例年より一週間遅く山に入った。この冬の大雪で残雪がなかなか消えなかったからだ。一歩山に入って目を疑った。見慣れた風景が一変していた。記録的な大雪のダメージが残っていた。すべての木々は重い雪のために変形を余儀なくされ、2割から3割は完全に破壊されていた。倒木もあるがほとんどが途中から挫折するように折れていた。これこそ、風景が変わるほどの破壊というのだろう。この山が復活するのに何年かかるのだろうか。
これもまた、自然界の日常ともいえる。破壊が次の創成を生み出すのが自然界の普通の姿。日常と言えば日常なのだ。倒れた木々が土にかえり養分となって新たな芽を生みだす。そうした輪廻の一端と思えば、それほど深刻に考えることでもないのかもしれない。
しかし、風景が変わるということは、それまで存在していたものがなくなることでもある。少なからずの影響はある。一番の変化は野鳥であった。毎年、必ず野鳥がたむろする木があり、そこで待っていれば野鳥を観察することができた。ところが今年は現れない。彼らにとって慣れた木がないのだから当然と言える。しばらくは野鳥の声を頼りに彷徨ことになりそうだ。
今年はもう一つ珍しいものを見た。エゾシカの痕跡である。市街地に近いこともあり、これまでエゾシカはほとんど見かけなかったのだが、今年は彼らが食べたのであろうと思われる木の被害があちらこちらにあった。樹皮が剥かれているのである。雪が多かったせいで木々が埋もれ、食料を探して普段は来ないところまで来たのかもしれない。その影響もあり、今年はコリンゴやシロザクラの花はほとんど期待できない。ちょっぴり残念でもあるが、やむを得ない。
大雪の影響は湿原にも及んでいる。例年以上に雪解け水が大量に発生。湿原の水は満杯状態。タンチョウの生態にも影響している。これから抱卵の時期に入るのだが、巣を作る状況にも変化があるのだろう。普段見掛けない場所でその姿を見かけるようになった。軍馬山でタンチョウを見ることなどなかったのに、今年は二度も目撃している。やはりいろいろな変化があるようだ。
塘路で牧場をやっている知人は、クマの出没を語っていた。どうやら彼らの行動範囲にも変化が出ているようなのだ。決して彼らの責任ではないのだが、これまであった暗黙の距離感というものが大雪の影響で変わってきたともいえるだろう。春の山菜取りも、注意が必要になった。
いずれにしても、これが自然界の普通の姿。この山がどのように復活していくか、じっくり見てみたい。新たな興味が生まれたともいえる。
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