流れている。


それは、「音楽」に形を変えた、人生の縮図。

曲自体が凄かったのです。作曲者が凄かったのです。


◆◇◆

その曲とは、今度8日にコンサートで演奏する、

ブラームスの《クラリネットソナタ Op.120-2 変ホ長調》


この曲は、作品120。
ブラームス晩年の・・事実上最後のソナタです。

ブラームスは、生涯独身でした。
若い頃にシューマンに才能を見出されて以来、シューマンと
その妻クララとの親交が厚く深かったことは有名です。

しかしシューマンが心の病を患い・・早くに亡くなり、
彼の死後もブラームスは妻のクララとその子どもを生涯かけて
面倒を見・・(クララの死はブラームスの死の一年前)

年上の、才能溢れ聡明で魅力的な女性クララの存在が、
彼の生涯独身につながっていたのかどうか・・・

けどそのことは、人間それぞれがもつドラマの一つであって、
ここでこれ以上そこに言及をするつもりはありません。


ただ、ブラームスのこの晩年のソナタから、
今日押し寄せられるように自分の中に入ってきたもの・・


 ―1楽章:Allegro amabile 「快活に、甘美に」

極上な美しい、変ホ長調のメロディから始まるこの曲。
何を思い、あるいは誰を想い、
この曲をブラームスは書き始めたのか・・
そんなファンタジーをかき立て拡げさせてくれる、
完全に優しさと愛に包まれたようなこの一楽章。


 ―2楽章:Allegro appassionato「快活、そして情熱的に」

1楽章の変ホ長調が、同主音の変ホ短調に変わり、
いきなり胸がしめつけられるような慟哭の冒頭。

人生の・・体力の衰えも敏感に自覚しているブラームス晩年の、
焦燥とかあきらめとか希望とか・・色々が入り混じる中に、

中間部、突然現れる天国からの声。<荘厳な歌/Sostenuto>

しかしまた突然に引き戻される現実。(再現部)

そんな失意のようにそのまま変ホ短調で終わる2楽章に続き・・


 ―3楽章:Andante com moto「進んで、動きをもって」

救済の終楽章。

天国への道がやっと開かれたかのごとく。

メロディは、美しく優しく始まり、時に跳ねたり踊ったり、
色々表情を変え、優しく天国へ招きます。

そして至高のpp(ピアニッシモ)により、天国の扉が開いた・・

瞬間、突如はじまる慟哭のAllegro。

3楽章冒頭の美しい変ホ長調のメロディが、短調に姿を変え、
生きている現実と天国との交錯が始まります。

そして、また突如として現れる変ホ長調のTranquillo(静寂)

そしてそして、最後はどこへ行くのか・・・




まるで人間が生きる上で感じ、持つものすべてが凝縮されている
ような音楽。

そして私達が生きて、その先に待ち受けるものは・・?



フルートという単旋律楽器、しかも悲しいことに
ブラームスを始め、ベートーヴェンやショパンやシューマン
これらの偉大な作曲はほとんどフルートのために曲を
遺してくれていません・・・。

そんなフルート吹きの私に、音楽のこんなプレゼントを
教えてくれたのは、パートナーであるピアニスト氏でした。

私が、音楽に最初に人生の縮図をみたのは、彼が弾いた、
後期ベートーヴェンのピアノソナタ、Op.106,110,111を
聴いてでした。

難解な曲・難しい楽譜と言われるけれど、決してただ「難曲」
とは言い切れない(いえ、弾く技術的には超・超難しいです)

ベートーヴェンは、曲を作曲したというよりかは・・
耳の聞こえない彼が、頭の中でめくるめいていたものが、
音となり、音符としてただ(無理やり)姿を現している・・
ような。

このベートーヴェンの後期3曲を聞いたときも、胸がつかえ、
涙が出ずにはいられませんでした。

でもまさか、それを自分で演奏という、ある意味
「吹くこと」に頭が支配されそうな自分の演奏時に
《それ》が降ってきてくれるとは・・・

そういう意味で、今日は書かずにいられない、
本当に自分にとって大きな大きな記念の一日でした。


最後に、ブラームスのこの楽曲に関して、そのピアニスト氏が
また自身の視点で書いています。
今日書いた自分の文章が稚拙に思えるほど、名文章です。

クラシックって本当はこんなに面白いものなんだ、と
彼の溢れる音楽の泉を、いつかご紹介したいと思ってました。

ぜひこちらも併せて読んでみてください。

◆◇音楽家ピアニスト瀬川玄の「ひたすら音楽」
  「深い癒し、慰め~後期ブラームス《ソナタop.120-2》



あとコンサートまで5日、・・頑張るぞ!


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