もう今回はこれで最後だ。古都再見 葉室麟著 新潮社刊 2017年初版である。タイトルに古都・・とあったので 何気に借りたのだが ちらっと京都をかすめる。著者は北九州小倉の人で時代小説家。第146回の直木賞作家だ。本書は週刊新潮の連載をまとめたエッセイ集・・というか随筆集。作家活動に入られたのは50歳と遅いが多作な方だ。惜しくも去年2017年の末に病没されたらしい。66歳・・合掌である。実は葉室氏のことは名前すら知らなかったのである。京都をキーワードでamazonで検索して ひっかかったのを図書館で検索して借りた一冊がこれで 一応京都がらみではある。内容的には切り口が京都でそこから歴史ものに展開していく随筆 あえてエッセイと書かないのは それくらい重厚な文章であり 平易な言い回しなのだがなぜかななめ読みができず 本書を読むのに2日もかかったことからくる。時代小説というか歴史小説というか まあNHK大河の世界なんだが 氏の文章力はすごい。短文ながら厚みがあり しめくくりが日本刀のように鋭く斬れる。他の5冊は多かれ少なかれ 京都の魅力について書かれているのだがこれは完全に時代もの。氏の文体には死の影が見える。本人は人生の幕が下りる・・と書いているが これは死を意識した人の言葉だ。あたし自身 死の影がいつもつきまとってるので良くわかる。氏の言葉で言えば 見るべきものは見ただろうか?古都の闇には生きる縁となる感銘がひそんでいる気がする 幕が下りる前に見ておくべきは、やはり見たいのだ・・という表現が良い。なのであたしも京都なのだが。まあ 小説の方 直木賞作品の蜩ノ記を読もうとは思わないのだが 物書きとしての葉室麟 気に入った。定価1600円なので 迷ったのだがamazonでポチった。たまにはこういう骨のある本もいいかな・・と思う。万人に薦められる本ではないが 興味のある方は読んでみて損は無い。あたしが知らない作家さんをいきなり買うのは珍しいのだが それぐらい良かったのだ。京都に仕事場があったそうで 行間から京都が滲んでくる。良書である。
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