原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

ボッケ(泥火山)

2010年08月03日 09時58分18秒 | 社会・文化
阿寒湖のエコセンターのそばから小さな半島をめぐる散策道がある。その一角にボッケがある。湖に面した場所で粘土質の泥が沸騰するようにボコ、ボコと音を立てている。ボッケの名前はここからついたのかと思っていたら、これはアイヌ語で煮え立つという意味であった。アイヌの人たちも自然に発する音からその名をつけたものであろう。地球の鼓動を思わせる音である。そして、それは地球の未来につながる鼓動でもあった。

正確には泥火山というらしいが、火山活動とは基本的に関係はない。地下にある粘土が地下水やガスとともに地表に噴出したもの。溶岩ほど高温ではないが、それなりの温度があるので触るのは危険。周囲には柵が設けられている。
久しぶりにこのボッケを訪れた。子供の時以来であるから半世紀は過ぎている。遠い記憶で明確ではないが、昔はもっと近くまで寄って見ることができた。柵などもちろんなかった。ボッケの噴出も激しく、強烈な音を立てていたと記憶している。子供の記憶なので大げさになっているのかもしれない。と思う反面、やはり長い年月で泥火山の勢いにも変化が生まれているのではと思う。地球もそれなりに年をとり、自然にも変化が表われきたのではないのだろうか。


この泥火山について調べているうちに意外なことが分かった。「メタンハイドレード」と深い関わりがあるからだ。メタンハイドレードは石油に代わる第三のエネルギーとして、近年注目されているものだ。地表に噴出せずに海底深くの低温の場所や凍土のような場所に噴出した泥は、そのまま凍って固形となる。つまり低温高圧の条件下ではメタンを中心にして、その周囲を水分子で包んだ個体結晶となる。氷状の結晶とも言える。つまり泥火山によってメタンハイドレードが生まれるのである。メタンを含んでいるので燃える。「燃える氷」という代名詞さえついている。
このメタンハイドレードの燃焼効率は素晴らしい。なおかつ石油の半分の二酸化炭素の放出ですむ。つまりCO2問題などは一気に解消する。あと30~50年で枯渇するといわれる石油資源に代わるエネルギー源として注目されるのはこうした理由があるからだ。しかもこの資源、日本近海に驚くほどの埋蔵量を有している。とくに南海トラフはまさに宝庫。世界でも有数の埋蔵量を秘めている。資源のない日本は、これまで世界中からエネルギーを購入しなければならなかったが、未来は資源王国となる可能性さえ生まれたのである(推定では現在使用されている天然ガス100年分くらいに相当)。

しかし、世の中はそんなに甘くない。このメタンハイドレードの実用化はまだされていない。今の技術ではコストがかかりすぎる。深海から引き揚げて実用化するには、さらなる研究開発、技術革新が必要なのである。しかし、このメタンハイドレードの研究については世界に先駆けた日本である。実用化への道は決して不可能ではない。というより着実に進行しているという情報もある。日本の先進技術を大いに期待したい。
ただ、日本という国は、世界一であることが必要なのかと叫ぶ政治家がおり、日本という国土は日本人だけのものじゃないと宣言する総理を頂く国である。新しいエネルギーを狙って世界中が血眼になっている中で、ぼんやりしていると領土を奪われ、権利を失うことも考えられる。技術開発で先を越される可能性だってある。科学技術ばかりでなく政治家のさらなる成長を心から願う。

そういえば、東京を中心とする関東一円は巨大なガス田の上にある。時折、自然のガス爆発が起きている。こうした自然のガスを利用する技術開発も今すすめられている。自然界の貴重な恩恵をもっと大切に考え、大切に利用する工夫と知恵がいま求められているのでは。日本を再生させる道は無限とは言わないが、もっとたくさんあるような気がしてならない。そのためには研究費や開発費をケチるのは、やはりまずい。

鼓動するように泥を噴き上げるボッケ。今はただ見るだけしかない観光資源だが、技術革新によって、意外な活用法もあるかもしれない。そんな風に見ると違った風景に見える。

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2 コメント

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自然小国→資源大国 (numapy)
2010-08-04 09:39:36
ず~っと、ず~っと、日本は資源小国と学んできました。でも最近のサイエンス&テクノロジーの進化は、
日本が資源大国になる可能性を示してますね。
近海のレアメタルやメタンハイドレード、さらには熱水鉱床脇に噴出する金、銀など。
ただいずれも海底が主な産出場所と見込まれてる。
BPの原油流出事故に見られるとおり、少しサイエンスもテクノロジーもムリや競争による焦りがあるんではないか、そんな心配も頭をもたげてきます。
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危険はあります (原野人)
2010-08-04 16:52:18
深い海底の作業は多くのリスクを持っていることは確かです。メタンハイドレードも採掘した後、海溝にどのような影響があるか、まだわかっていません。科学技術の進歩とともにこうした調査研究が同時に重要となるといます。
一方、温暖化による影響でメタンハイドレードが溶ける可能性も指摘されています。これは一気に人類の危機にもなります。実際、この地球上で2億5千年前に同じことが起きて、地球上の生物の多くが死滅しました。そのように恐ろしいものと言う認識も大切ですね。
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