◆ふえ・のおと◆フルーティストYoriko KASAI 葛西賀子 officialblog

~ヨーロッパ仕込みの音楽作り、研究を重ねたフルート基礎奏法・・最近は太極拳を通して体幹づくり研究も進んでいます!!

◆ 5/8(金)フルートで聴くドイツ4B巨匠 in ルーテル

2009-04-28 22:55:51 | コンサート情報
新緑が美しい、本当に爽やかな季節となりました☆

今日みたいに、日差しが強くて、でも晴れていて空が高くて、
乾燥したほんのり涼しい空気の日には、
あの気持ちよかった初夏のドイツを懐かしく思い出します。

二年前にドイツから帰国して、ちょうど今から一年前くらいに、
もう一度ドイツに再訪しました。

その再訪時は、一年また日本で修行(!?)した成果が
ドイツの地にて再びどう感じるかが興味深かったのですが、
とにかく留学から帰国した一年は必死の必死のうちに終わり、
何だか再訪しても「タダイマ」という感じだけが強く・・

さて、2年目の今年は果たして自身がどう変化しているのか・・

今回は、そんな自分への挑戦と節目もあって、たっての希望で
自分の原点・ドイツプログラムを企画しました。



GW明けの5月8日(金)19時、ルーテル市ヶ谷における
「フルートで聴くドイツ4B巨匠」 のご案内です!



ドイツ4Bとは、
・Bach,J.S.(バッハ)- ソナタホ短調 BWV1034
・Beethoven,L.v.(ベートーヴェン)- セレナーデ ニ長調 Op.41
・Boehm,T.(ベーム)- グランドポロネーズ ニ長調 Op.16
・Brahms,J.(ブラームス)- ソナタ変ホ長調 Op.120-2

このプログラムは、ドイツにいた5年間で、特に丁寧に勉強を
重ねた大切な曲たちです。

共演のピアニスト瀬川玄氏のドイツでの師匠クラウス・シルデ
先生が、本当に古き良きドイツ音楽の巨匠で(御歳80歳!)

今回のプログラムは、フルート楽曲という範疇に止まらず、
この、シルデ氏からも存分に学んだ、フルートとピアノという
二つの異なる楽器の互いの「対話」に特に重点を置いています。


私も住んでいた町で、昔活躍していた教会音楽の巨匠バッハ
と、今回の会場〈ルーテル市ヶ谷〉という教会の響きの合体。

またベートーヴェン、ブラームスでは、時代も雰囲気も異なる
二つの楽曲における、その二つの楽器の巧みな対話の違い。

そして、
現在のフルートの生みの親であるベームにおいては、
まるでモーツァルトのようにわかりやく聴き心地のよい中にも、
フルートの技術を知り尽くした上で超絶技巧を織り交ぜた名曲

等々、同じドイツの作曲家の中でも様々な対話の変遷を、
コンサートにおいて愉しんでいただけたらと思います!


このプログラムは実に、ドイツにいた時代から夢でしたが、
今回実現の運びとなったのは、ルーテル市ヶ谷という会場と
めぐり合えたからということもあります。

私がまだフルートの道に進むことなど夢にも思ってなかった
幼い頃、実は初めてフルートのリサイタルを聴いたのが、
このルーテル市ヶ谷でした。
大住修二さんというフルーティストでした。

しかもそのときメインは、今回私もプログラムにいれた、
ベームの「グランドポロネーズ」。圧倒されました。

「フルートってすごい!」と感激したことを、自分でも不思議な
ほど、強烈な印象とともに今でも色濃く残っています。


・・・その大住修二さんが数年前に亡くなったことを、
身内から聞いたのはつい最近です・・・まだお若い、
おそらく40代・・だったのでは、と思います。

大住さんが吹いた舞台に自分が立つなんて、
当時はまったく思わなかったでしょう

・・私事情を書いてしまい失礼いたしました。が、今回
そんな特別な思い入れもある、「ルーテル市ヶ谷」という教会。

そこでこそ光る、ドイツプログラムだとおもいます。

ご来場くださる皆様と、しばしのドイツ的空間を堪能できる
ことを楽しみに、現在準備をしております。

もしよろしければぜひ足をお運びいただけたら、幸せです。


◆ 5月8日(金)【開場】18:30 【開演】19:00

◆ ルーテル市ヶ谷ホール (市ヶ谷駅より徒歩5分)

◆ お問い合わせは、HPより可能です♪
HP(http://yori-fluteworld.com/default.aspx)



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◆P=L.グラーフさん講習会[2]~音楽家の姿~

2009-04-17 13:15:43 | 大切なこと
(前回の続きです)

講習会も充実して進む一方で、具体的な技術的質問ばかりに、
グラーフさん、少しご機嫌ナナメなご様子が・・

そう、具体的な細かい技術指導は、身近な先生のする仕事。

巨匠からしか出ない、聞けない、大切な言葉があります。

プロアマ関係なくフルートを吹く人たちへのメッセージ、
グラーフさんはしっかりと語ってくださいました。

それは、
「フルートを上手に吹くことに囚われず、音楽を考える事」

フルートという単旋律楽器は、大体においては残念ながら
ピアノなど他の楽器が入って初めて完全な音楽。

フルートパートはメロディーという前に”音楽の一部”であり
だから常に、フルートのこの部分のときは、他ではどんなことを
しているのかな?と必ず確認する。

具体的には、グラーフさんはご自身の練習の時は、譜面台を
2台並べて、パート譜とスコア(ピアノ譜)両方を見ながら
練習されているそうです。


またそういう意味で、貴重な完全フルートソロのレパートリーに、
『テレマン《12のファンタジー》』という曲集があります。

このテレマンをしっかり勉強しなければならない、とも
強くおっしゃっていました。

これは、フルート一本で演奏する中に、バスも含めた何声部も
が楽譜の中にverstecken(=隠れて)されています。

年数を重ね、時間をかけ何度もそれを読譜すると、不思議な
ことにパズルのようにその隠れた声部たちが見えてくるのです。

この多声部を、笛一本で表現する・・
この、最っ高に面白い作業を、私達フルーティストはしっかりと
時間をかけて勉強し、取り組んでいかねばなりません。

◆◇◆

そして、今回最大のグラーフさんのメッセージ、
きっと彼自身が現代フルートの世界を強く憂えてて、
最も伝えたかった言葉・・それがおそらく、

「音楽をすること」

(以下、グラーフさんの言葉要約です)

もちろん、音楽を納得のいく素晴しいものにするには、
高い技術は不可欠です。

しかし、フルートのプロとなる登竜門のようなコンクールが
(本当は、某有名コンクールを実名で挙げてましたが・・
ここでは控えます)
今ではまるで「サーカス」のように、いかにうまく吹けるか、
超絶技巧をノーミスで吹ききらなければまるで賞をとれない
ような世界・・当然それに挑む挑戦者は、それを目標に日々の
練習を費やしてしまう、費やさなければいけない・・・

悲しいことに、そんな、「巧いけど音楽が一辺倒」な人たちが
「プロのフルーティスト」として多く世に出てしまっています。

=====

私も、以前本当にそういう時間がありました。
指と、どうやれば音が美しく出るか、コンクールに通らなければ
いけないのか・・そんなことばっかり考えて、フルートを
吹いていました。音楽の喜び以前に、苦しさが強かった。

もちろんそんな時間も高い技術を養うには必要な時間では
あったと思うので、全否定はしたくありません。
でも、
今思えばフルートを良い音で奏で、人に感動していただくには、
そんな、心と体を別々に考えた状態で出ようはずがなかった・・。

そんな時に聴いた、グラーフさんや、アドリアンさんの演奏。

「この人たちの、なんとも自然に聞こえる音楽の流れは、
なんなんだろう・・何か、奥儀があるはずなのに!」

ずっとわからず、苦しかったこの問題。

そして、この問題の具体的な解決の扉を開いてくれたのが、
ヤーノシュ・バーリントさんだったのですが、

その音楽の自然の流れ、緩急や凹凸のキィが『和声』にある
ということ。トニカ、ドミナント、サブドミナント、
ドッペルドミナント、ナポリ、etcetc....

こんなことが、音楽が一辺倒にならない、そしてまた
奏すること自体を何百倍も楽しく、生命のある生き生きとした
ものにしてくれるのです。

いちど和声を音楽の流れの「王様」として考え出すと、
和声を認識してない演奏は、すぐばれてしまい、
まるで一辺倒にしか聞こえてならなくなります。

真の巨匠は、楽器に関係なく、この和声の流れを体得している。

だから、どの巨匠の講習会を見ても、受講生に教えることは、
どんな言い方であれ、最終的には総じてこの和声の流れに基づいた、
音楽の流れに結局はたどりついているのです。

=====

もちろん、グラーフさんもおっしゃっていましたが、
美しい音楽を自分の納得できるように奏でるには、
楽器の扱いもうまくならなければなりません。

私も、そのうまく扱える手助けとして、
こんなブログを書くことを試みています。

ただ・・この機会を借りて述べたい、今私自身の中でも
少し苦しく感じているのは、ブログの内容から、
「吹き方を治してください」とレッスンに来られる場合。

「曲とかをここで習いたいのではありません、
とにかく、音がキレイに出るように治して欲しいのです」
この言葉が、私にとって一番辛く、また無理なお話です・・。

美しい音色とは、音楽から発生する心に付随するものです。

いくら、イマジネーションや理想なしにロングトーンを重ねた
ところで、偶然いい音は発生することはあるかもしれませんが、
最終的にフルートを楽しむにはきっと至らないように思います。

ですのでここには、・・奏法を治すことは喜んでお引き受け
いたしますが、最終的には、フルートを通して、
音楽を楽しみに習いに来ていただけたら嬉しいです・・。

でなければ、楽器の習得と上達には、時間と忍耐、根気が
どうしてもどうしても必要ですから、結局長続きはしません。。

◆◇◆

ドイツ留学時代に、グラーフさんに最初にお会いして、
フルーティストである以上に「音楽家」である姿に感じた
強烈な感動、


日本に帰って奮闘始めてあっという間に過ぎたこの2年。
毎日生活できることに感謝しながらも、つい雑事に追われ、
そんな中で時にキープしきれない、でも忘れたくない
あのドイツのゆったりした時間の中で音楽に没頭できる時・・

だからどうしても今回間近で吸収したかった、
グラーフさんのあのオーラ。

今回は幸いにもルーテル市ヶ谷というこじんまりとした場所で
あったので、講習会終了後も気軽にグラーフさんを訪ねることが
でき、もう一度、直接お話して教えていただきました。

かたい握手を交わしながら、その時の、目の前の私を見据えた、
グラーフさんの穏やかでありながらも、まっすぐ力のある、澄んだ目。

「フルートを通して、音楽をしていくことを忘れてはいけません。」

瞬間背後に、あの懐かしいヨーロッパの空気をザァッと
感じたような感覚にとらわれました。

フルートの真髄も、音楽の真髄も、とても時間も根気もかかる、
一生かかってもとても成し遂げられないような業。

でも少しでも近づけることを自分の一生の仕事にしよう、と
本当に、純粋に、グラーフさんの目を見て決意あらたにしました。


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◆ 巨匠が語るフルート~P=L.グラーフさん講習会[1]

2009-04-17 09:42:57 | 大切なこと
「楽器は、あくまで音楽を奏でる一つの媒体である。」

===========

昨日は、私がフルートを奏でる「音楽家」として最も尊敬する
P=L.グラーフさんの講習会に行ってまいりました。

会場は、ルーテル市ヶ谷ホール。
すごい偶然に、今度自分が5月8日にリサイタルする会場!
そんなところでグラーフさんの生の音を事前に聴けるなんて
なんてなんて素晴しいことかしら!と喜びいさんで行きました。

講習会は、参加者からの質問をもとに、グラーフさんが
話をすすめていく、というもの。

これは計画のない中ですすめていくので、中々難しい形式。
なのでこういうことは、最初の場の空気をつくるのが肝心と!?

あのワイマールでの講習の時、グラーフさん自身がまず最初に
チョイスされた講習、「呼吸法」を、心臓の小さい私ですが、、
ドイツ語通訳さんが偶然にも私の後輩だったことも動力となり、
勇気をふりしぼって先陣きってお願いしました。


演奏における呼吸にあたって、吐く(吹く)方ではなく、
吸う方、吸い方が大切で、トレーニングを行わなければならない。

練習法は、息(吐息)を、肺が空っぽになるまで吐けば、
人間は自ずと息を吸う、という、本来人間に備わっている
自然な力を損なわない呼吸を再認識させること。

息をギリギリまで吐ききって、さらに吸わずにしばらくガマン!
すると一気に脱力したら人間は息を自動的に吸う、という練習。

プラスアルファ。

その、肺に空気が無くなったら吸う、というだけでは、
演奏に使える息ではないので、そこに、肺がもっと膨らめる
(=吸える息の量が増える)ように、肋骨・胸郭を少し
無理なく拡げておいてあげる、ということ。

・・この「拡げる」がなかなか最初出来ないのですけどね・・

私も最初にワイマールでグラーフさんにこの講習を受けたとき、
拡げることができないのにー!と随分悔しい思いをしました。

ご参考までに私自身はどうやって会得したかといえば、
鼻で深呼吸すると、胸郭がぷわ~とじんわり拡がりやすいので、
慣れるまではもっぱら鼻深呼吸をトレーニングしてましたが・・

(でも最終的には吹くときは口を呼吸に使用しないと大量の息を
演奏中摂取できないし、鼻では下顎が固定されすぎて、柔軟な
アンブシュアにならないので、だんだん口呼吸に移行させます)

呼吸に関しては、あとは音楽演奏中に使える息の貯蓄方法等々
(またこれはそのうち詳しく・・・)


そしてそれから、他の方から質問がでた楽器のHaltung(保持)

この楽器の保持は、アンブシュアをつくること以前に、
悪いアンブシュアの大元となるといっても過言ではないくらい、
大切なこと!私もレッスンではだいぶ苦戦・試行錯誤中です。

しかし目からウロコな新しい、保持導入法を聞けました!

ちょっと簡単に書いてみれば、両手とも、どちらかというと
人差し指→小指の順番で押さえがちなキィを、
小指→人差し指に押さえていくというやり方。

それから、アンブシュアに実は多大な影響を与える、
影の悪役!?右手の形として、
「やぁ!」と人に声をかけるときに肩にポンと手を置く、
その手の形と脱力加減。(これは面白い)

ここで詳しいことは書けませんが、早速今日から、自分の
生徒さんたちには実地で、反映させていきたいと思います!
(生徒さん、楽しみにしててください・・!?♪)


◆◇◆

けどここで、この、「音楽の巨匠」の生の声を聞く、という
素晴しい機会にあたり、この、奏法の技術的なことだけで
講習の時間が過ぎていってしまっては絶対にいけないのです。

(長いので、連作にします。次に続きます!)


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