原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

誰のための憲法9条なのか。

2015年07月31日 09時50分43秒 | 政治
新安保関連法案が国会で議論された時、社民党の党首は法案反対の理由として「戦後70年間、日本が戦争に巻き込まれなかったのは憲法9条のおかげである」と発言した。戦争のメカニズムが一つの法律で壊れ防げると本当に信じているとしたら、残念ながら政治家として失格と言わざるを得ない。デマゴギーとしてもプロパガンダにしても稚拙すぎる。誰に向かっての発言なのか?もっと深い意味があるのではないか?と、逆に気になる。憲法9条の背景にある現実を、新安保関連法案が論議されるだからこそ、考えるべきだろう。

中学生でも、日本が戦争に巻き込まれなかった理由ぐらい正確に理解している。日米安保協定があったからだ。だが、70年間まったく平和であったかというと、それは違う。竹島は不法に占拠され、北朝鮮には多くの同胞が拉致された。たくさんの血も流れた。北方四島の近海では旧ソ連に船ごと拿捕された北海道の漁師たちもいる。尖閣諸島付近では漁ができない状態が1970年以降継続している。ごく最近では小笠原近海の紅サンゴが根こそぎ中国船に奪われた。この70年間、確かに戦争はなかったが、日本は決して無傷な平和で過ごしたわけではなかった。
それなのに、日本は平和だったとする主張はまず否定されるべき。何よりも不思議なのは、日本の憲法の改正に(特に9条に)異常なほど反対する中国と韓国がいることだ。拉致事件、竹島、尖閣、小笠原などの当事者ではないか。これらの問題とぴたりとリンクしている国が、日本の憲法問題に口出ししているのである。その裏側が透けて見えてくる。
日本がこれ以上、防衛で強くなっては困る国があるということなのか。そのために動いている政治家やマスコミを感じてしまうのは、単なる誤解なのか。

こと防衛に関しては、日本の憲法が大きな障害となっていることはたしかだ。なかでも9条は決定的な「縛り」となっている。なにしろ、自衛隊は憲法違反であると考える憲法学者が6割以上いるのが日本なのだ。この70年間は平和だったと断言していいわけがないし、憲法9条のおかげではないことも誰が見ても事実。なのに、これを改善しようという動きに歯止めをかける理由はどこにあるのだろうか。
憲法9条が生みだした悲劇もある。実際に北朝鮮の拉致実行犯である工作員が、脱北して証言している。「日本の憲法では、こちらが攻撃しない限り発砲してこない。威嚇射撃だけだ。だから逃げ切れる自信があった」。「ぎりぎりまで逃げて、捕まりそうになれば自爆すればいい」。海上保安庁が不審船を追跡してもほとんどが逃げられた理由はここにある。外国には手が出せないという日本の憲法を十分に研究し、それを北朝鮮は悪用していたのだ。日本の憲法が彼らの犯罪を手助けしたということになる。また、スパイ法がないので自由に隠密活動ができた。完ぺきな北朝鮮スパイ網が日本全国に張り巡らせることができた。これまた日本の憲法のおかげである。警察はその全貌を把握しているが手が出せない。北朝鮮に拉致された人たちの無念を考えると、日本憲法を恨みたくなる。
小笠原の紅サンゴ盗難も日本の憲法を熟知している中国だからこそできた。200隻もの漁船を集めて窃盗を行えば、日本の警察では手に負えない。他の国では当然軍隊の出番となる事例だ。撃沈か逮捕、少なくても領海侵犯はさせない。ところが日本ではそれができない。憲法が邪魔をする。自衛隊は一般の漁船に手が出せないのである。軍隊ではないという理由で。200隻の漁船を送り出すなど、国がかかわっていなければ出来ることではない。中国政府は日本の憲法を承知していて実行させている。日本の防衛力を試しているといってもいい。尖閣での出没や自衛隊機にロックオンするなども「試し」の一つにすぎない。あからさまに本性を見せないのは、日米安保があるから。アメリカが出てくる事態だけは避けたいからである。メディアではあまり取り上げられていないが、最近ロシア機の領海侵犯も頻発している。航空自衛隊のスクランブル発進が頻発している。日本の防衛は危機に瀕しているという現実がそこにある。日本の防衛力が強化されて一番困る国はどこか、誰が見てもはっきりしている。
憲法9条を守ろうという人たちは、こうした現実を知っているはず。なぜこのことを直視しないのだろうか。誰を守るための憲法なのだろうか。

社民党は「憲法9条は神様からの贈り物」というスローガンを掲げている。たぶん、9条の会も同じ思いであろう。極めて宗教的だ。オカルトの世界と言ってもいい。この宗教的妄信こそ危険だ。非現実世界ではどんなことも自分たちの都合のいいようにできるからだ。
「戦争をしたくなくて、ふるえる」と言った女性がいた。日本語の奇妙さはもちろんだが、日本の防衛や国際紛争の何を知って、こんな陳腐なスローガンを掲げたのだろう。またこれに同調してばか騒ぎする人たちもいる。日本よ、どうしたというのだ。
憲法9条を守ろうという人たちよ、そして新安保関連法案に反対する人たちよ、誰のための反対運動であるのか。じっくり、問いたい。

憲法9条の条文
1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

21世紀は国と国との戦争というより、テロ集団との戦いがクローズアップされている。今こそ日本の防衛政策を真剣に考える時。非現実的な妄想に踊っている場合ではない。
憲法9条は誰のためにあるの?と、庭先のヒヨドリが問いかけていた。

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