◆ふえ・のおと◆フルーティストYoriko KASAI 葛西賀子 officialblog

~ヨーロッパ仕込みの音楽作り、研究を重ねたフルート基礎奏法・・最近は太極拳を通して体幹づくり研究も進んでいます!!

◆レッスンで使用している教材 《E.ケーラー 練習本op.77》の巻!

2011-02-08 23:05:18 | 雑談
ご無沙汰してしまいました。。

なかなかここの更新まで至らない毎日なのですが、、、
日々のレッスンは変わらず無休稼働、追われながらも!?生徒さんそれぞれの成長っぷり
幸せを感じながら、日々取り組んでおります。
こちらに来てくださっている生徒さんには、本当に楽しいおつきあい、感謝です!


さて今日は、
日々行っているそんなレッスンの一端と、マイお気に入り教材(の、ひとつ)について
ちょっと話題にしてみたいと思います♪


フルートといえば!やはりその音色に憧れて始められた方が多いと思います

ということで我がクラスも、「説得力のある音色」あっての美しい音楽!を目標に、
レヴェルに関係なく、基礎練習にはやはり重きをおいています。

その中で、E.ケーラーの「Schule der Gelaeufigkeit op.77」という教本を
大のお気に入りで、初級の教則本を卒業したあたりからは、レッスンで使用しています。



いつも、その回のレッスンのときに課題のエチュード(練習曲)の調に合わせ、
この教材の、その調の基礎練習も同時に練習してきていただく感じです。


この本はとってもスタンダードな技術練習の教則本で、
載っている題材は、ロングトーン・音階・分散和音・3度練習ととてもシンプル。

その中でなぜこの本が特にお気に入りか、というと、

まずはもちろん全部の調性を網羅していること。
(でもこの教本、短調だけちょっと題材が足りないのは何故だろう

そしてその中で、各調まずロングトーン。


音の響きをこちらが注意深く聴きながら、同時に
構え(姿勢)、呼吸(横隔膜の支え)、息圧、アンブシュア・・
このすべての音を出すためのポイントを、細かく丁寧に各音域ごとにチェックできる。

それでいながら、この題材はトニカ・ドミナントの分散和音を使っているので
少し、まるでメロディのような流れを伴って、ロングトーンができる。
(↑これは、とても大事なことです!ロングトーンとて、笛を吹くことはすなわち歌、
流れを考え、歌を伴わないことには、美しい音たる息運びはでてくれません)


そして次に続く題材が、その調の音階。
この音階の形がまた、自分が指導するにあたってはおあつらえ!

私は、かの有名なタファネル・ゴーベールをひたすらさらって育ちました。
あの本に載っている音階も、全調を一気に通しても吹けるし、色々なアーティキレーションもあり、
ウォーミングアップとしてはもちろんいい素材です!

しかし、このケーラーの音階の形は、
ブレスを吸うところが、きちんと流れの中に用意されている。

これもまた、曲中などで流れをとめない自然なブレスを身に着けていただくには、
なんとよく考えぬかれた音階の形であることか!

速いパッセージを、動きがかたくなく軽やか・華麗に吹くには、
テンポという安定したビートの中に、”リズミカル”に連符を入れていかねばなりませんが、
このブレスの形だと、無理なく、ブレスで流れをとめられることなく、
リズミカルに音階を練習することが可能なようになっているのです

それからもう一つこの音階練習で気に入っているのは、
各小節、きちんと響かせなければいけない最高音が、
ちゃんと小節始まりの音の1オクターブ上の音であること。

音階練習を聞くなかで、けっこう気になるのは、
その連符の中で、音の粒がぐちゃぐちゃっとなってよく把握できない箇所が出てくる、

特に、第三オクターブ(高音域)になってくると、指が難しく、運指の事情も相成り、
グチャグチャっとなる率が高くなっちゃいますよね(^^;)

音階などの連符を吹いたときに、一音一音がクリアに聞こえないのは、
もちろん指の難しさなどの原因もありますが、
結局最終的には、
その人の、その音の”音程をとること”に対する、把握の不十分さにあります。
(実は、できないのは指のせい・・と思っているほとんどは、
その時楽器に入るべき息の(量・スピード・角度等)”不適切さ”に原因が大きいと言われています)

音階とて、それぞれに必ず(ものすごく微々たる変化ですが)、
適した息の量とかスピード、角度のポイントが発生します。

息が弱すぎる場合もいれば、吹き込みすぎで逆に鳴らない(あるいは動きが遅くなる)場合もある。
しかしこれらは、元を返せばすべて、
その音に対し、「適切な」息が入っていない、ということになります。

なので、音の粒の中で良く聞こえない怪しい音があったら、
まずきちんと、脳と体にその音程の認識が行くよう、その音で”一旦止まって”、
その音をしばらく伸ばして正しい鳴りポイントを探す・・といった練習が必要です。
(トレバーワイ氏の教本第6巻に、同じ意味合いのメソードが載っています。)

レッスンで生徒さんに音階に取り組んでいただくときはだから、
最初からいきなりこの形コンプリートで練習してもらうのではなく、

その音への正しい息の量と角度の「シフトチェンジ」を理解できるように、
この形を上行形・下行形とまずはパーツに分けて、練習していただきます。

例えば、ドレミファソラシド、と上行する中で、
上記の、その微々な「シフトチェンジ」を行わないと、
上のドに到達したときに、微妙に息が下向きのままで、音程が低い。くぐもって聞こえる。

最初の指摘では、なかなか気づいていただけないものですが、
このケーラーの音階を使うと、上がった最高音が各々最低音のぴったり1オクターブ上なので、
よく音程を耳で聴き、はかることができます。
(チューナーなどもそこは頼ってみると、一目瞭然なのでわかりやすいでしょう)

下行形も然りです。今度は、上の音から下の音、息が下がりすぎないよう気を付けて、
下の音をきちんと正しいポイントに当てていく練習をします。

息の流れを無理しないながら、自身の音程感も養える題材・・
スグレモノ音階です!!


そして、その後に来るのが分散和音、そして3度進行の練習。

もちろん、ほかにも音の羅列のバリエーションは数えきれないほどありますが、
とりあえずとしては、この教本に載っているもので、十分な題材でしょう。

分散和音は主にその調のトニカ(主和音)の形で行われますが、

分散和音の方が、音階よりも音の跳びがあり、各音域・各音への
上記の”シフトチェンジ”が、より素早く最適ポジションに、行わなければならないため、
これも、すべての音をきちんと響いた音でまんべんなく鳴らすには
なかなか難しい・良い練習となるものです。

音階同様に、鳴りの悪い音でしばし止まり、伸ばす形で、
ポイントを正しく見つける練習をします。

こうして、フルートにおける美しく整頓された、音の羅列が完成されてゆくのです。


このように、「技術練習」というものは、最近ではよく理解され言われることですが、
ただ指のトレーニングとしてのみではなく、
いつも、その際にきちんと音が鳴っているか、音の響きが適切か、を伴っていなければ、
時間をたくさんかけても、また曲中にこのような音階や分散和音が出てきたときに、
”ちゃんと鳴らない・・”ということで、二度手間の練習を強いられてしまいます

楽曲では、その曲のキャラクターや、音楽運び、歌運びの練習に重点をおけるよう、
この基礎練習を丁寧に行うことで、曲中の「技術練習の苦」をぜひとも減らしていきましょう~!
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