本が好き 悪口言うのもちょっと好き

読書日記です。っていうほど読書量が多いわけではないけれど。。。

ゼルプの裁き

2009-10-12 | 小説
ゼルプの裁き (SHOGAKUKAN MYSTERY)
ベルンハルト シュリンク,ヴァルター ポップ
小学館

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 いろいろ忙しくて、本をじっくり読むことができず、このブログもずいぶん放置してしまいました。

 

 

 本って、のっているときはどんどん読めるのですが、心が疲れているとなかなか本の世界に入れなくて、ちょっと読んでギブアップという悪循環にはまってしまいます。だから、リハビリにしようとミステリーを選んでみました。

 

 

 「朗読者」の著者でもあるシュリングの作品ということでも、興味をそそられましたし、3部作ということで、面白かったらあと2回楽しめるという期待もありました。何十冊にもなるシリーズ物は、だらだらいきそうなので選びませんが、3部作ってちょうどいい感じじゃないですか・・・。

 

 

 で、読んでみましたが、続いて2冊読むかどうか・・・微妙です。少なくとも疲れているときにはおすすめできない本かな。

 

 

 ナチの時代に検事だった初老の私立探偵ゼルプは、幼馴染で義兄のコルテンから彼が社長を務めるライン化工で起こった、ちょっとしたハッカー事件の調査を依頼される。コンピュータには疎いけれど独特の勘で、あっという間に事件は解決するのだが、彼が突き止めた犯人は、警察に突き出されること無く、しばらくして交通事故で死んでしまう。この犯人の恋人で、コルテンの会社で重役秘書として働く女性ユーディットから、事故死の調査を頼まれたゼルプは、その調査をすすめるうちに、自分が検事時代に関わったある事件の真相に近づいていく。

 

 

 最初ハッカー事件というので、比較的最近の作品かと思ったのですが、発表は20年以上まえで、その辺からちょっと私は時代感覚がうまくつかめなくなりました。ゼルプの外見もどんな感じにイメージしたらよいか分からずじまいだし、それに、ドイツ人の名前がどうも馴染みにくく、その辺でストーリーをなかなか掴めず、またギブアップしそうになりました。

 

 

 実際、ミステリーとしてこの本はどうなんだろうかと思いますが、ただ、朗読者でも感じられた著者の、ナチ時代の歴史に対するドイツ人としての覚悟というようなものに惹かれて最後まで読んでしまいました。

 

 

 ドイツと日本はどちらも、先の大戦の時代において、人権的に許されない行為を行ったということで責められる立場にある国です。よく、海外からドイツは謝罪したが日本は謝罪していないというようなことを言われて、一日本人として憤慨したこともありましたが、やはり目を向けたくない歴史に関する態度はずいぶん違うなと思わざるを得ません。

 

 

 もちろん、事情は違うし、単純に比べられないけれど、でも、人は時代の雰囲気に呑まれて後から考えると、とても許せないと思えるようなことをするという事を自分たち国民の歴史の中でおこった痛みとして正面から受け止めているところが、やはり違うんだと思います。

 

 

 深い罪の意識を言葉にするか、語らずに墓場まで持って行くか、美意識、メンタリティの点で国民性の違いがあるのかもしれませんが、被害者ではなく加害者として罪の意識を背負って生きるゼルプの最後の裁きは、日本の小説家ではちょっと思いつけない展開で、この小説を、そしてゼルプの罪の意識をどう理解してよいものか、私の頭では受け止めきれないものでした。