戦国の世の宿命だったのだろうか
殺すつもりでなかった王ダンカンを
魔女の予言によって殺し
スコットランドの王位に就くマクベス
星々よ みずからの輝きを覆え
我が暗い野望の底をのぞきこむな
妻までもが言う
暗い暗い夜よ 地獄の黒煙に身を包め と
マクベスが躊躇していると
足を濡らさずに魚を獲る猫のよう と
マクベスをなじり けしかける妻
妻の奸計が功を奏し ダンカンは暗殺された
悪を始めたからには悪に支えてもらう他は無い
一部始終を知っていた僚友バンクォーまでをも
刺客を雇い
だまし討ちにしたマクベス
だが 魔女が差し向けた幻影に苛むマクベス
我が身の残忍 好色 貪婪 陰険 不実 奸悪
血糊で固まった髪のバンクォーが笑いかける
人々の命が帽子に挿した花より儚いスコットランド
やがて イングランドの精鋭たちが
ダンカンの息子マルカムに味方する
マクベスはひとゆすりすれば落ちる熟れた果実だ
積もった恨みが血煙立つ修羅へと彼を堕とした
思えば 哀れなマクベス
自分もダンカンのように死にたかったのでは
死ななければ 彼の心は
拷問台に係留され絶え間ない惑乱に満ちたままだった
(あらためてシェイクスピアの四大悲劇を読んで気がついたのだが、気がつくのが遅すぎたのだが、シェイクスピアの劇は当時もそうだったのであろうが、現代でも大衆演劇として充分に通用する。)