石田 ゆうすけ (著) 実業之日本社刊 2005/1初版 255P 1677円だがマケプレなら既に110円・・文庫も730円であるが 無謀な若者が自転車で世界一周するネタなので 20年たったらもう一部にしか刺さらないだろう。著者は1969年生まれだから今年56か・・1995年から2002年まで自転車で世界一周をしてたわけだから26から33まで世界を旅してたことになる。この辺の年齢は仕事をする上では基礎となる部分をこさえていく年齢だが 貧乏旅は楽しいし これくらいの歳でないとこういう貧乏旅行はできないのでいいのだが・・ 個人的には思うのは 彼は世界を旅することで見識も広めて自分を構築するのは素晴らしいと思うが じゃあ帰国してその先の数十年にどう生かすのか?というのが見えない。旅行で得られるのは楽しい記憶だけ・・というか嫌なものや裏が見えないから 表面をさらっとなでるだけで終わるからいいのだけど 放浪旅の場合は嫌な部分も見せない部分も見えてしまう。それを帰国してからどう生かす・生かせるのか?というところが あたしにはよくわからん。新聞・雑誌に書いて講演とかされてるみたいだが それで住宅ローンが組めるのか?人生は旅だが そこでは生涯のパートナーとも出会うし 子孫も残すわけで その時にどう生かせるのか?あたしは彼女と暮らしたかったので彼女のお母さんに同棲の許可もらいに行ったら この後どうすんの?と訊かれて安定したら必ず入籍します・・で 許してもらったが昔からモノ作りが好きだったので会社員にはなる気は無い。何を一生の仕事にしたかったか?といえば京友禅の職人・・て何の知識も経験も無いのに無謀すぎるわけで まずは洗やさんでバイト始めた。外から見てると手描きの作家ものなんか凄まじく美しいので ああいう作家に・・と思ったこともあったが中から見てると作家の一点ものは購買層が狭く才能が無ければまず無理。当時既に普及品と呼ばれてる価格のものは生産が海外に移行していて 反物自体はベトナム生産だったりするのが中から見るとわかる。それに各工程ごとに専門の職人が受け持つので全工程に関わることはないし 若い人が着物を着ないので業界は右肩下がりで落ちていく一方。この業界にいたら彼女のお母さんに約束した事が果たせなくなる。で 次にやりたかったソフトの仕事に乗り換えたわけだが 結果それでうまくいったしも楽しかったので良し。ただ京都が好きなので 軸足は京都に置いて東京で産業計装のソフトの仕事をしてたが 京友禅の業界はガタガタで当時お付き合いしてた会社はほぼ廃業しちゃってるんで 正しい選択だったな・・と思う。まあ急性大動脈解離で死にかけてみんな失ったがやり切った感はあるし それなりに評価されたし 当分はソースリストに名前が残ってるw この著者は世界一周で多くのものを得たかも知れないが 引き換えにしたものも多いだろう。どちらを選ぶのも本人の自由だ。旅行記としては面白いけれどそれ以上が無い。あたしは守るべき人を優先しただけ。今日は二人で賀茂川の河川敷の遊歩道を上がっていったのだが 堤防の並木の上に民家の屋根が見えるだけで高いビルなんかなんもない素敵なビジュアル。その向こうにお山=比叡山が見えるわけで 海外よりこっちの方が何倍も素敵だ。パスポートは取ったが一度も使わずに失効しちゃった。英国の田舎道をトラみたいなバイクかライトウェイトオープンの車で走りたかったというのもあったけど 似たようなことは信州で散々やったしもういつお星さまになるかわからないから京都だけでいいw 旅行がお好きな方は図書館でどうぞ。
金 益見 (著) 文藝春秋刊 2008/2初版 219P 当時730円+税だが 100円くらいで古書を買ったと思う。本棚が溢れてきたので整理してたら出てきた。全国300軒以上のラブホテルを訪れ、関係者へディープな突撃取材。生々しい証言で、欲望刺激産業の内側と、ラブホテルの未来を描く・・だそうだが もうそういう時代じゃないよなぁ・・と思う。部屋が用意できない既婚者は普通のホテルを使う時代だし 今の若い人は昭和の時代じゃないから ほとんどがバストイレ付きの部屋を持ってるから 昔はこーだったのねぇ・・という本かと思えば ラブホテルを経営する・・ってのが本題らしい。若い頃に住んでたところで近くに小さな戸建ていっぱいの連れ込みがあって ここ何?という感じだったが県庁近くだったんで 単なる出張でも使われてたみたいだが 周りを塀で囲まれて一種異様な雰囲気だったのは覚えてる、まあそれぐらい 昔は・・て本。帯には現役女子大学院生による本格研究「ラブホテルは堂々たる日本の文化」なんて帯がついてるが既に歴史の本だろう。もう17年も前だしねぇ。内容はともかくこのれの売れ残り新本を2130円で売ってる猛者もいるが 古本なら104円・・著者は1979年生まれの3世 当時神戸学院大学大学院人間文化学研究科だったらしいが 今は民俗学博士だそうだ。興味をそそるタイトルだが 中身はみんなが思ってるようなものではなく 業界の裏側を書いたもの。まあこれは捨てちゃうか古本屋行かだが・・民俗学と言えば民俗学だが・・昨日ニュースでダム女 関西ではこう呼ばれるが ノートルダム女子大学が今年を最後に募集を停止するらしい。大学院もだ。というわけで 京都では名の通った女子大が4年後には消える。1961年創立なので70年で消えちゃうわけで はかないもんだな・・と思う。ここんとこずっと定員割れが続いてたらしく まあ仕方ない。下種な話で申し訳ないが 大学があるのは左京区下鴨なので 今では結構な住宅街なので閉学しても切り売りした方が儲かるだろう。市立芸大は京都駅の隣 立命は衣笠いっちゃったし・・少しずつではあるが京都も変わりつつある。もう女子大の役目はとうに終わってるから仕方ないのだが・・
ジェイムズ・リーバンクス (著) 早川書房刊 2023/3初版 352P 2750円
祖父は羊飼いとして生き、その魂を私は継いだ。父は羊飼いとして生き、その技を私は学んだ。私は子どもたちに、何を残せるだろうか。オックスフォード大卒の羊飼いが家族の想い出と共にイギリス湖水地方の理想と現実を綴る、ベストセラー『羊飼いの暮らし』待望の続篇・・で 一作目の 羊飼いの暮らしーイギリス湖水地方の四季はベストセラーになったからお読みになった方も多いだろう。本書はその続編で 前半はファーマーとして苦悩し悩む日々 そして現在置かれている集約農業についての話だ。後半はビジネス的農業に対する疑問と古い混合農業の再評価 自然と共生する農業について書かれている。日本でも小規模な農家では十分な収益があげられず未来に希望を持てない若者はみんな都会に出ていき田舎は荒れる。結局田舎は高齢者だらけになり 自分たちが働けなくなったら離農し農地は未耕作で荒れる。結果 日本の農業は衰退していくわけで そういう意味では湖水地方の混合農業と同じようなのが現状だったりする。マスコミで集約化して機械化して効率的で利益のあげられる農業を誉める傾向があるが 工業的手法に基づいて行われる農業は自然と共生する・・という部分は無視して工業製品のように作物を大量生産しているだけに過ぎない。それでいいのか?とは思うが日本の農業がそういう方向に向かわざる得ないのは悲しいところでもある。英国の湖水地方と言えば 豊かな自然のまあ観光地なわけだが そこで古い混合農業で生きていくためには 農業以外で収入を得る必要があるし それができなければ離農するか 可能であるなら工業生産的な農業に転換するしかない・・というのは悩むところである。自然と共生する・って響きは素敵なんだけど それは別荘を建てて休暇の間リフレッシュするということではなく その土地で働き生きていくということなので 相当の覚悟と努力がいるわけで それはとても難しいことでもある。もう既に過ぎ去った感もあるキャンプブームだが あれとて自然の中で・・ではあるが 共生には程遠くいるのは一見自然の中だが それは破壊された商業的自然の中であって共生には程遠い。今ある自然を失わずに共生できればそれが一番いいのだが それじゃ食っていけないのよねぇ。あたしも一時期山暮らししていて 自然の良さも怖さも知ってるし 一度壊された自然は回復させるのがとても難しいのも知ってる。木を植えれば・・と言われるだろうが植林されるのは材として活用できる杉や檜の単一なので 緑に見えてもそれは工業的な自然でしかない。さて 羊飼いの暮らしは本棚にあるので これを借りて買うかどうするか悩んだんだが 欲しいがまだ高すぎる。本書に出てくるレイチェル・カーソンの沈黙の春も本棚にあるが・・ 結局予算が無い・・というか金が無ければ・・という悲しい現実は今の農業が置かれてる立場とよく似てるので苦笑せざるを得ない。本書はお薦めできる。買わなくてもいいから図書館には必ずあるので読んでいただきたい。前作の羊飼いの暮らしを読んでから こちらを読むと現実は美しいだけではなく苦労の連続だというのがよくわかる。