ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

ジュリアン・デュヴィヴィエ・13~『パニック』

2019年03月17日 | 戦後40年代映画(外国)
『パニック』(ジュリアン・デュヴィヴィエ監督、1946年)を観た。

パリ郊外のヴィルジュイフ。
移動遊園地を作る広場の一角で、中年女性ノブレの死体が見つかる。

そんな時、8ヶ月振りに出所してきたアリスは、恋人アルフレッドと会う。
彼女は、ワルなアルフレッドに夢中なため、彼の身代わりとなって刑務所に入っていた。

日頃、皆から変わり者と見られているイールは安ホテルを住まいにしている。
イールが何気なく、部屋の窓の向かいを見ると、部屋を借りたばかりのアリスがいた。

翌日、今だ監視されているアリスが、アルフレッドとは初めて会い一目惚れになった振りをし、
移動遊園地でデートを楽しんでいると、かのイールが何かとまとい付く。

アルフレッドと別れたアリスにイールが近づく。
そして、「7000フラン入っていた死んだノブレのカバンは、どこにあるかアルフレッドに聞いてごらん」と意味ありげなことを言い、
“将来の不安がある時はヴァルガ氏に相談を”とのチラシを渡す。

金は全然持っていないと言っていたアルフレッドは、その後、ノブレを殺しカバンを奪ったとアリスに打ち明ける。
不安を感じたアリスはチラシにある住所へ、占星術師ヴァルガ氏を訪ねる。
ドアを開けると、そこにいたのはイールだった・・・

アリスは、アルフレッドという人物に不安がある振りをしながら、イールが事件についてどのくらい知っているのか探りを入れる。
悲しいかな、片やイールは、アリスを一目見たときから密かな恋心を抱き、何かと彼女に協力しようとする。
その当たりの話の進み具合がうまく、観る方はドンドン目が離せなくなっていく。

アルフレッドとアリスの悪巧み。
ノブレのカバンをイールの部屋に隠し、うまい具合にイールを殺人犯人に仕立てようとする。
元々、彼は町のみんなから変人と見られているので、殺人犯の嫌疑が一気にイールへと行く。

その思い込みの偏見。
これが町全体の見方となっていく。
その群衆心理による、濡れ衣を着せられた一人の人間が追い詰められていく恐ろしさ。
それはいつの時代、どこの世界でもあるのではないかと想像させる、ゾォっと寒気がするような内容である。
そんなことを無意識のうちに思わせるこの鮮明な印象は、やはり、イール役のミシェル・シモンに負うところが大きいのではないか。

原作は、前回取り上げた『モンパルナスの夜』のジョルジュ・シムノン。
そしてこの作品は、パトリス・ルコントが後に『仕立て屋の恋』(1989年)としてリメイクしているが、イメージは全く別物だったと記憶いている。

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