ポケットの中で映画を温めて

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『グリーンブック』を観て

2019年09月06日 | 2010年代映画(外国)
この春は都合により映画館に行けず、その時の作品『グリーンブック』(ピーター・ファレリー監督、2018年)を小劇場でやっていたので観てきた。

1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒として働くトニー・リップは、粗野で無教養だが口が達者で、何かと周囲から頼りにされていた。
クラブが改装のため閉鎖になり、しばらくの間、無職になってしまったトニーは、南部でコンサートツアーを計画する黒人ピアニストのドクター・シャーリーに運転手として雇われる。
黒人差別が色濃い南部へ、あえてツアーにでかけようとするドクター・シャーリーと、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに、その旅に同行することになったトニー。
出自も性格も全く異なる二人は、当初は衝突を繰り返すものの・・・
(映画.comより)

ドクター・シャーリーは、当時の時代の中で才能や業績が広く評価されていて、住まいに至ってはカーネギーホールの上の階である。
片や、トニーはイタリア系白人で、金のためにシャーリーのお抱え運転手になる。
この二人が、南部への個々のコンサートを通しながら、少しずつ意思を疎通しあっていく。

人種差別が横行している南部。
敢えて、そこで演奏しようとするシャーリーに対して、白人のオーナーは賓客として彼を邸宅で演奏させながら、屋敷の外のみすぼらしいトイレしか使用させようとしない。
そして、宿泊は“グリーンブック”に載っているような劣悪な環境の所しか泊まれない。
片や、雇われているトニーの方がいいホテルに泊まれたりする。
ラスト近くの、白人専用のレストランといい、悪気もなく当然の如くに、白人側からの差別がシャーリーに降りかかる。

非暴力主義で洗練されている黒人のシャーリーと粗野で教養もないトニーの対比。
そして、クリスマス・イブに向けての、この2ヶ月間で周囲の理不尽な仕打ちを目にしたトニーの、黒人への差別についての見方が変化する様子が見事に映し出される。
その過程は、笑いも含ませ、和やかな気分のうちに納得させられ感動ももたらす。

だが、よく見るとその内容は、諸々の窮地を白人が黒人を救うという場面で成り立っている。
ラストシーンだって、それはそれでいいのだけど、思ったとおりの展開で終わっている。
その当たりが、素晴らしい作品と思いながらも非常に気になったところである。

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