◆ふえ・のおと◆フルーティストYoriko KASAI 葛西賀子 officialblog

~ヨーロッパ仕込みの音楽作り、研究を重ねたフルート基礎奏法・・最近は太極拳を通して体幹づくり研究も進んでいます!!

◆ 舌はジャマもの!?~口の中の空間~

2009-07-24 12:37:57 | アンブシュア
前回、音の豊かな響きのために、「歌うこと」が有効なことを
ご紹介いたしました。

フルートにしろ歌にしろ、豊かな音のためには、
体が共鳴体・・楽器となって、体のあらゆる部分に響きのための
準備が成されてなければなりません。

まず主として、胸郭の空間が十分に開かれていることが
一つの響きの大きなのモトとなりますが、

(とはいえいきなりですが、これは会得に時間を要します。
まずは鼻で深く深く深呼吸をしてみると、吸息時に胸が全体が
膨らむことを感じられますので、試してみてください。
もし感じられない場合は、
肩や鎖骨、喉元周辺が緊張で固まっているかもしれません。)



今回は、もう一つの空間、口の中をテーマにしたいと思います。


豊かな音が出ずに悩まれている方の大半に、
下顎の緊張が原因として認められます。

唇を引き、下顎も引かれて顎全体が緊張している状態だと、
口の中の空間はおのずと狭くなります。

なにせフルートを唇の下・・下あごにつけるものですから、
意識してなくても、おのずと下顎を引いてしまうのですね。

(実はこれに関して、フルートの持ち方が、この下顎の緊張に
ものすごく関係していることを、研究を進めた上で発見し・・

普段の自分のレッスンでは、持ち方のアプローチから
下顎の緩みを試みていますが・・また別でテーマにします。)


とはいえ、これは決して他人事目線で述べているのでは
ありません。自分自身がまず・・まさにそうだったのです。

ドイツ時代、わくわくで初めてドイツで受けた教授のレッスン、

まず第一声が、「吹き方が根本的に違ってるよ」・・

ショックでした。音大も卒業したのに・・今までは一体・・

そしてこう言われました。

「もうそれで十何年も吹いてきちゃったんだね。
でもアジア人は西洋人に比べ骨格(下顎)が小さいせいがあり、
実にボクが見てきた80%の生徒は、キミと同じ症状だよ。

その吹き方で今後も吹けないことはもちろんないけど・・
そのアンブシュアでは、色々な表情や音量の幅、音の跳躍など、
様々なところで困難が起こってくるだろうね・・

・・・

教える用意はあるけど、キミの従来のアンブシュアも壊れ、
新しいアンブシュアも身につかず、ヘタしたらキミは
一生吹けなくなるかもしれない・・・
ボクにとってもものすごく責任と根気があることだ、

だから、相当な覚悟を持ってくれないと、ボクも教えられない」


当時、私はもうとっくに、難しい楽曲で行き詰っていました。
どのみち・・アンブシュアを変えずしてこれ以上を臨めないなら、
変えるしかない。

先生に、吹けなくなるのは覚悟します、と指導を請いました。


そして、まずその日に出された宿題が、

「下の歯列の中に、舌(の表面)を沈めてくる」ことでした。

これが出来るようなら、先を教えよう、と。


ナンダそんな簡単なこと・・と実際鏡を用いて舌の真ん中を
沈めようとする・・・けれど鏡に映っている自分の舌は、
思うように凹んでくれない!

あれ?あれ!?と焦る一方、横でお手本を見せてくれる先生の
舌は、凹むどころか下の歯列の中できれいにまっ平ら・・


あのときはとにかく必死でまず舌を沈められるようにし、

そうしたらいつの間にか下顎の緊張が解けて顎が前に出、

そうしたらまたいつの間にか、揃っていなかった上下の唇も
揃うようになってきたのですが・・・


今となって、あのとき先生がまず、アンブシュア改善として、
舌を沈めてきなさい、といったアプローチの巧さがわかります。

もう癖で凝り固まった下顎は、いくら注意しても、フルートが
近づいてしまうと自然と後ろに引いてしまうのです。

けれど、舌を下の歯列の中に沈め、納められる =(イコール)

・口の中、上下の歯の間がほどよく開いている状態、
・下顎が後ろに引かれた緊張状態(耳の下あたりが緊張)でない、
なのです。

(よしんば歯の間が開いてなくても舌が沈められている場合は、
ノドの奥が閉まっているでしょう。舌がかなり小さくない限り!?)


「口の中の(響くための)空間とは、舌の表面から上顎の空間
のことを言うんだよ」と先生。

※タンギングの瞬間はもちろん、舌は上顎まで移動しますが、
それ以外の、基本の、音が伸びているときの話です。

口の空間が狭い状態で、舌が口の中で「暴れる」と、
タンギングなどもベタベタしたり、息がバサバサしたり・・

口の中の空間が狭いことは、
色々なところに不具合を生じさせます。


もし、音に悩まれている、タンギングがうまくいかない、など
自分ももしや・・!?と悩み、お心当たりのある方、ぜひ、
鏡を用い、ご自身の舌や口の中をチェックしてみてくださいね。


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◆ フルートと歌の密接な関係

2009-07-16 09:22:17 | 大切なこと
(またしてもご無沙汰の更新・・このブログを楽しみに読んで
くださっている方には、申し訳ございません・・。)

さて、5日のアンサンブルコンサートもおかげさまで無事終了!
メンバーの皆様の頑張りで、お客様もたくさん!盛況に終わり
嬉しく、ほっと胸をなでおろしております。

出演したメンバーの皆様にとっても、自分にとっても、
フルート、そして何より音楽を通して、
かけがえのない大きな大きな財産を得たように思います。

今回のコンサートを創り上げていく過程において、間違いなく
そのメンバーの皆様全員がすばらしい成長を遂げました、

コンサートという目標を掲げ、フルートの技術面の成長は
もちろんのこと、

でもそれ以上に、アンサンブルを通して、音楽を互いに聴く耳を
養うこと、チームワーク、そしてコンサート運営・・などなどを
総合的に、いつのまにか全員が協力していくことでコンサートが
より密なものになっていく・・・

その出来上がっていく過程を、メンバーの皆さんから
私も、本当にたくさんすばらしいことを学ばせていただき、
心から喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。

◆◇◆

さて、今回は「歌うこと」とフルートの密な関係について・・

ちかごろ、自分の中でこと強く思うことがあります。

それは、美しい音を得たいために「技術」にこだわってしまう
ことが、フルートの本当に美しい響きの会得のかえって回り道
になってしまっているのではないか、ということです。

もちろん音を出しながらいろいろと、
もっとお腹の支えを意識しなくては、とか
唇のフォルムをこうしなくては、とか、色々あるのですが、

そうこう部分にこだわっていく隙に、そこ一点に集中してしまい、
音の元である息が、音楽を奏するに必要なふうには出ていない。


フルーティスト、ニコレ氏から以前うかがった言葉ですが、
そもそも「ソノリテ」(音の響き)のために必要なことは、
音を「Vorstellung」すること、

Vorstellungとは、辞書には「想像」など記載されております、

Vorstellungの「Vor」とは、前置詞の”前に”とか”前へ”
「stellung」とは、ポジション・位置・・

なので、その音を鳴らす一歩前に、その音~響きも音程も~を
頭で「先行」させる。


しかしこれは、理解できるし正しくはあれど・・
なかなか実践は難しい。

そこで、実はこれを人間が自然と行えていることが、
「歌うこと」 なのです。


以前、プロの声楽の方がフルートを習いに来た際に、
始めはなかなか思うように美しい響きがえられにくかったので、
音をまず美しい声で歌っていただいて・・

その歌の時の、音を発する状態とイメージを用いて、フルートで
音を鳴らしてみてください、といった途端に、とても美しい音で
フルートが鳴った、という話を以前ご紹介しましたが・・・
これは、本当なのです。

歌うことがフルートにとってまさにオイシイ手段である
一石二鳥の「二鳥」について、少しお話したく思います。


ひとつは、歌うときに(地声でなく)美しい響きを作るために
体のあらゆるところでつくられる「響きモード」が、まさに
そのまま、フルートでも美しい響きを得られるモトとなるのです。


試しに、お手元にある簡単な楽譜を歌ってみてください。

意外と、美しい声で歌うのに、それから正しい音程をとるのに、
音を出す前に少しの気を遣わなければ難しいことがわかります。

この「正しい音程」が”二鳥”のふたつめです。

細かい話ですが、発音する「瞬間一歩事前」に、脳や体が
その音をとるために何らかの準備をすることで、その音が
正しく発せられる。
(このトレーニングがいわゆる、ソルフェージュなのですが)


現代のフルートは、製作研究が進み、とても優れています。

ですので息の運びや適度な脱力感など・・総合して適度な技術
を用いれば、一応各音ごとに運指も備わっていますし、
きちんとその音がでるように設計されています。

しかしながら、それでいても、なぜ時として
音の響きが悪かったり音程がずれて聞こえてしまうんだろう?

これは前述の、歌う時のような発音直前の音の想像や音程の、
アクションが成される前に音を発してしまっているからなのです。


楽器そのもののメカニックがどんどん便利になることを喜ぶ反面、

優れたメカニックに慣れてしまうと、実は、私たちの考える力、
聴く力、そして、その本当に美しい響きに必要な・・歌のように、
体で本来楽器を響かせること、などのマニュアル面を少し鈍感に
させてしまっているようにも、(自分自身も含め)危惧します。


話が少しとびますが、最近、色々な中学や高校の吹奏楽部の
フルートの指導も請け負う機会が増えてきました。

指も回り、とりあえずしっかり吹けているな、と子供たちの
頑張りにとても好感を思う反面、ちょっと驚いてしまったのは、
吹奏中にずっとチューナー(音程測定の機械)をつけていること。

そして合奏中、そのチューナーのメーターを気にしながら、
メーターが+20など、音程が高いことを指したとき、いきなり
ぐぐっと顎を下げたりして、息を細め弱め、音程を0に合わす。

しかし、それは、もはや美しい音とはかけはなれた音色です。

チューナーはもちろん時々一人で練習する際の目安のひとつと
して使用することは、もちろんありだと思いますが・・

しかしよく、メーターは0で合っているのに、合っているように
聞こえないことがあります。

それもそのはず、音とは、決して機械で図れない、
音が上がれば少し高く響くし、周りがどういうハーモニーかに
よって、自分の響きも変わってくるものです。

音の響き、そして本当に合っている音とは、よく耳で周りを聴き、
その周りの響きに自分の音を乗せることです。

よく「それがわからなくできないから」という意見を耳にしますが、
それは誰だって最初はわからないし出来ないもの・・・

私自身も未だに、いつだってトレーニングの真っ只中ですが
根気と努力無しには、残念ながら得られるものではありません。

まずは最初うまくいかなくても、怖がらずにとにかく試みること、
要領を得られなくても、あきらめずにとりあえず継続すること、
これを、強調したいです。


さて話を戻しまして・・・(今回、特に長くてすみません)

フルート=歌うことと近い、とよく言われる所以は、
まさにこういったことにあるのです。

歌うこと自体も、個人差はありますし、最初からうまくいくもの
ではなく、やっぱりしばらく練習して「慣れる」ことが必要ですが、

それでも結局、技術に関する言葉を100述べるよりも、
自身の体を使い「歌ってみること」が、美しい響きも、正しい音程
も得られる近道(しかも容易に)となれるのではないでしょうか。


◆◇◆

(追記)

そもそもこの上記のことを再考するきっかけとなったのが、
今準備中の今度のコンサートの曲、ベートーヴェンの
「ロマンス op.50」と「ソナタ《スプリング》」の
指の技術とは違った「難しさ」に直面したからであります。。


今週土曜日(18日)、横浜・青葉台のフィリアホールにて
パートナーのピアニストのベートーヴェンピアノコンサートにて、
上の2曲を演奏します。

詳細に興味をもってくださった方、HPに詳細が載っております♪
http://yori-fluteworld.com
よろしければぜひ足をお運びください!



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