ポケットの中で映画を温めて

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ジャック・ベッケル・1~『幸福の設計』

2019年04月27日 | 戦後40年代映画(外国)
『幸福の設計』(ジャック・ベッケル監督、1947年)を観た。

パリの下町。
製本工場に勤めるアントワーヌと、デパート店員の妻アントワネットは、洗面所もない安アパートに住みながらも夫婦仲がいい。
アントワネットは、夫の仕事場からの乱丁本を店員仲間たちに貸したりしている。
この日の帰りには、デパートの隣りにある宝くじ売り場のおばさんからも貸した本を返してもらった。

この美人のアントワネットには何かと男が言い寄ってくる。
仕事が終わりアントワネットが、アパートの向かいの食料品店に買い物に寄ると、店主のロランは缶詰をオマケにくれたりした。
丁度その時、アントワーヌも帰ってくるが、止めた自転車をうっかり店の者にトラックで潰されてしまう。
ロランは、自転車の持ち主の妻がアントワネットと分かると、下心丸出しで、自転車を直すことを請け負う。

数日後、新品の自転車の車輪をアパートに持ってきたロランは、花束も持参している。
この花束の件で夫婦仲はギクシャクし、マッチを探すためにアントワネットがハンドバックをぶちまける。
その中から宝くじを見つけたアントワーヌは、不機嫌なアントワネットをよそに当選番号の確認をする。
その場ではよくわからず、再確認すると、何と80万フランが当たっていた。
アントワーヌは翌日、現金交換にそのくじを入れた財布を持って出掛け、いざ交換所に来てみると、財布は無くしてしまっていて・・・

さあ大変なことになった。
どこでどのようにして無くしたのか。
アントワーヌは焦りながら、記憶を元に探す。
結果、宝くじを入れた財布を地下鉄駅の窓口で忘れたのはわかるが、見つからず、もうどうしようもできない。
暖房と洗面所つきアパート、アントワーヌが欲しかったバイクやアントワーヌのコートの夢が儚く消えていく。

アントワーヌの意気消沈するのを、影でやさしく見守るアントワネット。
このアントワネットの夫に対する愛情表現がいい。
何と賢い人かと唯々感心し、憧れてしまう。
この作品が素晴らしいのは、アントワーヌ夫婦もそうだがアパートの隣り近所の人たちの人情味が溢れているところ。
それに引き換え、食料品店主のロランは裕福なのを嵩にかけ、アントワネットをどうにかしてモノにしたいと思う。
内心のいやらしさが滲み出てて、その浅はかな態度がこれまた印象に残る。

こんな失意のアントワーヌ夫妻でも、最後にはハッピーエンドが用意されている。
そのことは、最初の辺りで伏線として用意してあっても、中々気付かないようにサラっと示してある。
それらをひっくるめて、シナリオや演出のうまさが際だっているなと感心もしこの作品に満足した。

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