本が好き 悪口言うのもちょっと好き

読書日記です。っていうほど読書量が多いわけではないけれど。。。

えっヘン 藤田紘一郎

2010-05-09 | エッセイ
えっヘン
藤田 紘一郎
講談社

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 医療関係の本には結構興味があります。

 

 帯には、

 ●病院によって80%の差が開く、がんの「生存率」

 ●ついに出た!「精液アレルギー」の女性

 ●風邪に抗生物質を処方する医者と金儲け

 

 なんてことが書かれており、お!なんか面白そうと思って借りて読んでみました。

 

 著者自身は、ちょっと変わり者のお医者さんです。1939年生まれですから、今年71歳。というと、まあそんなに”おじいちゃん”ではないのですが、読んでいくと、最初は痛快で面白いのですが、後半に行くに従い、やや年寄りの繰り言っぽくなってきて、読後感はあまりよくなかったです。

 

 別にわざわざ選んだわけではないのですが、この間読んだ、”カビの常識、人間の非常識”という本の内容と結構重なっていて、人間に備わっている自然治癒力を支える免疫力が、いまの日本人の清潔志向で、どんどん弱まっているというのが著者の信念で、それに照らして考えると、今の日本の医療現場やまた日常生活で、”ヘン”なことがいっぱいあるということで、どこかにエッセイとして連載されていたのをまとめられたのが本書ではないかと思います。

 

 お勉強ができるから医学部を受験して、医者になるという現在の状況ではできあがった医者がヘンなのは残念ながら必然ですね。

 

 もっともっと免疫力をつけるために、子供たちはもっと自然や泥んこの中で遊ばせて、そこそこ虫に刺されたり、多少は悪いものを食べて、食あたりして食べられるものと食べられないものを経験から覚えていけというのは本当だと思うんですよね。

 

 私もね、昔、インドに行ったときに、人間はこれでも生きていけるんだと実感し、日本の清潔さはある意味、異常だなぁと感じたものです。

 

 でも、じゃあどこで線引きをすればいいんでしょうか。そこを教えてほしい。

 

 ”不潔な”環境で生きることや、抗生物質をなるべく使用しないことで、全体として免疫力は上がり、アレルギーも減るだろうし、少々のことで病気にならない体になるだろうという事は同意したとして、でも、それでも少数ながら重症化して死んでしまう人は残るわけですよね。

 

 こういう人は、”運が悪かった”で、済ませられるのでしょうか。少なくとも他人事ならできそうですが、自分の子供だったりしたときに、あきらめられますか。

 

 医療に限らず、そういう少数派を切り捨てられないことが、全体として社会を”ヘン”な方向に向かわせてしまっているというのはあるんじゃないでしょうか。

 

 それに、藤田先生、キレイ好きが、現在の少子化の原因だとまで言い切るのはどうも・・・。確かに、家に帰って石鹸で何度も手を洗うような潔癖症の人とセックスってどうも結びつかなさそうですし、それに、生まれてきた子供たちが、食中毒や感染症で結構死んでいく社会なら、きっと日本人でも動物的本能でもっと子供産むんでしょうが・・・。

 

 テレビのトンデモ科学的健康情報の怪しさについてもいろいろ批判されているのですが、先生自身が本書の中で示された様々な説(”笑わない赤ちゃんが増えてきた”、”すぐにケガをすることもが増えてきた”、”ストレスによる舌痛症が激増”など)も、どういう調査を行って出てきた結果なのかが示されておらず、”藤田先生の言う事だから正しい”という判断以外では信用できない情報をさらっと書いておられるんですよね・・・。

 

 そういうところが、鼻について、前半のいろいろおもしろかった主張も忘れてしまったという残念な読書でした。

 

 


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